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笑顔で支援者に謝意―村上裁判で両親ら

 看護職に誇りを持ち、懸命に看護労働に努めた村上優子さんが過労死した裁判の控訴審は、原告側の完全勝利となった。「二度と娘のような悲劇を繰り返さないで」と、看護師の職場環境の改善を求め、国を相手に闘った両親。緊張した面持ちで判決の行方を見守り、その瞬間には安堵の表情を見せて「皆さんのおかげでここまで闘うことができた」と傍聴席に集まった「看護師・村上優子さんの過労死認定・裁判を支援する会」(以下、「支援する会」)のメンバーらに感謝した。(尾崎文壽・山田利和)

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■勝訴判決に拍手起こる
 「控訴人(国)の請求をいずれも棄却する」−。10月30日午前10時、大阪高裁73号法廷。大谷正治裁判長が判決文を読み終わると、父雅行さんは拳をぐっと握り締め、傍聴席に集まった支援者らに笑顔を見せた。優子さんの遺影を抱いて、緊張の面持ちで判決を聞いていた母加代子さんは、弁護団と握手し、抱き合って喜んだ。傍聴席からは「完全勝訴だ」との声とともに拍手が沸き起こった。
 閉廷後、大阪市内で開かれた報告集会には「支援する会」のメンバーら約50人が集まった。まず弁護団が勝利を報告し、判決内容について解説。松丸正主任弁護士は「過労死ラインの80時間を超えていないが、日勤−深夜、準夜−日勤など勤務間隔の短い質的な労働の過重性を認めた判決で、意義がある」と述べた。

 雅行さんと加代子さんは「皆さんの応援のおかげでここまで闘ってくることができた」と笑顔で謝意を表した。一方、一審判決後に国が控訴したことを振り返り、表情を引き締めながら、「(国が上告をあきらめて)勝利が確定するまで、皆さんのお力をお借りしたい」と協力を求めた。

■国の上告断念を求める−支援する会
 報告集会後、「支援する会」は幹事会を開き、国に対して上告しないよう要請する方針を固めた。11月初旬にも厚生労働省と法務省を訪ねる予定だ。現役看護師の娘を持つ同会の川辺和宏事務局長は「これから(上告の期限までの)二週間、署名活動を続けるとともに上告させないための活動に力を入れていく」と話した。
 また、同会は「『勝訴判決』国は上告せず確定を」と題した声明文を同会のホームページで発表した。医師・看護師の過重労働、離職問題や病院閉鎖などの社会問題を改善し、「安全安心の医療を確立させること」が最大の課題とした。

 判決については、「看護労働の過重性、夜勤交替制労働の過重性を、あらためて認めさせた」と評価。その上で、「労働基準法違反ワーストワンといわれる医療職場の改善なくして、国民の命を守ることも看護師の過労死・健康破壊をなくすこともできない」として、医療現場の改善に向けて活動していく方針を示した。

■日本看護協会がコメント
 日本看護協会の小川忍常任理事はこの日の判決について、「勤務医もそうだが、看護師も残業が多い。済生会中央病院での看護師の過労死認定の件もあったため、超過勤務や過重勤務の実態について日本看護協会としての実態調査を計画している。25歳という若さで亡くなるというこのような事件が二度と起きないよう、看護協会としても取り組みを進めていきたい」とコメントした。


更新:2008/10/30 17:38   キャリアブレイン

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