米軽飛行機墜落現場で、調査の要請にかかわらず立ち入ることができず不満を表す真喜屋区の代議員ら=25日午前10時ごろ、名護市真喜屋の墜落現場近く |
嘉手納エアロクラブ所属の米軽飛行機が名護市真喜屋の民家や国道58号付近に墜落してから一夜明けた25日午前、機首が大破し、右翼がへし折れた無惨な機体の全容が明らかになった。状況を把握しようと真喜屋区の代議員や国会議員、市議らが現場に続々と駆け付けたが県警から“門前払い”される場面も。現場は立ち入りが制限され、物々しい雰囲気に包まれた。一方、県内の平和団体は「ただでさえ米軍の戦闘機や給油機に生活を脅かされているのに、米兵の遊び目的の飛行機にまで脅かされるとは」と反発し、強い抗議の声を上げた。
■住民“門前払い”
【名護】墜落から一夜明けた25日早朝、現場のサトウキビ畑では、県警、名護署の警察官多数が現場周辺に待機。午前9時半すぎには、応援警察官や現場に立ち会う米軍関係者らが続々到着し、一帯は物々しい雰囲気に包まれた。周辺住民らも早朝から詰め掛け一部機体が見える現場を不安そうに眺めていた。
この日未明に国道58号の封鎖は解除されたものの、現場一帯は県警の規制線が張られ、侵入者への厳重な監視態勢が敷かれた。現場確認に訪れた西銘恒三郎、嘉数知賢の両衆院議員をはじめ、末松文信副市長、県や市の基地問題関係担当者、名護市議会議員らが、警察に何度も確認のための立ち入りを求めたが、「令状に基づいた検証」との説明でいずれもシャットアウトされ、現場内には一歩も入れなかった。
渡具知武宏市議会軍特別委員長は「とにかく中に入れてくれと要請しているが入れない」と困惑。真喜屋区の代議員十数人で現場を訪れた宮城正さんは「われわれは区民の代表。現場を見なければ区民に説明できない。沖国大のヘリ事故の例もある。代表者だけでも入れるべき」と憤っていた。交渉の結果、検証終了後に立ち入りできる見通しだ。
午前10時すぎから本格的な現場検証に向けた準備が進められたが、県警と米軍の検証方法に違いがあり、協議が難航。米軍関係者の到着から2時間半後の正午すぎにようやく現場検証に着手した。
国道沿いを流れる用水路には、原因は分かっていないが多くの魚の死骸(しがい)も浮かんでいたことから、県北部福祉保健所が水を採取するなどして調査している。
■真喜屋区、抗議決議へ 民間上空「飛行禁止に」
【名護】真喜屋区(喜納健治区長)は25日午前8時から緊急代議員会を同区公民館で開き、週明けにも抗議決議を行うことを全会一致で決めた。代議員は墜落原因や飛行経路など一切の情報が入らない状況に怒りや不満を口にし、沖縄防衛局の真部朗局長や名護市の末松文信副市長に、墜落原因などの解明、代議員全員の現場立ち入りを強く求めた。
代議員会で、代議員は真部局長や末松副市長に対し「真喜屋区上空が普段の飛行経路なのか、それとも何らかの原因で通常のルートを外れたのか」「民間地上空を飛ばないよう要請してほしい」「燃料切れ以外に原因はないのか」などと次々に質問や要望を繰り返した。また、現場が民間地区内にありながら、一歩も現場に入れないことにいら立ちを見せ、区長と地主、代議員の現場への立ち入りを要請した。
真部局長は「米側とコンタクトは取っているが、(墜落原因などについては)まだ連絡はなく、防衛局もつかめていない」と説明。末松副市長は飛行経路について「緊急で正規のルートを外れたのかどうかも含め、市も情報を集め、報告したい」と語った。
代議員の一人で、真喜屋小PTA会長の桑江良弘さん(50)は「一歩間違えれば、小学校にも落ちた可能性があった」と話し、「週明けにも学校側に話し合いを持ち掛けたい。事故を目撃した子どもたちの状態を調べた上で、心のケアが必要なのかも含めて話し合っていけたら」と語った。
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