【第51回】 2008年10月30日
憶測が風評を呼び大騒動に…
解散総選挙“空騒ぎ”の正体
人一倍自意識が強いからこそ政治家になり、さらにその中でも人一倍自信があるからこそ首相になっているのだ。とくに麻生首相は7年、4回にわたって挑戦している。当然に、自分が首相になれば、その人気を背景に内閣支持率は上がり、党の危機を救うのだと信じる方が自然ではないか。
となると、解散を急いだのは誰か、ということになる。マスコミによれば、その答えは公明党の都合ということで一致している。
〈東京都議選を重視する公明党は、できるだけ、7月の選挙日程から国政選挙の時期を外したい〉
これが、繰り返し説明された「早期解散論」の根拠だ。恥ずかしながら、筆者もそれは説得力のある理由だと見ていた。実際、その根拠をもとにした記事も書いている。
だが、高木陽介公明党選対委員長に教えられ、よく調べてみると、それはまったくの事実無根の「風評」であることが判明した。
過去20年で、都議選は5回行われている。じつはそのうちの4回で、都議選の前後1、2ヵ月以内に国政選挙が行われていたのだ。
・1989年は7月2日に都議選で、同月23日に参院選
・1993年は6月27日に都議選、7月18日に衆院選
・2001年は6月24日に都議選、7月29日に参院選
・2005年は7月3日に都議選、9月11日に衆院選
しかも、驚くべきことにそのすべての選挙で公明党は勝利している。
つまり、自民党も、民主党も、メディアも、国民も、すべては存在しない「風評」に基づいて、「解散騒動」に乗っかり、大騒ぎをしていただけの話なのだ。
今回は、経済的な損害で済んだから、ましなのかもしれない。仮に、これが戦争だったとしたら……。実際、こうした世論は恐ろしい結果をもたらしたかもしれない。そう思うと、今回の「解散騒動」はもっと検証されてしかるべきなのではないか?
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上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。
永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。