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発信箱:「取り出し」よりも=磯崎由美

 静岡県で30年間学習塾を経営するYさんは最近、保護者から立て続けに同じ相談を受けた。学校の担任教諭に突然「お子さんを病院で診てもらうように」と言われ、動揺したという。

 07年度から全国の学校で特別支援教育が完全実施された。注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などの軽度発達障害も含め、障害のある子を手厚くサポートする制度だ。診断を求められた子たちは、学校で特別支援学級へ移したほうが良いとみられていた。

 でも塾で教えてきたYさんは「普通学級で学ぶのが難しい子たちとは思えないのに」と首をかしげる。指示に従えなかったり、人の話に集中できない子は塾でも増えたが「子どもの心について学び、授業の進め方を変えてから、特に問題がなくなったのです」。一度に多くを指示せず、忙しくても生徒の訴えを聞く。そんな工夫が実った。

 学校で困っている子たちをサポートしてきた埼玉県所沢市教委の阿部利彦さん(40)は、普段の教室での「さりげない工夫」を提唱する。教科書の行に定規を置くと、読み飛ばしを防げる。板書はポイントを分かりやすく整理する。地味だが小さい工夫を重ねることで、結果的にはみんなが分かりやすい授業になる。「診断名はあくまでその子を理解するための一つのヒント。特別支援学級に移ってうまくいく例もあるが、<特別な支援>が<特別>でなくなるのが理想でしょう」

 大事なのは一人ひとりの子が尊重され、楽しく育っていけることだ。教育界では児童・生徒を特別支援学級に移すことを「取り出し」と呼ぶが、もっといい言葉はないのだろうか。(生活報道センター)

毎日新聞 2008年10月29日 0時02分

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