「極限まで自分を追い込んだとき、見えてくる何かがある。苦しさの中でつかんだものは忘れないもんだよ」
鬼ノ城シニアオープンゴルフの二〇〇六年チャンピオン、三好隆プロ(香川県綾川町出身)の言葉です。当時五十五歳、クラブハウスで喜びをかみしめるようにとつとつと語りました。
その年、三好さんは長いスランプに陥っていました。「嘆いても始まらない。性根を入れて猛練習した」と臨んだ鬼ノ城オープン。それまでの不振がうそのように三日間アンダーパー(66、64、70)で首位を守り、通算16アンダーまでスコアを伸ばす完全優勝でした。
高松商高野球部で外野手として甲子園に出場した三好さん。二十七歳でプロゴルファーになりましたが、レギュラーツアーではなかなか勝てず、実家の農業を手伝ったことも。五十歳から参戦したシニアツアーでようやく頭角を現し、ついに〇五年の賞金王に輝きます。そんな苦労人が発したのが冒頭のコメント。心の奥底にすとんと落ちてくるような言葉でした。
今年の鬼ノ城オープンは十一月七日から三日間、総社市で開かれます。日本人男性として初めて世界ゴルフ殿堂入りした青木功プロら八十二人が出場予定です。
寄る年波とともに肉体の老化、気力の低下が避けられない中、頑固なまでに磨き上げた熟練の技。華やかなレギュラーツアーとは違った、独特の味わいがあるのがシニアツアーの魅力ではないでしょうか。「いぶし銀ゴルファー」たちの競演が楽しみです。
(運動部・飯田陽久)