この記事は、定期借家切り替え策動を粉砕しよう!
の続きです。
これまでに分かっている実際の切り替え事例を見てみます。
スマイル入居者のみなさんは、どれか該当する事例はありますでしょうか?
・実際の切り替え事例
まず、現在確認されているスマイル・バジリカの定期借家契約書は2種類確認されています。
A)スマイルからバジリカへ貸主変更する場合
スマイルからバジリカへ貸主を変えてくる場合が、こちらの契約書
です。
このケースは23区外と一部の23区内のスマイル物件について確認されています。23区外についてはスマイルが撤退したという情報もあります。
契約書は「定期借家契約書(居住用)」と「約款」が一対になっています。
この場合、突然バジリカの従業員が家にやってきて、貸主が変わったので新しい契約書を書いてくれと言ってきます。
入居者が従業員に対し、貸主変更について説明を求めると、何度聞いてもまともな説明もせず、詳しい事情はわからない、バジリカへ契約を変更するから、契約書に署名してくれと繰り返すだけです。
さらに、肝心の定期借家についても、「バジリカの契約の場合、敷金礼金を払った上で2年間の賃貸借契約になっているが、敷金礼金なしで入居できるスマイルの契約はあまりに違うので、これまでのスマイルの契約に似た1年間の契約で保証人のいない契約にした」と説明しています。まったく定期借家の説明になっていないですが、実際に入居者にはこのように説明しています。
あと、当たり前ですが、この説明は貸主が行う必要があります。つまり、バジリカが貸主になるのであれば、バジリカの従業員が行う必要があり、関係のないスマイル従業員が行った場合は、定期借家契約は成立しません。
なので、その点も名刺を受け取るといったことで確認する必要があります。
また、この貸主がバジリカに変わる場合には、それに伴い、管理会社もスマイル・バジリカとは関係がないと思われる不動産業者に変更となり、家賃振り込み先もその会社に変わるようです。
B)貸主がスマイルのままである場合
そして、貸主がスマイルのままである場合は、こちらの契約書
です。
これは、新入居者に対してはもちろん、現入居者に対してもこちらの契約書で切り替えを図ってきています。
基本的に現行契約が終了する2ヶ月前に、郵送で次契約の書類として送付されることが多いようです。
「承諾書」と「定期借家契約についての説明書」、「定期借家契約書」の3種類からなっています。
「定期借家契約についての説明書」が特徴で、この説明書をもって、借地借家法38条2項の説明義務をクリアしようとしているようです。
「説明書」の3項に「尚、新たな契約につきましては賃料滞納、当該物件の建替え等特に問題なければ締結させて頂きます。」とあります。この文言を読む限りは、それなら契約期間が終わっても継続して住むことができるのかと、一見問題ないように思えますが、これはなんの強制力もありません。
定期借家契約は、これまでにも説明したように、期間満了後は終了する契約なので、基本的には出ていくことが前提です。なので、このような期待感を持たせる条項があったとしても、惑わされてはいけません。
契約終了のために貸主は特に理由はいらないのです。
次に、具体的な切り替え事例を挙げて、それぞれ問題点を指摘します。
・事例1 一部しか契約書が交付されない場合
貸主がバジリカへ変更されるケース(Aの場合)で、契約書の一部である「約款」が交付されない場合があるようです。
従業員が突然家にきて契約書への署名を求めるのですが、そもそも「定期借家契約書」と「約款」の1対で契約書としているはずで、一方を交付しないということがあるのは、おそらくその従業員も定期借家の意味を理解していないのでしょう。
杜撰な対応そのものですが、こういった場合には、別途書面を交付する義務を定めた借地借家法38条2項に反するので、定期借家契約は成立しません。
定期借家契約が成立しなかった場合には、普通借家契約となります。
・事例2 契約期間途中で切り替えを図ってくる場合
この事例も、貸主がスマイルからバジリカへ変わるケース(Aの場合)です。
注意するべきは契約期間で、いつから始まっていつ終わる契約なのか、という点です。
たとえば、現在有効である契約の契約期間が平成19年11月~平成20年11月であったとしたら、契約期間中の平成20年7月くらいに突如契約切り替えを迫り、そのまま定期借家の契約期間も平成19年11月~平成20年11月のままである場合があるようです。
つまり、契約期間中に契約期間はそのままで、契約の内容を定期借家契約へ変えてしまうということです。
これは、「契約日前にあらかじめ」説明する義務を定めた借地借家法38条2項に反するので、定期借家契約は成立せず、普通借家契約となります。
・事例3 現在の契約期間が終了する前に、契約書を郵送してくる場合
スマイルは2ヶ月前までに解約を通知するように義務付けており、現契約が終了する2ヶ月前に新しい契約書を送付してきます(主にBの場合)。
この場合に、問題となるのは、借地借家法38条2項の「建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」という条文の「説明しなければならない」という文言の解釈です。
この条文を読めば、書面を交付した上で、「口頭での説明」を前提としていると解釈するのが自然ではないでしょうか。
この解釈に立った場合には、契約書を郵送で送りつけるだけでは定期借家契約は成立しません。
判例が定まっているわけではないので、はっきりしたことは言えないですが、もし裁判で争った場合には重要な争点になることは間違いありません。
そもそも、普通借家契約から定期借家契約へ切り替えは、紛争の原因になるのは明白で、平成11年12月の導入時にはその事態を懸念した参議院から切り替えをしないよう求める附帯決議
が出されています。
これは附帯決議なので、強制力はもたないですが、無用な紛争を避けるため原則として守られるべきではないでしょうか。
以上のように、定期借家契約は法律により成立要件が限られており、それほど容易に切り替えを行えるわけではないのです。
切り替えには応じないことが一番ですが、もし書類にサインしてしまったとしても、成立要件を満たしているか、十分確認する必要があります。
もし不安な場合や判断がつかない場合は、お気軽にご相談ください。
連絡先は nosmileact@gmail.com
です。
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