IRデータバンク第33回目のインタビューは、進行型CMRソリューション「eWORKS」で急激に成長しているコムテック株式会社の菅家博社長の登場です。【2008年1月23日実施】
――どのようなきっかけで会社を設立されたのでしょうか。
もともとコムテックは、1976年創業なのですが、私が創業したわけではなく、今の会長の伊倉が弱冠37歳ぐらいのときに脱サラをして起業しました。
ちょうどその頃、日本の色々な金融機関で、カードの発行が増え始め、各社で申し込みやデータ入力などの仕事を「対応設備や人を集めるなど、自社でやることが本当に得策なのか」という問題点が出てきました。
そこで、オペレータの管理や採用などを自社で最初からやるよりも、むしろ専門に生業としている会社に任せた方が効率が良いのではないか、品質や人事問題を含め、お客様が困っていることを我々がお手伝いすることでお役に立てるのではないかという考えから、コムテックはスタートしました。
今では「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」「BPO」と呼ばれているこの言葉も7、8年ぐらい前からコンピュータ業界で使われていました。そういった言葉として定義される前にアウトソーシングやビジネスの処理、例えばカードの申込書内容が本当に正しいのかを確認したり、本人確認の電話やお客様に代わって審査を行ったり、実際に入力した顧客データをしっかりと作ったり、ネットワークが発達してくるとホストコンピュータに入力をしたり、といったことを行っていました。
また、それをベースに顧客データ作成のソフトウェア開発をお手伝いしたり、格納されている顧客データのサーバの運用保守を行ったり、あるいはそれが広がってホストコンピュータの開発等の運用をお手伝いして行くというようなこともございました。
更に、「本人確認の為、勤務先へ在籍確認の電話をかける」という業務が増えてくると、今度はコールセンター業務に着手するなど、そのようにしてコムテックは大きくなってきた会社なのです。
経済的な事など色々な事をトータルで考えると、お客様が自社の社員の方々で行うよりも、我々がお手伝いした方がもっと効率的に、且つ品質も良く、競争力もあるということが受け入れられてきたのではないでしょうか。
――作業の細かい部分に特化した企業が御社ということでしょうか。
特化はしているのですが、サービスをどんどん増やしておりますので、1つ1つどこよりも気の利いたものを提供するということが大切です。「おでん」に例えれば、1つ1つどの具も美味しいし、味があるということでしょうか。
我々の社員がお邪魔すると、どこの会社よりも顧客のために良いサービスを提供しますし、お客様よりも現場の細かいことに詳しくなります。
なぜなら、任せてくださるお客様は当然業務をよくご存知ですが、企業には人事異動があります。その為、担当者が何年かに1回は代わるので、ずっと昔からデータ処理など細かいところのお手伝いをしている人間と、他の部署から異動された担当者との間には、知識の差というのが歴然としてあるのです。
そこで蓄積してきた経験やノウハウが、新しい方が着任された時に、非常に重宝がられるのです。そういうものが発展して行き、先ほど開発と言いましたけれど、「新しくこんなカードを発行する」というようなときには、どのような業務処理にした方が良いか、どんなデータベース構造にした方が良いか、場合によってはどんなコンピュータ設備を使って作ったら良いかなど、今で言えばコンサルティングのような仕事までお手伝いするようになってきたのです。
ですから、コムテックの強さは「まず現場での、見落としがちな細かい例外処理も含めたオペレーションをよく知っている人間がいます」というところなのです。
――言い方を変えればニッチ産業的な感じでしょうか。
ニッチではありません。ニッチというよりも、現場の泥臭い作業と言ったほうが良いかもしれません。例えば総合業務だと、実際に物の入庫があり、トラックでバーッと入ってきた品物が、正しく伝票通りに入っているかどうか、検品をするという作業です。
しっかり管理している品物を、注文通りにピッキングして、段ボールに詰めて出荷する。この一連の泥臭い作業を、実はお客様の代わりに行っているのです。
――派遣とはまた別の形でしょうか。
形態は別にしても、そこには社員やアルバイトとしてお手伝い頂いている方もおりますし、派遣のような形で参加して頂ただいている方もおります。
そのような形で、ずっと30年間、お客様が困っている様々なことをサポートしてきたのです。今の世の中では「IT業界」や「コンサルティングファーム」と言われている人達が結構もてはやされると言ったらおかしいですが、就職などでも脚光を浴びたりしています。けれど、彼らは現場の泥臭い作業というのはわからないで、あるべき論でドキュメンテーションを書いているわけです。
ところが、みなさんも経験してわかると思うのですが、ある企画会議を学生の中で行う場合、その会議で細かい中身をつめたり、タイムスケジュールを決めたりしても、実際にはその通りにいかないケースが多いでしょう。
それと同じで、あるべき論のコンサルティングではなく、現場で発生している色々な事実を知った上でのコンサルティングが大事なのです。それを知らずに、ただ単に机上の理論で紙を書くのとは、実際のシステムを導入していく臨場感が、まったく違う訳です。
――コムテックは現場の部分と…
両方です。地に足の着いた、本当に実践的な運用、システムの開発、展開ができるところが、うちの会社の強味なのです。もともとのルーツとか出発点はそういうところにあります。どこの会社よりも気の利いた質の高いサービスを提供すること、同じサービスをやったとしても、うちの社員がやると「違うよね」と言われるようなところ、そこに感動やお客様の期待した以上の成果で応えていくことを、コムテックはずっとやり続けてきました。
――社員のモチベーションは、どのようにして維持されていますか。
例えばプロジェクトに従事している人だけでなく、プロジェクトから離れて働いている人達の心のケアを専門にするような部隊が、バックヤードにいるわけです。そういう人達が前線で働いている社員の心のケアをしていく。あるいはお客様との関係をうまく構築して、社員とお客様とのリレーション、絆を深めてうまく改善を図っていくのです。
そこから、どうやってコミュニケーションを図り、人と人とのふれあいを良好にしていくかということが重要なことで、そういう意味ではうちの会社は、役職はありますけれども、社長室はありません。ご覧いただくとわかるのですが、僕も役員も普通の机に座っているのです。なぜならば、我々はやはりコミュニケーションを大事にしたいと思っているからなのです。
人間というのは不思議なもので、話しかけやすさや距離、物理的に仕切られていない事やすぐ目に届くところに居るなど、そういう状況を保ちつつ心の壁を作らなければ、自然と相談に来るわけです。僕の方もいちいち部屋から出て「○○さん」と言うより、すぐそばに居ますから気軽に声をかやすくなります。
――ボトムアップ方式ということでしょうか。
ボトムアップというと、ヒエラルヒーみたいな階層ですけれど、逆ピラミッド型と言ったほうが良いのかな。プロジェクトの前線の人達が一番働きやすい環境を作るために、トップマネジメントやエグゼクティブのメンバー、ミドルマネジメントなどが、どんなことを行ったら「前線の人達に良いサービスが提供できるか」、更に「モラルアップして働いて頂くにはどうしたら良いか」と考えた時に、社長室など緊張するようなものを排除し、本当にフランクにネットワーク型で仕事ができるような組織にするのが一番良いのではないかと思ったのです。
――人間的には、社長室というのはひとつのステータスという捉え方もありますが、そういったお気持ちはございませんか。
物理的に部屋が欲しいとか、立派な社長室が欲しいなどとは、僕はぜんぜん思っていないですね。ただ、色々な人から見られているので、ひとりになりたい時や何か考えたい時というのは、やはりあります。そういう場合は、下に降りて喫茶店で少し時間を潰したりしますね。
――では「私が社長だ」というような顕示欲というのはないのですね。
無いですね。望んでもいないし、そういう会社ではありません。社長であろうが何であろうが、必要であればどんどんとお客様の所へ出て行くし、トラブルなどで社員が困っているならば一緒に行って頭を下げることもあります。
――社長は現場の状況を逐一把握されているのでしょうか。
逐一というか、全部を把握することは厳しいです。ただ、お客様とトラブルが起こった時や、何か問題が起こった時、あるいは不祥事が起こったなどという場合には、情報が伝えやすい雰囲気にしておかないといけないと思います。
人間ですから間違うこともありますし、過ちも犯すわけです。そうした時に、それを隠さないで「困っているので、助けてください」と素直に言える環境が、うちの会社にとってはすごく重要なのではと思います。
今、コンプライアンスとか色々言いますが、そういう雰囲気作りが、私は真のコンプライアンス作りではないかと思っています。例えば「悪いことをしちゃダメですよ」と言っても、人間というのはどうしても誘惑に駆られる部分があります。ですから誤摩化したり嘘をついたりします。一生懸命やっていれば評価されたいとも思うでしょう。そうすると、何かまずいことが起ったら隠したり嘘をついたりするというケースもあるかもしれません。
親に対してもあるでしょう。でも、私生活なら良いですけれども、会社という器の中に入った場合には、誤摩化したり嘘をついたりということが、致命的な出来事に発展する可能性があるわけです。ですから、そういうものを極力、会社に勤めている間は素直で正直な気持ちでオペレーションができるという雰囲気作りは、すごく重要ではないかと思います。その為には、役職はあるけれども役職を意識させないという雰囲気作りが大切ですよね。
会社の社長の考え方は色々あると思いますが、僕はやっぱりこのスタイルで行きたいと思っています。作ろうと思えば社長室なんて簡単に作れるでしょ。でも、お客さんのプロジェクトをお手伝いしているという我々の仕事は、個人で行うケースは殆どなく、チームで行います。チームワークや雰囲気が醸し出すハーモニーというようなものから生まれてくる物が、結果として品質になっていきますからね。人と人とのネットワークとかコミュニケーションというものをいかに上げていくかが重要なことです。
――御社ではPBC(パーソナル ビジネス コミュニティ)という方式を採用されているということですが。
期末に社員が自身を振り返って面談で使うシートのことですが、人事評価というのも、定点で評価するのではなく、ずっと関心を持って見ているという事が、僕は重要だと思っています。年に1回や半期で1回など、それはそれで大事ですが、それはあくまでも結果であって、その人に良い仕事をしてもらうにはどうすれば良いかなど、関心を持って接してあげることが重要なのではと思います。