原料である鉄スクラップ価格の暴落を背景に我が国大手電気炉メーカーが鋼材を大幅に値下げする。ピークだった夏場の6割前後である。まだ採算は取れるのだろうが、決断の背景には今後への危機感があるように思う。
鉄鉱石を主役とする鉄鋼生産にとってスクラップはいわばマージナルな位置付けにある。しかも完全な市況商品、加えて多くは建設向けなどの汎用的な鋼材の生産に向けられる。だから景気拡大期にはスクラップ価格はすぐに上昇し、景気減速局面では一挙に下落する。そのスクラップ価格が直近3カ月余りで何とピークの2割前後の水準にまで急落したのである。
飛躍的に拡大した中国鉄鋼業もここに来ての落ち込みは激しく鋼材価格も下落の一途をたどっている。高級鋼比率を高め超フル生産を続けた我が国高炉メーカーもいよいよ減産である。欧州の大手高炉メーカーはいち早く生産を落とした。金融危機の衝撃をまともに受けて、世界経済は収縮を始めた。世界鉄鋼業を襲っている変化はまさに象徴的である。
米欧当局による金融機関への資金注入を始めとし、IMFに続く世銀の緊急融資など国際社会全体が金融安定化策を急いでいる。同時に各国とも実体経済への下支え策を打ちつつある。だが経済の収縮は加速度的に進む。その前に止められるか否か。キーワードは「徹底した国際協調」と「即効性ある手立ての断行」である。銀行保有株の下落が中小企業への融資に即響くような制度は即刻見直すべきだろう。
今年の秋は「セイタカアワダチソウ」の黄色がやけに目につく。北米原産、荒れ地を好む花である。何としてもこういう花が咲き誇るような世界にはしたくない。(啄木鳥)