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2008年10月31日

 勝海舟と『源氏物語』の取り合わせは、いささか意外である。海舟の蔵書印のある写本が貴重な物だと分かったのだが、果たして幕末の英雄は、女性好みとされる恋物語を愛読したのだろうか

「須磨がえり」という言葉がある。『源氏物語』は54巻もあり、難解で話も複雑である。12巻目の「須磨」あたりで、たいがい根気が続かず、投げ出してしまう。海舟が所蔵した写本は、「須磨」を過ぎた32巻目。見事全巻を読んだのか、気になるあたりである

海舟が『源氏』を読破したかどうかは分からないが、麻生首相の漫画愛読は有名である。ひいきのコミック「ゴルゴ13」の単行本は、『源氏』をしのぐ100巻を超す。立ちはだかる難題に、1発の銃弾でケリをつける天才狙撃手の物語である

5兆円規模の追加経済対策が出た。射撃にたとえると、景気回復を期して、いろんな標的に狙いを定めた散弾銃の連射である。銃弾1発で決着する漫画のようにはいかない

現実は漫画とは違うが、似る所もある。窮地の中で狙いをつけた射撃に、失敗は許されない。し損じたら、主人公の活躍は終わる。


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