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【記者ブログ】コメント欄がいっぱいなので、ここでまとめてお返事 福島香織 (2/5ページ)
■自慢じゃないけれど、もし私が男だった、もう入れ食い状態だ。男は甘やかされると「バカにするな!」と反発するが、女性は甘えるのもうまい。(もちろん、厳しくされる方が快感だという女性もいるが)。だから、男からはライバル心や敵愾心をぶつけられたことはたびたびあるが、女性から女性の敵といわれたことは、今回が初めてだ。しかし、なかなかいい響きだ、女性の敵。なんか、もてもての悪女になったきぶん。
■バカな質問をする記者を擁護したことが腹立たしい、メディアのかばい合いだ、という方へ。
■まず、記者はナイーブ(幼稚)な質問をしてよい、と私は思う。というより世界中どこでも、ナイーブな質問をする記者はいるし、私もしてしまう。わざとする記者もいる。半分わざと。半分いやがらせ。小馬鹿にした口調や慇懃無礼な口調も。欧米の記者などは、相手がいかに権力者であろうと、いや権力の高みにいる相手こそ、公の場では挑発して見せようとする。彼らの姿をみて、記者とはそういう職業なのだと、私は認識していた。
■くだんの記者は北海道新聞記者として自分の職務に忠実だったと思う。北海道新聞は左傾で、おそらくアンチ麻生内閣であろう。しかし、彼女の仕事を否定すれば、産経新聞の論調にあわせて原稿を書く自分たち自身の仕事も否定することになる。正しい質問、正しくない質問とは、スタンス、ものの見方の問題だ。
■絶対正義、絶対悪など世の中にほとんどない。私は北海道新聞に多数の読者がいる以上、北海道新聞の社説やスタンスが絶対間違っているとは思っていない。産経新聞とは対極にある、というだけだ。新聞が同じ論調、スタンスでなければいけない、なんて独裁国家じゃあるまいし。それにこの質問しちゃだめ、などと言論の自由を規制するような発言を新聞記者自身がいえるわけがない。それは報道の自由という、私たちにとっての金科玉条を否定することだ。それに、私は職務に忠実な人間は、もともと好きである。以前のエントリーにも書いたが銀河英雄伝説で一番すきな登場人物は、嫌われ者のオーベルシュタインである。
■異論を呈すること、自分が同意できない質問であっても、その質問をすることを妨げない。権力者に対して、記者はあらゆる質問がゆるされる、それが自由社会の誇りだ。ただし、これは建前で、日本の報道の自由が実はそこまでのレベルに達していないこともわきまえている。暗黙のタブーの質問というのはあるのだ。だから、日本の報道の自由度は民主主義社会の中では、そんなに高くない。しかし、今回の北海道新聞の質問はその暗黙のタブーに類するものではないと思う。また、言葉遣いは丁寧であった。最低限の礼儀は守っていると思う。
■世界中、あらゆる国で権力者は、記者から意地悪な質問を受ける。コメント欄で書き込んでいる方もいたが、実際、その意地悪な質問をいかにスマートにかわすか、あざやかに切り返すか、多くの民主国家では権力者は研修をうけたり、訓練するそうだ。それが、大きな権力を持ち責任をになうリーダーの資質の一つとみなされている。これは大企業、多国籍企業のトップもおなじことで、私の知り合いのリスクマネージメント会社社長は、北京の外資系企業トップに対して、記者会見の記者のあしらい方の研修を行っていた。
■事実がどうかは別にして、建前として記者は権力に対等に向き合うことができる。だから第3の権力と呼ぶ。たしかに、日本のように若い未熟な記者が最高権力者に直接質問する国は少ないかもしれないが、ベテラン記者だって、ナイーブ(幼稚)な質問をする。彼らの目的は権力者を怒らせることで、その本音を引き出すために、わざとナイーブな揚げ足をとるような質問をするのだ。問題の本質とは違う、そういう質問をする、それは新聞記者として正しい姿か?と問われれば、異論はあろう。