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茨城・医療考:筑西市民病院の行方/下 迫る決断の時 /茨城

 ◇再生には理念が不可欠 民営化も「全適」も茨の道

 筑西市民病院の運営状況を調査してきた市議会の特別委員会(百目鬼晋委員長)は8月、半年間の審議を経て「新たな経営者を置き、責任を明確化することが重要だ」と結論付けた。特別委は望ましい経営形態として、職員は公務員のまま人事や予算など経営の権限を病院に移す地方公営企業法の全部適用(全適)か、民間移譲の二つの案を提示した。

 「病院は市政の最重要課題。頭から離れたことはない」。冨山省三市長は28日、市役所の一室で、決断を迫られた状況にあることを強調した。特別委が提示した両案に加え、現状維持や病院廃止、指定管理者制度などの公設民営型を加えた複数の選択肢で検討を続けていると明かす。だが、どの案でも先行きは不透明で茨(いばら)の道が待つ。採算性の乏しい市民病院は、民間の譲渡先を確保するには困難が予想される。また、病床利用率が低調なことから、国のガイドラインに従い、病床20床未満の「診療所」へ転換を強いられる懸念もある。

    ◇

 市民病院に限らず、経営の形を見直す公立病院は増えている。全国自治体病院協議会のまとめ(9月1日現在)では、これまで24病院が民間に経営を移譲。さらに47病院が公設民営、279病院が「全適」を選択した。千葉県銚子市の市立総合病院のように事実上の閉鎖に至った例もある。

 筑西市が抱える医療機関は市民病院だけではない。桜川市と共同で運営する県西総合病院(桜川市鍬田)も経営悪化に直面する。人口あたりの医師数が全国最低レベルの県内の中でも地域差は著しく、県西地区の状況は極めて深刻だ。両市を含む周辺5市町で構成する2次医療圏「筑西・下妻医療圏」は、人口10万人あたりの病院勤務医数は43・7人。全国平均(137・1人)の3分の1以下で県内で最も少なく、「つくば医療圏」とは5倍以上の開きがある。

 地域の病院勤務医の負担を軽減するため、特定の病院に医師を集約する必要性を指摘する声もあり、市民病院と県西総合病院との再編案も浮かんでは消える。冨山市長は「膨大な資金が必要になる。県がやってくれるならもろ手を挙げて賛成するが」と財源不足を理由に再編については消極的だ。「どれだけ遅くとも12月議会までには結論を出したい」。残された時間はあとわずかしかない。

 公立病院の経営に詳しい城西大の伊関友伸・准教授(行政学)は「市が今後、市民病院でどのような地域医療を目指すのか理念を明確にしない限り、『全適』でも民営化でも再生は難しい。不必要な受診は避けるなど、市民全体で地域医療の再生について議論し、行動することが必要だ」と指摘する。【八田浩輔】

毎日新聞 2008年10月30日 地方版

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