以前クックパッドの商業登記簿謄本全部履歴事項をとって「この会社、株式公開意識してるな！」ってことを感じました。クックパッドオフィスや開発者ブログもＩＲ戦略の一環なのでしょうかね？？
株式公開を意識していると感じた理由は主に3点あります。
1.今年の3月28日に行われた増資とバリュエーション
2.株主名簿管理人及び会計監査人がすでに決定している点
3.ストックオプション（新株予約権）が税制適格要件を満たしている点
1.今年の3月28日に行われた増資とバリュエーション
以下は商業登記簿謄本に記載されている事項です。
・発行済株式総数
11,420株→11,520株（平成20年3月28日変更）
・資本金額
3,905万円→6,305万円（平成20年3月28日変更）
御覧の通り、今年の3月28日に募集株式の発行（平たく言えば増資）を行っています。
ただ、このあたりのプレスがＷＥＢに上がってきていないので詳しいことはよく分かりません。余談ですがクックパッドは財務系の資料や情報が全くと言っていいほど上がっていません。僕の方で確認できたのは「資本金」と「クックパッドのＰＶ，ＵＵ,広告単価」位で年間の売上等に関するものはブログ記事すら上がってきませんでした。もし詳細が分かりそうな記事があれば教えていただきたいです。
ここでひとつ言えそうなのは、割当先がパブリックカンパニーではなく個人あるいはプライベートカンパニーである可能性が高いということです。理由は明快で、仮にパブリックカンパニーであれば、クックパッド側もアライアンス先もプレスを打たない（営利上の）動機がないからです。
故に、割当先は事業法人とのアライアンス目的ではなく経営者間での資本政策上の新株発行であると考えるのが妥当ではないでしょうか。そうなると株主割当では、株式を持っていない役員に割当ができないので増資の形態は第三者割当だと考えられます。
株価ですが100株の新株発行に対して払込金額が2400万円。割り算で1株の価格が24万円となります。ここで払込金額の1/2を資本準備金に組み入れる可能性を考慮に入れると、1株当たりの株価は48万円となります。
なお、クックパッド設立（株式会社組織変更）時の1株当たりの株価は約３万５０００円です。これも資準金1/2組入を考慮に入れると7万円です。
つまり、今回の増資で株価が約７倍になったことになります。
ミドル・レイトステージのベンチャーファイナンスにおいてこのバリュエーションの跳ね方はある程度納得のいく数字です（今まで勉強してきた経験則的に）。バリュエーション（時価総額）は57億円になります。
ちょっと高いように見えますが元ファンドマネージャーのシリコンバレー日記さん曰く
通常は増資は資本準備金をめいっぱい使うだろうし今のはてなの時価総額は10億弱とみて間違いない。
以上の事から、はてなとクックパッドの運営するＷＥＢサイトの広告売上を比較して、時価総額の妥当性を考えてみました。
はてなとクックパッドとの間で広告単価及びＰＶ、ＵＵを比較すれば、売上ベースで約３〜４倍程度の優位性がクックパッドに見られます。なお、ＰＶ、ＵＵは両社ともあまり変わらないのですが、スポットでの広告単価でクックパッドが優位性を誇っています。両者の維持費を同額ととらえると、利益ベースでも上記と同等の倍率で優位性が存在すると考えます。
詳細は下記URL参照（pdfです）。
広告メニュー 2008年10月-12月版(414k)
はてな広告空き枠（広告会社様向け）
クックパッドはＷＥＢサイト運営以外にも「出版事業」「マーケティング支援事業」等を行っているので、一概にＷＥＢサイトでの広告収益のみを検討するのは強引ですが、情報量不足でその他事業に関するデータは上がってきませんでした。いずれにせよ、クックパッドの広告事業部の価値は、はてなに比べると３〜４倍（少なくとも1倍以上）のバリュエーションになっていると考えられます。
2.株主名簿管理人及び会計監査人がすでに決定している点
以下は商業登記簿謄本に記載されている事項です。
・株主名簿管理人
中央三井信託銀行（平成19年8月1日設置）
・会計監査人
あずさ監査法人（平成19年8月9日就任）→あずさ監査法人（平成20年7月25日重任）
株式公開を目指すためには株主名簿管理人の設置と監査法人から基本2期間の会計・業務監査を受け、適正意見をもらう必要があります。平成19年8月当初はクックパッドも近々での上場を考えていたのでしょう。決算期は登記簿上から読み取るに4月か5月決算で、仮にＩＰＯを狙うとすれば平成21年度になるのではないでしょうか。金融危機でＩＰＯどころではなくなっていますが・・。
株主名簿管理人に関しても上場申請直前期までの設置が義務付けられています。
3.ストックオプション（新株予約権）が税制適格要件を満たしている点
以下は商業登記簿謄本に記載されている事項です（新株予約権の項目は長いので相当端折ります）。
・第1,2回新株予約権
380個（第1回平成19年12月31日）→369個（平成20年7月17日変更）
399個（第2回平成19年5月2日）→394個（平成20年5月31日変更）
・新株予約権1個当たりの行使価額
1株18万円（第1回）
1株48万円（第2回）
上記新株予約権は資金調達目的ではなく、ストックオプション目的で従業員を中心としたクックパッド内のインセンティブとして付与した可能性が高いです
新株予約権が若干減少していますが、おそらくこれは従業員の退職などにより失効した分だと考えられます。発行がここ１年で行われているのもやはり数年後の株式公開を見据えての資本政策なのでしょう。
第2回新株予約権における予約権１個当たりの行使価額ですが、なるほどやはり増資時の1株当たりの株価（推定金額）と一致するようです。
新株予約権の税制適格要件に関しては以前書いたエントリ等も参照してみてください。一通り目を通しましたが要件は満たしているようでした。
以上、長々と書きましたがまとめると・・・
クックパッドは増資後のバリュエーションからそれなりの収益力があるものと予想され（1.より）、株主名簿管理人、監査法人の登記情報から、昨年の8月頃より株式公開に向けた準備を開始し（2.より）、ストックオプション付与などにより虎視眈眈とＩＰＯの準備を水面下で行っている（3.より）ことが分かりました。
昨今の金融危機のただ中で、どういう舵取りをするのかも見ものだと思います。今後も注目です。
なお商業登記簿謄本の取り方はこちらを参照してください。
以上です。
疑問・質問・オブジェクションありましたらよろしくお願いします。
かなり日本語、ロジックとして荒いのでご指導、ご鞭撻よろしくお願いします。