【第51回】 2008年10月30日
憶測が風評を呼び大騒動に…
解散総選挙“空騒ぎ”の正体
また、投票用紙を印刷するなどして、「騒動」に翻弄された地方自治体も少なくない。フライング気味に投票箱を発注してしまった自治体もあった。
被害は、民間にも及んだ。選挙前と選挙期間中は、旅行や宴会などを控える傾向にあるため、ホテルなどの観光業は大打撃を蒙っている。実際、地方の大型ホテルは、揃って稼働率を落とし、宴会等の予約もキャンセル続きになり、ひどい目にあっている。
世界的な金融危機で、日本社会にも不安が広がっている。にもかかわらず、麻生首相は経済のマイナス要因となるこうした「騒動」の原因を取り除くことができなかった。その点で、一国のリーダーとして、合格点をつけるわけにはいかないだろう。
解散を急がせたのは
本当は誰なのか
とはいえ、確かに同情に値する点もある。麻生首相は就任直後から、「解散はいつか」という番記者たちによる質問攻撃にさらされた。それは連日のように続き、結果、「解散日は私が決めます」という当たり前のことを繰り返し言う羽目になった。それはある意味、就任した瞬間に辞めろと言われているに等しい。そんな気の毒な内閣総理大臣が過去に存在しただろうか。
だが、そうはいっても、政治は結果責任である。酷ではあるが、麻生首相には「解散騒動」を止める責任があったはずだ。そして今週、それはようやく止まったのだが、残念ながらあまりに遅きに失したようだ。
この騒動のそもそものきっかけは、古賀誠自民党選対委員長と関西創価学会幹部の「合意」にあった。それを、総裁選の最中の9月18日、朝日新聞朝刊が一面トップで報じたことで、一気に解散スピンが広まった。
麻生首相に選挙を急ぐ理由はなかった。冒頭解散をしないと内閣支持率がどんどん低下し、選挙に勝てなくなるという話がまかり通っていたが、だいたい首相がそんなことを考えるはずもない。いったいどこの国に、トップになった瞬間から、国民の人気を失うと自覚するリーダーがいるだろうか。
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上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。
永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。