政府・与党が29日、追加経済対策の柱である総額2兆円規模の定額減税を、「給付金」方式への変更で合意したのは、現金やクーポン券など見える形で金が渡るほうが選挙対策上、効果が高いとみてのことだ。公明党の提案で99年に実施され、「バラマキ」と批判された「地域振興券」(総額約7000億円)を連想するため、公明党は「減税」方式を主張していた。これを自民党が押し切った形だが、野党は批判を強めている。
給付金方式は28日の経済対策に関する与党政調幹部の会合で、自民党が公明党に提案。29日の会合で公明党が受け入れた。
定額減税は、公明党の主導で8月の総合経済対策に実施方針が盛り込まれたが、過去の批判を念頭に減税方式とし、目的も「原油高による燃料や食料価格高騰を穴埋めするもの」と、例外措置であると強調した。しかし自民党は、減税方式ではサラリーマンと自営業者で実施時期がずれるなど手続きが複雑であると指摘。税制改正がいらず、支給時期を選べて選挙戦略に絡められる給付金方式に切り替えるよう求めた。
実施方式が変わっても、財源に「霞が関埋蔵金」と言われる財政投融資特別会計の余剰金を充てる以上、関連法案の成立が不可欠。野党が反対すれば財源確保が難航するのは必至だ。民主党の鳩山由紀夫幹事長は29日の同党会合で、給付金方式を「究極の選挙対策。政策として出てくること自体が政権末期だ」と批判した。
麻生太郎首相は同日夜、「年内にというのと、年を越すのとはだいぶ意味が違うと思う」と述べ、給付金の早期支給を検討する意向を示した。首相官邸で記者団に語った。効果については「(地域振興券を配布した)あの時と今と、経済情勢は全然違う。今の方が(経済状況が)きついから効果は大きいと思う」と述べた。
地域振興券での消費のほとんどが日用品購入に充てられたとの指摘には「生活対策としては、それなりの効果があると考えるべきだ」と強調した。【古本陽荘、木下訓明】
毎日新聞 2008年10月29日 21時43分(最終更新 10月30日 1時23分)