三井住友アセットマネジメント

本文へ移動します。


ホーム > お役立ち情報 > レポート・コラム > アジア拠点最新レポート > 第17回 韓国鉄鋼産業の強み


アジア拠点最新レポート
第17回 韓国鉄鋼産業の強み
introduction
榊原 秋彦 執行役員 兼 アジア中国運用グループヘッド    東京・上海・香港の各拠点からのレポートを掲載しています。現地スタッフならではの生きた情報を、ぜひアジア・中国投資にお役立てください。(2008年9月末にて更新終了)
 
韓国鉄鋼産業の強み

多くの投資家は、韓国といえばサムスン電子やLG電子などのハイテク企業を思い浮かべるかもしれませんが、実は、韓国の一人当たり鉄鋼消費量が世界で最も高い水準にあることについてはあまり知られていないようです。国際鉄鋼協会(IISI)の2007年統計によると、一人当たり鉄鋼消費量は、1位が韓国で1,135㎏、2位台湾781㎏、3位チェコ632㎏、4位イタリア628㎏、5位日本625㎏となっています。この背景として、韓国国内には機械、自動車、造船、電子機器関連の企業が集中しており、これらの企業がグローバルで活躍していることにより、鉄の消費量が持続的に繋がっていることが挙げられます。

韓国の一人当たり鉄の消費量
韓国の鉄板の産業別消費割合

韓国では、製鉄所で作られた鉄は国内で消費されますが、鉄を原材料として作られた最終製品は中国、インド、東南アジア、東欧など多くの新興国に輸出されています。大まかにいえば、韓国国内では鉄鋼の川上分野の需給がタイトなのに対し、川下分野では供給過剰気味といった状況があります。例えば、造船用に用いられる厚鋼板は供給がタイトであるのに対し、需要量の伸びは今後数年続くと思われます。造船業界の厚鋼板需要は、2007年の1,070万トンから2010年には1,790万トンまで増加すると思われますが、国内の厚鋼板の自給率はわずか63%に過ぎません。また、棒鋼・形鋼などの製品は、韓国建設業界の景気停滞などにより現在供給過剰となっているほか、冷延鋼鈑(熱延鋼板を原材料として再加工したもの)は過剰な供給能力が指摘されています。一方、厚鋼板や熱延鋼鈑の生産能力は慢性的に不足しており、ここには有望な投資機会があると言えます。

この関連で、韓国の二大鉄鋼会社であるポスコと現代製鉄をご紹介します。両社とも、厚鋼板と熱延鋼鈑の生産能力を高める方針を固めています。ポスコは世界有数の低い生産コストが特長であり、現代製鉄は現代グループの主力メンバーとして、グループ企業からの安定した需要が期待されることが強みです。

ポスコは韓国国内に一貫製鉄所を持ち、多様な鉄鋼製品を扱う唯一の企業です。2007年には3,100万トンの粗鋼を生産し、世界の粗鋼生産ランキングでは4位となっています。川下分野である韓国国内の冷延鋼板メーカーの多くは、引き続き同社が供給する質の高い熱延コイルを原材料として調達すると思われます。また同社は厚鋼板の生産能力を2007年の360万トンから2010年には700万トンに引き上げ、国内造船業者の需要増に対応する計画です。ポスコのもう一つの強みは、世界中の同業他社と比べ比較的に強いコスト競争力です。コスト競争力は原材料を混合する技術によるもので、例えば、割安な鉄鉱石とコークス炭を鉄製品の品質に障害のない範囲内で最適に混合する技術です。同社には、150万トンの「ファイネックス(FINEX)」技術(従来の溶鉱炉工法より生産原価が削減できる次世代製鉄新技術)の商品化を成功させるプロジェクトがあり、近い将来これが成功すると、従来の鉄鋼生産工程よりも、単位あたり原材料を15%削減し、排出物も90%削減することができます。

コスト競争力のもう一つの源泉は、鉄鋼原料輸送における効率性にあります。ポスコは原材料の75%を専用船ないし長期用船契約船を用いて調達しますが、その運賃は国際価格より1トン当り15~35米ドル安い水準で長期契約されています。また同社の2つの大規模製鉄所は、いずれも韓国の南部の沿海地区に立地しています。
同社の海外展開に関しては、中国においてステンレス鋼を生産するほか、川下分野の事業を大陸で展開しています。また、近年はインド政府と鉄道近代化事業に関する合意書(MOU)を締結し、インド東海岸のオリッサ州に2007年から2020年まで2段階にわたり120億ドル(約1兆2,500億円)を投資し、1,200万トンの生産能力を誇る製鉄所を建設するとともに、鉱山開発を行う権利を手に入れました。一方、ベトナム政府とも交渉し、ベトナム国内に製鉄所を建設することで合意しています。

現代製鉄は、これまで棒鋼・形鋼の生産に特化した世界最大規模の電炉メーカーであり、国内の棒鋼・形鋼価格の決定権を握ってきました。現在建設中の高炉は、2010年から2011年の間に稼動する予定であり、完成後はポスコに次ぐ総合製鉄所となります。生産能力は年間770万トンの棒鋼・形鋼と同300万トンの熱延鋼鈑(2008年見込み)ですが、2010年以降は高品質の熱延鋼板と厚鋼板を生産することで、今後高まる造船用と自動車用の需要増に対応する計画です。同社の強みは、現代グループに属し、現代重工業、現代建設などの潜在的な顧客層を持っていることです。自動車用鋼板の専門メーカーである現代ハイスコは、今後は現代製鉄からの熱延コイルの直接調達を増やし、現代自動車と起亜自動車向けの鋼板を生産する模様です。

今後、世界の鉄鋼需要は中国やインドなどの新興国による工業化が追風となり、増加すると思われます。2007年、中国とインドの一人当たり鉄鋼の消費量はそれぞれ307kg、43kgでしたが、韓国の1,135kgと比較すると需要増の潜在性は十分にあると考えられます。投資家が鉄鋼関連企業を物色する際、どの企業が高品質商品をいかに効率的なコストで生産し、グローバルで市場シェアを拡大していくのかを見極めることがポイントとなるでしょう。韓国の鉄鋼産業は、国内外で多様な鉄鋼製品の需要に応えてゆくことが期待されます。(作成日:2008年9月22日)

Sanghyun Kim(男性) SMAM香港現地法人のアナリスト
バックナンバー
ファンド検索
 
投資信託商品-ファンド検索
アジア・中国関連ファンド
 
◆個別ファンドの契約に関する手数料・報酬等やその他ご契約にかかる費用、ファンドの主なリスクについては、上記の『個別ファンド検索』または『中国関連ファンド』をクリックしていただき個別ファンドのページをご覧ください。◆この資料は、三井住友アセットマネジメント株式会社が作成したものです。情報提供を目的としたものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。特定の投資信託、変額年金保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。◆この資料に基づいて取られた投資行動の結果については、弊社は責任を負いかねますので、あらかじめご承知ください。◆この資料の内容は、作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。◆この資料は、弊社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。◆この資料の市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の一定期間の実績に基づくものであり、将来の市場環境の変動等を保証もしくは予想するものではありません。◆この記事に使用される写真は、イメージを示すものであり、記事内容とは異なることがあります。◆この資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者許諾者に帰属します。
設定・運用 SMAM[三井住友アセットマネジメント株式会社]フリーダイヤル 0120-88-2976 受付時間:営業日の午前9時~午後5時(半休日は午前9時~正午) インターネットホームページ(http://www.smam-jp.com)金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第399号 (社)投資信託協会会員/(社)日本証券投資顧問業協会会員
バックナンバー