【第51回】 2008年10月30日
憶測が風評を呼び大騒動に…
解散総選挙“空騒ぎ”の正体
今週、新聞各紙は、麻生首相の「政局よりも政策」という言葉を報じて、ようやく自ら作り出した「早期解散論」「早期解散論」に終止符を打った。
就任以来一貫して繰り返してきたこの首相の言葉は、なぜか、ずっと無視され続けてきた。代わりに、紙面にはただの一度も発したことのない「先送り」「見送り」といった見出しが躍り続けた。
しかし、それも限界に来たようだ。昨日(10月28日)、最後まで「解散は近い」と粘っていた朝日新聞も、ついに選挙班を解散し、通常態勢に戻している。「先送り」という便利な言葉で、自らの誤報を糊塗してきた新聞などのメディアだったが、これですべて白旗を揚げたことになる。
それにしても9月から続いてきたこの「解散騒動」とはいったい何だったのだろうか。
解散騒動が日本中に
及ぼした被害は甚大
じつは、筆者の記事も含めて報道の「勝ち」「負け」など取るに足らないどうでもいいことである。問題は、なぜ2ヵ月近くもこうした「解散騒動」が続いたのか、ということに尽きる。
背景には、「騒動」を許し続けた麻生首相の政権運営能力の低さと、情報・危機管理への甘い認識がある。そのおかげで、麻生政権は日本社会に大いなる損害を与えたのだ。
今回の「解散騒動」によって、一部の衆議院議員や立候補予定者は、選挙事務所の設置や人件費などへの支出で、大いに損害を被ったとされる。実際、自民党幹部クラスの中にも、事務所を数箇所設置したため、電気、電話などの敷設を含めて、数千万円の損失を被った議員もいる。
マスコミもまた、ある意味で被害者となった。朝日新聞のように「選挙班」を作り解散しただけならばまだましだ。テレビ局の中には、選挙特番の準備のために、すでにスポンサーを募り、スタジオを押さえ、キャスティングまで終えたところもあった。
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上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。
永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。