胎児の異常や切迫流産など、リスクの高い妊娠に対応する医療機関で、2008年10月末現在、75カ所が指定されている。複数の産科医を配置し、新生児用の集中治療室などを備え、24時間体制で運営。費用の3分の1を国の補助金で賄っている。厚生労働省は全都道府県に設置を求めているが、山形、佐賀の両県は未整備。厚労省は産科医が常時複数で対応することが望ましいとするが、母体胎児集中治療管理室が6床以下の施設は別の医師を呼び出せる態勢をとることを条件に1人でも可能とする。
(2008年10月30日掲載)
緊急処置の必要な妊婦や赤ちゃんを受け入れる全国の「総合周産期母子医療センター」(計75施設)のうち、共同通信の緊急調査に回答した60施設中55%は必要な産科の常勤医数を確保できずに定数割れに陥っていることが29日、分かった。当直の産科医が1人態勢のセンターが半数を占め、全体の90%以上が産科医確保に「苦労している」とした。
センターに指定されている東京都立墨東病院など8病院に受け入れを断られた妊婦の死亡判明から1週間。母子の命を救う「最後のとりで」ともいえるセンターの中には、東京以外でも綱渡り診療を余儀なくされているところが少なくない現状が浮かんだ。
調査は23日から全センターを対象に質問用紙を配布して実施。匿名を条件に医師数や診療上の不安を尋ね、60施設(回答率80%)からファクスで回答を得た。
定数は各病院が望ましいと考える医師数を独自に定めるもので、それより産科の常勤医数が下回っているのは33施設(55%)。うち4施設は定数の半分以下だった。定数を満たすのは17施設(28%)で、残る10施設は定数なし(9)と無回答(1)。
国はセンターについて原則「24時間体制で複数の産科医が勤務することが望ましい」としているが、平日または土日の当直が1人態勢で、緊急時は別の医師を呼び出しているのは30施設(50%)。ほかは2人から3人の医師が当直していた。1人当直でも地方の施設からは「待機の医師が10分程度で駆け付けられるので問題ない」などの意見は多かった。
産科医の確保に36施設が「非常に苦労している」とし、「やや苦労している」(19)も合わせると「苦労している」は92%。産科医不足のために何らかの受け入れ制限をしているのは5施設あり、1人当直を理由に受け入れを断った経験のある施設も3カ所あった。
医療を提供する上での不安(複数回答)は「産科医の確保」が85%で最多。次いで「新生児科の医師確保」(73%)、「病床不足」(55%)、「脳外科などほかの診療科との連携」(22%)などが挙げられた。「いつまで続けられるか不安。疲れ切っていますから」(中部地方のセンター)などの切実な声もあった。