尾上菊之助が11月の東京・新橋演舞場「花形歌舞伎」の「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の通し上演で政岡に初挑戦する。菊之助は31歳で、初演年齢としては戦後最年少という。政岡は女形最高峰の役の一つだ。「今やれるとは思っていなかった。知れば知るほど役の重さが分かってきました」と話す。【小玉祥子】
政岡は足利家の若君である鶴千代の乳母で、八汐(やしお)ら悪人たちから若君を守ろうと力を尽くしている。鶴千代毒殺の危機が迫ったとき、犠牲になったのは政岡の息子の千松であった。
菊之助は「政岡の身分は高くない。一歩下がった立場です。それでいながら若君を守るために体を張る。じっとこらえた中に女の強さがないといけません。おなかでお芝居をすることになります」と説明する。
祖父の尾上梅幸、父の尾上菊五郎も演じてきた役だが、坂東玉三郎に教わる。菊五郎も玉三郎も中村歌右衛門の教えを受けた。親子は教えずとも似るもの。「あえて違う指導者に」という父の考えからという。
10月には「十種香(じゅしゅこう)」の勝頼と「直侍(なおざむらい)」の三千歳(みちとせ)を初役でつとめるなど、充実した舞台活動を展開している。今回は義太夫物の大曲の子持ちの役だ。
「自分にない部分がたくさんあります。感情の内部にある引き出しを使おうかとも思いますが、そうすると失敗することが多いので、おけいこの中で、いろいろ考えていきたいと思います」
今回は鶴千代の身代わりに千松が命を落とす「御殿」の前に「竹の間」が付き、政岡の置かれた状況がより鮮明になる。
「『飯炊(ままた)き(子供たちにご飯を炊く場面)』はいたしませんが、『竹の間』があるので筋は分かりやすくなるはずです」
仁木弾正が市川海老蔵、八汐が片岡愛之助、細川勝元が尾上松緑、荒獅子男之助が中村獅童。
昼の部「吉野山」では、菊之助は静御前を踊る。忠信は松緑。11月1日から25日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。
毎日新聞 2008年10月29日 東京夕刊