3学会からヒアリング―死因究明制度
厚生労働省は10月31日、「死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)を開き、医療安全調査委員会(仮称)の設置に異論を唱える3学会からヒアリングを行った。日本麻酔科学会は、「異状死」の届け出(医師法21条)の範囲など個別の問題を指摘。日本産婦人科学会は、正当な業務の遂行として行った医療行為への「業務上過失致死傷罪の適応」に反対し、日本救急学会は「『死因究明と責任追及の分離』が譲れない一線だ」と強調した。
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日本麻酔科学会の並木昭義理事長は、厚労省の「第三次試案」、「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」、パブリックコメントについて、同学会として「医療安全調査委員会を原因究明と再発防止のために設置することには大いに賛同する」と述べた。
ただ、「異状死」の届け出について、「何を、どのような基準で、どの場所に届け出るのか」と疑問を呈したほか、「標準的な医療の定義とは何か」などについて、さらなる議論が必要とした。
その上で、「拙速な設立を避け、今回提示した問題や他の学会などから出された問題について検討し、解決する方法を明示していただければ、協力は惜しまない」と強調した。
日本産婦人科学会の岡井崇常務理事は冒頭、「資格を有する医療提供者が正当な業務の遂行として行った医療行為に対して、結果のいかんを問わず『業務上過失致死傷罪を適応』することには反対である」と強調。「この見解は今後も維持し続ける」としたが、「主張が通らなければ、この案に反対というわけではない。どれだけわたしたちが考える刑事訴追などの問題を今回の委員会設置の動きの中で解決していけるか、ということを考えている」と述べた。
また、多忙や過労によるヒューマンエラーの事例の刑事事件化を防ぐために、大綱案にある「標準的な医療から著しく逸脱した医療」との文言の変更などを求めた。
日本救急学会の堤晴彦理事は、「大綱案に関して日本医師会などの賛成派、救急学会などの反対派などと対立構造にあるかのようにいわれているが、そんなことはない。木下勝之委員(日医常任理事)らと話をしているが、本質的に意見の違いはない。反対派ではなく慎重派と呼んでいただきたい」と求めた。
その上で、「『死因究明と責任追及の分離』が譲れない一線だ」と強調。「この点をあいまいにしたまま検討会を続けてきたため、迷走している。医療分野だけがなぜ、原因究明と責任追及を同時に行う委員会をつくらなければならないのか」などと述べた。
11月10日の次回会合では、引き続き全日本病院協会など3団体の代表からヒアリングを行う予定。
更新:2008/10/31 22:51 キャリアブレイン
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