長崎市立市民病院と日赤長崎原爆病院との統合構想をめぐり、県の担当者が29日、長崎市役所を訪れ、田上富久市長に統合を求める文書を手渡した。県側は、新病院の用地取得費用の支援なども提示したが、田上市長はあらためて現在地での市民病院建て替え計画を変更しない考えを伝え、統合構想は事実上終結した。
県側提案は、両病院の統合により、高機能病院として医療サービスの充実、若い医師の養成などが可能になると主張。日本赤十字社が運営する公設民営方式で長崎駅周辺に建設し「市は現計画より25年間で150億円以上の支出の抑制ができる」としている。
これに対して、田上市長は「原爆病院は長崎市民にとって特殊な位置付けの病院。そういう市民の視点は欠かせない」などと述べ、統合に否定的な考えを伝えた。
県の統合案は、8月からの自治体や医療関係者による公立病院改革プラン検討協議会での議論を基に作成。金子原二郎知事は28日「最終的には設置者の市が決めること」との見解を表明しており、田上市長の反対で統合の実現は困難となった。
=2008/10/30付 西日本新聞朝刊=