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設置許可 親が名乗り出ない赤ちゃん 一般家庭で育てる道も
「こうのとりのゆりかご」に預けられた赤ちゃんは、慈恵病院からの通報を受け県中央児童相談所が保護する。同相談所では「ゆりかご」を機に、3月末から「出産・養育についての相談」が始まっている=熊本市長嶺南2丁目
熊本市が設置を許可した慈恵病院(同市島崎)の「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」。親が育てられない赤ちゃんを匿名で病院に預ける施設だが、最後まで親が名乗り出ない場合、赤ちゃんは社会の手で育てられる。乳児院や児童養護施設で過ごす以外に、一般家庭に引き取られる道が里親制度と養子縁組だ。
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里親制度 登録受け、親に代わり養育
里親制度は児童福祉法に基づき、さまざまな家庭の事情で家族と一緒に生活できない子どもを、里親の登録を受けた家庭が預かって養育する制度。養育期間は数日から数年間までさまざまだ。
里親には(1)実の親が子どもを育てられるようになるまでの期間や、子どもが社会的に自立する期間まで、実の親に代わって養育する「養育里親」(2)三親等以内の子どもを養育する「親族里親」(3)児童福祉などに従事した人などが研修を受け、虐待などの特別な環境の子どもを専門的にケアする「専門里親」(4)ボランティアとして一週間程度、児童養護施設などの子どもを預かる「短期里親」の四つの種類がある。
県中央児童相談所によると、三月末現在で県内の里親認定・登録数は八十九人。うち実際に子どもの養育をしている委託里親は二十八人。里親の下で養育を受けている子どもは三十七人いる。委託里親の九割が養育里親だ。
県里親協議会の米田早利事務局長は、「子どもが成長する過程で、自分の親はだれなのかと出自を知りたがるのは自然のこと。もし『ゆりかご』に預けられた子どもが将来、里親に託されることになれば、子どもの心の面のサポートや里親の教育に力を入れてほしい」と訴える。
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養子縁組 戸籍に記載、家族に「実子同様」の制度も
民法上の家族関係にはない里親に対して、預かる子どもを戸籍に記載して家族となるのが養子縁組。中でも一九八八(昭和六十三)年から始まった特別養子縁組は、法律上も実の親との親族関係は終わり、戸籍には「長女」「二男」などと実子と同じ記載がされる。戸籍上は「養子」で実の親との関係も続く普通養子縁組と比べ、子どもは実子同様となる。
しかし、それだけに厳しい条件もある。(1)養子となる者が六歳未満(2)養親による養育を試験的に六カ月以上行い、家庭裁判所が子どもの利益のために必要であると認めることなどだ。原則、離縁も認められない。
中でも「ゆりかご」の赤ちゃんにとって、最もハードルが高いとみられる条件は、実の親の同意が必要な点。名乗り出ないままだと得られない。しかし、熊本家庭裁判所は「(特別養子縁組の)申し立てが必ずしもできないというわけではない」と説明する。申立書には養子縁組の動機など申し立ての事情を記入する項目や、養子となる子どもの状況などを記入する欄があり、実の親が分からない場合でも事情を詳しく記入すれば、申し立てはできるという。
同裁判所によると、特別養子縁組の数は極めて少ない。〇六年の県内の特別養子縁組はわずか四件。〇五年六件、〇四年三件と、ここ数年は同じような状況が続いている。「実の親子関係が終わるため、それだけに申し立ての条件が厳しい。申請自体も少ない」と同裁判所では話している。(田端美華)
(熊本日日新聞2007年4月9日付朝刊)
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