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政府(厚労省他)


産科医の過酷な労働環境を厚労相に訴え―産科婦人科学会

 日本産科婦人科学会の吉村泰理事長らと舛添要一厚生労働相は、今回同学会から提出された緊急提言について、15分程度の懇談を行った。懇談の中で吉村理事長らは、妊婦が受け入れを断られて死亡した問題についての見解や、日本救急医学会との連携など今後の学会としての取り組みのほか、平均在院時間が月平均340時間に上るなど産科勤務医の過酷な労働環境について述べた。懇談の様子を紹介する。(熊田梨恵)

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舛添厚労相「これまでもいろいろと医療ビジョンの策定など、いわゆる『医療崩壊』といわれる産科、小児科、救急の問題について、いつも(同学会から)提言や協力を頂き、前に進む方向だった。だが、今回都立墨東病院の不幸なことがあった。これを機に、さらに何かできないかということで、産科婦人科学会の先生と親しく懇談をさせていただければということでお集まりいただいた。周産期、救急医療体制、特に母体に関する緊急提言ということでまとめていただいたが」

吉村理事長「これまで厚生労働省や地方自治体、周産期医療行政に関しては、かなりの財源を使ってよくやってもらっていて、一定の成果を上げていると思う。ただ、今回のような母体の救命救急の取り組みについては決して十分でなかったかもしれない。こういった制度は海外でもできている所は非常に少ない。新しい問題として、新しいシステムづくりが必要なため、このような提言をまとめた」

岡井崇理事「今回の墨東病院の件は、患者さんの受け入れ先を探すことに時間がかかったことが本質的な問題。墨東病院の当直医師が人手不足だったことが端緒となった。東京都は規模が大きいから救急医療機関が分散して置かれており、総合周産期(母子医療センター)は9つだ。9つの病院で空いている所を探すのに時間がかかることはしばしばあるが、普通の周産期救急では、どんなに時間がかかっても最後には何らかの対応ができている。ただ、今回はかなり特殊なケース。おそらく脳の血管の病気があったので突然出血したということだから、普通の救急では珍しいケース。現在は妊産婦死亡、母体死亡が著しく減っている。昔はこういう症例はほんの一握りで、(妊産婦死亡)全体の中の比率が少なかったが、ほかのケースが助かるようになってきているので、比率として増えてきた。そういうものへの対応を今以上に強化しないといけないと、わたしたちは感じた。周産期救急体制に、母体疾患のあるようなケースを重視するなら、一般救急との連携を今以上に良くするためにどうするかだ。
 根本には医師不足。救急施設も適性に配置されていない。東京でも施設数が多い地域と手薄な地域がある。施設の規模も小さい。365日24時間体制にしようとすると、いつもベッドを空けておく必要があるし、医師も余裕がないといけない。救急患者を診ていて、次も受け入れてというのは無理。例えば、産科の当直が2人で、帝王切開をし、難しいケースも対応していてというのは無理。NICUも分散しており、空いているベッドを探すだけで大変。(救急医療機関の)規模が大きければ、いつもどこかのベッドが空いていて、人も何とかなるのが理想の姿。
 病院を大きくするなど、規模を適正にするのはすぐにはできないだろうし、これまでは行政が強制的権限を持たず、病院のやり方に任せてきた。だが、こういう事件を受けて救急医療を考えるなら、行政もその辺に権限を持つようなシステムで適正配置し、規模も大きくするなどやっていかないと、都立病院の人手不足を解決しても、他で同様のことがいつ起こるか分からない。長期ビジョンでやっていく政策を打ち出していただきたい」

海野信也・「産婦人科医療提供体制検討委員会」委員長「日本産科婦人科学会と日本救急医学会の間で今年4月ぐらいから、どう連携するかという話し合いを始めないといけないとして、(厚労省)医政局や母子保健課とも相談していた。作業部会を開くことも決まっていて、日程調整中に今回のことが起こり、わたしたちは申し訳なかったと思っている。来週から作業部会を始める。学会同士で、それぞれの地域の医療機関の連携をどうするか、都道府県単位の救急医療システムと周産期医療システムの連携をどういう枠組みで検討するのが効率的になるか。制度上の問題もあるが、早急にやらねばならない。それぞれの都道府県で既にやっている所もあるので進めていく」

吉村理事長「医政局指導課から先週電話があり、日本救急医学会と日本産科婦人科学会で連携する特別研究班に予算を頂くことになり、来年3月にはまとめることになっている」

海野氏「学会で調査している、産婦人科勤務医の在院時間調査がある。大学病院を除く一般病院全体で、月間在院時間が平均290時間、時間外の月間在院時間が115時間で、若い年代の医師の在院時間が長い。大学病院医師は病院の応援で当直に行くので、そういう非常勤施設での在院時間を含めると、全体としては月平均で340時間。これが産婦人科医の過酷な勤務実態を表した一つの数字。大学病院は週85時間。この調査の目的は、できるだけ(労働環境を)改善していくための基礎データとしてのもので、たまたま出たので持ってきた。効率化を考えていなければ」

澤倫太郎副幹事長「東京に在籍する医師は多いが、休日や夜間には、千葉、静岡、神奈川、群馬、栃木などにも行って、医療圏を形成している。プリフェクチャー単位じゃない。そういったことも現場の意見。われわれは本当に疲弊している」

厚労相「貴重な提言を頂いた。来週にも救急や産科の医師を集め、集中的に意見を伺いたい。すぐに具体的な案は出ないかもしれないが。長期的なあらゆる観点からの処方箋(安心と希望の医療確保ビジョン)を出した。短期的にどうするかの具体策が欲しいと思っているので、検討を始めたい。日本産科婦人科学会の協力も頂ければと思う。ありがとうございました」



海野氏が提出した産婦人科勤務医の在院時間調査


更新:2008/10/31 17:03   キャリアブレイン

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