◎追加経済対策発表 金融強化法の改正も重要
麻生太郎首相が追加経済対策を発表した。生活支援の給付金支給や住宅ローン減税の大
幅拡充、中小企業向け融資・保証枠の追加などが柱である。これらの対策を実施するための第二次補正予算の早期成立とともに重要なのは、地域金融機関に公的資金を資本注入する金融機能強化法の改正である。
民主党は麻生首相の衆院解散・総選挙先送り方針に反発して、対決姿勢を強めているが
、金融危機対策は何よりもスピードが肝要であり、ここは与野党が協調して、より良い改正法案をまとめ、速やかに成立させてもらいたい。
世界の金融、株式市場の激変は、比較的安定していると言われた日本の金融機関も傷め
、資本不足が心配されるに至っている。自力の資本増強が困難な地域金融機関が資本不足回避のため融資を抑え、回収を厳しくすれば、地域の実体経済に深刻な影響を及ぼす。従来の金融機能強化法は今年三月で期限が切れているため、新たな資本注入の制度を整備して金融不安を払しょくすることは、先進国がとるべき金融危機対策として国際社会からも要請されている。
衆院で本格審議が始まった政府・与党の改正法案は、資本注入の条件として原則、経営
責任を問わず、審査期間の短縮を図るとしている。資本注入をスムーズに行う狙いであろう。これに対して民主党は、経営責任の明確化や、農林中央金庫へ資本注入する場合の国会決議などを要求し、修正合意の道はまだ不透明である。
民主党内では、十年前の金融国会の経験が一種のトラウマとして残っていると言われる
。当時の菅直人代表は「金融問題を政局にしない」と発言して金融再生法を成立させ、結果的に窮地の小渕政権をよみがえらせたためである。しかし、深刻な金融問題を政局にしなかったことは、責任政党として正しい判断であった。
日本経済の根幹を揺るがす金融危機の対応策で、政府・与党と民主党との間に互いに妥
協できないほどの違いがあるとは思えない。金融システムの安定という大局に立ち、双方歩み寄って改正案を迅速に仕上げてもらいたい。
◎消防本部の広域化 医療圏との一致は現実的
消防本部の広域化で、石川県が二〇一二年度をめどに検討している十一本部・局から五
ブロックへの移行は、地域医療計画で定められた二次医療圏とほぼ重なり、救急医療で消防機関の役割が高まっていることを考えれば現実に即した選択肢といえる。
東京で搬送後に死亡した妊婦の受け入れ拒否では、産科医不足や周産期医療の当直体制
とともに、救急搬送システムでも大きな課題を残した。同様のトラブルを回避するには医療機関だけでなく、消防も含めた救急ネットワークの充実が欠かせない。
消防広域化は小規模本部を解消し、規模の拡大により組織運用の効率化や財政基盤の強
化を図るのが狙いである。火災対応の迅速化は言うまでもなく、「消防力」を地域医療の充実につなげる視点も重視し、広域化のメリットを最大限に引き出したい。
県が策定した消防広域化推進計画案によると、奥能登の消防本部は「能登北部」、七尾
鹿島、羽咋郡市の消防本部は「能登中部」、金沢、かほく市、津幡、内灘町は「石川中央」、白山石川は「白山石川」、小松、加賀、能美は「南加賀」の計五ブロックに再編される。
このうち「石川中央」と「白山石川」は二次医療圏の「石川中央」エリアに含まれるも
のの、あとの三ブロックは医療圏と同じ範囲である。県の案に沿って各ブロックで協議が進められているが、医療圏に近づけることはこの十年で救急車出動件数が一・五倍に増えた消防業務の変化をみても理にかなっている。消防庁が今月まとめた全国状況では一県一消防本部を目指す自治体が十二あるが、南北に長い石川の地形を考えればブロック分けも妥当な考え方である。
県内では来月から、救急搬送患者の映像を病院へ伝送する新システムの実証実験が始ま
る。医師が映像を通して救急救命士に的確な応急措置を出すことが可能になり、実用化すれば医師と救命士の連携は一層緊密になる。医療圏と消防エリアが重なれば救急業務の一体化が進み、不備が指摘される救急医療情報システムもより整備しやすくなるだろう。