飯塚市で92年2月に小学1年の女児2人(ともに当時7歳)が絞殺された事件で死刑判決が確定していた久間三千年死刑囚(70)の刑が28日、執行された。事件から16年。女児の遺族や地域住民はそれぞれの思いで死刑執行を受け止めた。
「一番聞きたかったのは(久間死刑囚の)心からの反省の言葉。それは聞けないままだった」。同市で小学校の教職につく1人の女児の父親(50)は静かに語った。06年9月の最高裁判決で死刑が確定したことで、事件に一区切りをつけていたという。「死刑の執行は司法制度の中のこと」と冷静に受け止めた。
妻は子供の命が奪われる事件を伝えるニュースに、涙を見せることもあるという。「命の大切さをどう伝えるか」。父親は勤めている学校で危機管理マニュアルを見直したり、防犯教室を開いたり、児童の安全確保に取り組んでいる。
「娘は“悪”と闘ったと思うようにしてきた。つらかったろうと思えば、心が弱くなりますから。いろいろ乗り越えて、家庭では今も娘は家族の中にいるように話しています」
2人の女児が連れ去られた現場。近くに住む主婦(59)は当時、地域の人と一緒に2人を捜した。「1人でも許せないのに、2人もの命を奪って死刑になるのは当然。早く執行するべきだと思っていた」と強い口調で話した。「2人とも可愛らしい子。1人はよくうちに遊びに来ていて人懐こい子だった。あのまま生きて育っていたらと思うと、何とも言えない」とやるせなさそうに話した。【井上元宏】
〔筑豊版〕
毎日新聞 2008年10月29日 地方版