新・長崎市立市民病院と日赤長崎原爆病院の統合を視野に高機能病院を新設する県の再編案に対し、長崎市の田上富久市長が応じない姿勢を示したことを受け、金子原二郎知事は28日、「あくまでも(再編案を)受け入れるかの最終決定は長崎市だ。われわれが無理を言ってはいけない」と定例会見で述べた。知事の発言は事実上、再編案の断念となる。【宮下正己】
知事は、田上市長の姿勢を踏まえて「(再編案の実現性は)ないでしょう。市に(判断を)任せるならやむを得ない」とも述べた。一方で「長崎市だけが非常に慎重論だが、それ以外はこういった(高機能)病院の必要性を感じている。県民のために将来を見越した新病院を作ったほうがよく、今回はチャンスだった」と無念さもにじませた。
県は(1)長崎市内に救急救命センターを備えた高機能病院がない(2)新臨床研修医制度で長崎大医学部卒業生が県外流出している--ことなどから、医療レベルの維持・向上と医師確保のため高機能病院の新設が必要と判断。長崎市の市民病院建て替え計画では不十分だとし、同市に対し原爆病院との統合による実現を画策していた。
だが両病院の統合は建て替え計画の規模拡大につながり、建設場所の変更が必要。田上市長は27日の定例会見で「(建設場所は)変えない」と述べるなど一貫して計画変更に応じない姿勢を示してきた。統合後の病院の運営形態を巡っても県と意見の隔たりが大きかった。
県は29日、再編案実現に向けた県の協力方法を田上市長に提示し、市の正式回答を求めるが、市が応じる見通しはない。県関係者が「田上市長なら説得できると思った」と振り返るなど、病院再編を仕掛けた県の誤算といえ、見通しの甘さが指摘されそうだ。
〔長崎版〕
毎日新聞 2008年10月29日 地方版