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2008年10月30日

 「貴種伝説」という物語のパターンがある。「水戸黄門」や「遠山の金さん」がその一例だ。貴族に生まれながら庶民として育ったり、王子様が庶民世界に紛れ込むなど、大衆向けの名作がある

学問的には「貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)」といい、貴公子が身分を隠して庶民と暮らし成長していく話の原形が古典にあるという。最後に「おそれ多くも」と出自が明らかになり、庶民がひれ伏すワンパターンだが、日本人に好まれる

先の麻生首相のスーパー視察は「貴種伝説」の応用に見えた。カップめんの値段をチェックするのを忘れて、国会で「4百円か」と答えたのはご愛嬌。そんなことを知っていても庶民感覚のある首相だとの評価を受けるわけではない

「ホテルのバーは安い」と胸を張ってもいいが、その発言で「庶民の1票」が減りはしても増えることはないだろう。それが分かっているかどうかが問題なのだ。民主党のニンマリ笑う姿が想像できる

きょう麻生首相が解散について会見する。解散権は首相の専権事項。「ええーい、これが目に入らぬか」の得意顔が目に浮かぶ。が、ひれ伏す者がいるかどうか。


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