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プロポスレ@Wiki 咲夜4

――ガタガタ。

 紅魔館の数少ない窓ガラスが、量と反して大きな音を立てている。
 嵐だった。それも、数年に一度というほどに大きな、風と雨の合奏である。

「ねぇ、○○」
「……はい」

 そんな紅魔館の中に存在する従業員たちの私室の一室にて、二人分の声が蝋燭の火を揺らしている。
 その度に二つの影が揺れ、まるで外から響いてくる乱暴な音楽に、身を躍らせているようだった。
 それが、二人の僅かな恐怖心を燻らせている。

「ちゃんと、そこに居るわね?」
「あぁ、ちゃんと――」

 少女の問いに答えた青年の声が、近くに響いた雷鳴に遮られる。
 その合間に僅かな悲鳴の音を聞いて、青年は微かな笑みと保護欲を心に滲ませていた。

「大丈夫ですか? 咲夜さん」
「だ、大丈夫……よ」

 強がりを隠しきれていない、普段とは違う咲夜を前に、青年は今度こそ微笑を顔に出してしまった。
 幸い、暗い部屋の中では気付かれなかったようである。
 青年は今、咲夜の私室にある椅子の上に座していた。
 全ては一瞬で、雷鳴と同時に青年は、この部屋に運び込まれていたのである。
 そして、青年は少女らしさの残る咲夜の姿を前に、部屋に残ることしか出来なかった。
 それは正に、惚れた弱みというものなのである。

「――っ!」

 刹那、狭くは無い部屋の中を、白光が塗りつぶしていた。
 泣きそうな咲夜の顔が、雷のそれに照らし出される。
 遅れて届く雷鳴と共に訪れた暗闇の中、青年は引きずられるようにベッドへと倒れこんだ。

「咲夜……さん?」
「手……繋いでて……お願い」

 普段の姿からは想像もつかない弱音を、咲夜は溢していた。
 力強い姿からは想像出来ない細い体躯、凛とした姿とは矛盾した泣き顔。
 そんな年相応の少女が、青年の目の前に存在していた。
 湧き出す粗野な衝動を、僅かな理性で必死に押さえ込む。
 咲夜の髪からは、甘い香りがした。

「いいんですか」
「……」
「俺、男ですよ……」


「――貴方なら、いいわ」


 その言葉が、留めていた理性を打ち砕いてしまった。
 獣の意思を持った腕が、白い肌をすべる。
 少女の身体は温かかった、誘うような甘い香りがした。
 そして何より、咲夜の身体は震えていた。
 肌を滑り、下着の感触を得た指先が、止まる。
 
「――あ」

 鈍い音を聞きながら、青年は腹部に重い衝撃を感じた。
 止まっていた指先が、痛みと共に咲夜のから離れていく。

「そこまでしろとは……言っていないわ」
「ご、ごめん……俺」

 脂汗と冷や汗が、同時に青年の背を濡らす。
 嫌われただろうかと、指先は僅かな震えを見せていた。

「でも、ちゃんと止めてくれたわね」

 暗闇の中、咲夜が微笑む気配を近くに感じた。
 思わず、青年は顔を上げる。その唇に、微かな感触を覚えた。

「これでお預け……信用してるからね」
「……は、い?」

 長い嵐の夜、熱のこもった青年は眠れそうも無かった。
 そして、紅魔館の最上階に閉じこもる吸血鬼の泣き声は、夜明けまで続いたという。


7スレ目>>952

───────────────────────────────────────────────────────────



「あ、○○」
長い廊下を歩いていると、何処からともなく声をかけられた
「?」
見回してみるが誰もいない
こんな長い廊下、隠れる場所など・・・?
「こっちよ」
この声は咲夜さんか?
しかしどこ・・・え?
「さ、咲夜さん!?そんなところで何を?」
窓の外側からぴょこっと頭だけが出ている
「何って割れた窓を直してたのよ・・・あんまり近づくと灰になるわよ」
「え・・・危ない危ない」
うっかり日の光を浴びそうになる、まだ自覚が足りない証拠だ
「よっ、と」
窓を乗り越えて廊下に着地
乗り越える時にスカートの中が見えtげふんげふん
「ねぇ○○・・・今夜時間あるかしら?」
「え、こ、今夜ですか?何か作業が入れば解りませんが、今のところ空いてます・・・何かあるんですか?」
「ちょっとした宴会よ、博麗神社で」
「ああ、噂に聞く宴会ですか・・・面白そうですね」
「でしょ?それじゃあ行けそうだったら日が暮れてから私の部屋に来てちょうだい」
「はい、解りました」
「それじゃあお互いにがんばりましょ」
用件が済んだのか、変な工具類を持って足早に廊下の角を曲がっていった
「・・・宴会かぁ・・・どんな人が来るのやら」
博麗の巫女さんは人間の時に見たことある
鬼がいるらしいけど・・・俺も鬼の端くれだから、友達になれるといいなぁ
紫様には会いたくないな、聞いた話レミリア様より怖いらしい
「おっと、仕事仕事」
俺は足元に置いた荷物を抱えなおした
速めに仕事を終わらせてしまうために、がんばろうではないか





後10分もすれば外に出れる程度の暗さになるだろう
レミリア様は行かないらしい
フラン様はいつもどおり外出禁止
そういえば・・・パチュリー様は?

まぁ大人数で集まるのは苦手そうだし、そもそも外に出るのは嫌いらしいからな

こんこん、乾いた木の音が響く
「咲夜さーん、きましたよー」
「○○?ちょっと待ってねー」

言われた通りちょっと待った

「ごめんなさい、待たせたわね」
「いえいえ、問題ないです・・・」
なんか違うと思い、じっくりと見てみた
スカートがちっと長い?リボンがちょっと派手?
手首になんかアクセサリーが・・・珍しいと言うか、女の子みたい、じゃなくて女の子だったな
「な、なに?」
「あ、いや、えっと・・・似合ってますよ」
「え?・・・ありがと」
何気ない一言で、ここまで上機嫌になってくれるのか
そう思えば、世のモテル男はこれを無意識でやってるんだなぁ、凄いな


「お、メイド長のお出ましだぜ」
「あら、遅かったじゃ無い」
白黒の不法侵入者と、紅白の巫女が出迎えてくれた、その後ろではわいわいがやがやと、いかにも宴会らしい騒ぎ声
「お?○○じゃ無いか、宴会は初めてか?」
「よう魔理沙、酒は飲めるが腹の方が減ってる」
「えっと・・・誰?」
なんと、巫女さんのほうは俺をご存じなかったらしい
館で何度か遭遇してると思うんだが、まぁ扱い的には雑魚の束ね役の雑魚て感じだし
「紅魔館で執事をしている○○です、以後よろしく」
「博麗霊夢よ、ここの巫女をしてるわ・・・よろしく「れーいーむー熱燗マダー」
「・・・まぁゆっくりしていってね」
「さて・・・まあ飲むでも喰うでも早く行かなきゃな、なくなっちまうぜ」
「そうね・・・行きましょ○○」
「は、はい!」
手を引かれて皆の輪に入った
いつの間にか握られていた手に、少しどきりと、した


この鬼・・・いつになったら潰れるんだ?
最初は気さくに話しかけてきた伊吹さん(年齢不詳)
酒蔵が潰れるぐらいの量を飲んだのではないか?それに酒が入るにしたがって饒舌に・・・五月蝿くなって来る
出来れば酔いつぶれてくれるとありがたいのに・・・全然だ
チクショウ!八岐大蛇だって酔いつぶれたのに!!
「どうしたの○○く~ん全然飲んでないじゃんYO!」
「大丈夫ですよ!伊吹さん!どうぞどうぞ!」
「あ、どもども~・・・んぐんぐ」
ちょ、ざるってレベルじゃねぇぞ!?
このまま頑張るっきゃないなぁなんて思っていたら、嬉しい助け舟が来てくれた
「ちょっと○○を返してもらうわよ?」
「あー咲夜ずるーい」

ずるずると引き摺られて、端の方に腰を下ろした
「咲夜さん、助かりました」
「ふふ、お疲れ様」
あれ?なんか雰囲気が・・・?
「咲夜さん?なんか酔ってません??」
「酔ってる?私が?・・・大丈夫よ、ふふふ」
大丈夫に見えないです、うふふって笑ってます、何が楽しいんですか?
ニコニコしてますよ?上機嫌ですね
「ねぇ○○」
「な、なんですか?」
ちょ、近い近い、顔が近いですって
よくみたら目の焦点が合ってないじゃ無いですか?大丈夫ですか?
「ちゅー」
「え?ん、ぐ」
何が起こったか解らなかった
だって完全に油断していたから、だってあのメイド長だぜ?酔ってるからと言えこんな破廉恥な、その・・・キスを
「んちゅ、んんっ」
官能小説で言う所の淫らな水音がしております
もうなんかドロドロで、べたべたで・・・
「ぷぁっ」
「ぷはっ・・・ふぅ」
「えへへ、○ー○ー♪」
「おわっ」
咲夜さんは俺に体をあずける様なかたちで抱きついてきた
「さ、咲夜さ・・・ん・・・ね、寝ちゃった?」
抱きつかれたまま固まる俺、抱きついたまま寝てしまった咲夜さん
そして・・・周りからの痛い程の視線
「・・・」
「大胆ねぇ」
「写真に収め済みです♪」
「言っとくけどここ神社よ」
色々と終わった、俺の命とか人生とか
でもちょっと儲けもん?だって、腕の中の感触と、さっきのキスだけで、お腹いっぱいだぜ、だぜ
今のうちにと、腕の中で眠る咲夜さんを抱きしめておいた


10スレ目>>731

───────────────────────────────────────────────────────────


「美鈴、○○を見かけなかったかしら?」
「○○さんですか? 先程までこちらにいましたけど……」
「そう……」

 入れ違いになってしまったようだ、と咲夜は溜息をつく。
 ○○は新しく紅魔館に執事として雇われた人間だ。
 外の世界から迷い込み、訳も分からず右往左往していたところを見かねた咲夜が連れてきた。
 ――それは咲夜自身が外の世界から来たという、郷愁と同情からの行動だったのだが。
 兎にも角にも○○はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットに気に入られ、ここで働いていた。

「○○さんに何か御用だったんですか?」
「あ……ううん、何でもないのよ」

 美鈴の質問に、咲夜は慌てて首を振った。
 美鈴は上下関係こそあれど妖精だらけのこの館の中で唯一、咲夜の友人と呼べる存在だった。
 だが、その友人にも言えないことはある。

 ――ただ、○○の顔が見たい、それだけだなんて。

「ど、どうしました咲夜さん? 顔が赤いですよ、風邪ですか?」
「わ、私は大丈夫よ! それじゃ、私は仕事があるから!」

 美鈴の怪訝そうな視線から逃れるように、咲夜はそそくさとその場を離れた。





「うーん……」

 ○○は自室で悩んでいた。
 机に座る彼の目の前に置いてあるのは、掌サイズの小さな箱。
 中に入っているのは彼の給料の三か月分――銀色に輝くそれなりに高価な指輪だ。

「はぁ……」

 ○○は深い溜息をつき、自分の勇気の無さに自己嫌悪する。
 彼には好きな人がいた。この紅魔館で、本気でこの人のためなら命を賭けられると思える人と出会った。
 もはや外の世界に未練はない。彼女のいない世界になんて興味はない。
 だが、付き合ってもいないのに、いきなり指輪だなんて早急すぎただろうか。
 そもそも、相手が受け取ってくれるかも分からない。
 嫌われてはいないと思う。
 思い違いでなければ――好かれているとも、思う。
 ○○が告白すれば、彼女はきっと喜んでくれるだろう。

「でもなぁ……」

 だが、もし断られたら……
 その想像が頭をよぎり、どうにも足が躊躇してしまう。
 自分の臆病さにはほとほと呆れるが、こればかりは性分なのだからしょうがない。
 ○○がもう一度溜息をつきそうになったとき、

「○○、いるの?」

 ノックの音と共に、彼の上司であるメイド長の声が外から響いた。
 ○○は突然の出来事に慌てふためき、「どうぞ!」と思わず返事をしてしまう。
 やっぱり待って、と○○が口を開く前に、ドアが開かれ見慣れたメイド服姿の咲夜が姿を現した。

「さ、咲夜さん、何か御用ですか?」
「そろそろ休憩時間は終わりよ。準備をしなさい」
「あ、はい」

 ○○はいそいそと立ち上がる。
 その時、机の上の箱に服の裾が当たり、床に落下してしまった。

「あ!」

 気付いたときにはもう遅い。
 ○○はすぐにそれを拾い上げるが、咲夜は目ざとく○○が落とした箱に興味を持ったようだった。

「○○、それは何?」
「な、なんでもありません!」

 ○○は慌てて箱を引き出しの中に仕舞う。
 その当然の行動に、何故か咲夜は大きな衝撃を受けた。

 自分に、隠し事をした――

 心の内より湧き上がる言い知れない怒りを覚えて、咲夜は躊躇も遠慮も無く自分の能力を発動させた。
 時が止まる。
 空間が静止する。
 色彩を失った灰色の世界で、唯一動くことを許されるのは支配者である咲夜のみ。

「一体、何を隠したのかしら……」

 咲夜は机に近寄ると引き出しを開け、箱を取り出す。
 時間の停止した○○は止められない。
 それを知覚することも出来ない。

「……あ」

 蓋を開け、咲夜ははっと目を見開いた。
 視界に映ったのは、銀色に輝く円環状の光沢。
 その小さな金属は、このように厳重に仕舞われている場合、ただの装飾品として使われるわけではない。
 無論、その意味は――求愛。
 咲夜の顔が一瞬にして真っ赤に染まった。
 まさか、○○は。

「――っ!」

 咲夜は両手で紅潮した自分の顔を押さえ、○○の顔を見た。
 細くて頼りなさげだが、とても優しさの溢れる、咲夜の好きな顔。

「○○……」

 うっとりと、彼の名を呟く。
 幸福感で満たされ○○にしだれかかった咲夜は、だがすぐにはっとして身を離した。
 激しい勢いで罪悪感が胸のうちに膨らみ、後悔が彼女を襲う。
 ○○は、これを用意してくれていた。
 おそらく、私を吃驚させるために。
 だが、私は無遠慮にも、その秘密を知ってしまったのだ。

「ごめんなさい、○○……」

 箱の蓋を閉めて机に戻し、咲夜は時を止めた位置に戻る。
 ○○はまだ、箱の中身を自分に見られたことを知らない。
 なら、せめて――○○だけには、真実を知らない状態で、私に告白してほしい。

「なんという我侭な女――」

 咲夜は自嘲的な笑みを浮かべる。
 何故、あの時私はあんなにも隠し事をされたことに腹を立てたのだろう。
 答えは――明白だ。
 私はそれほどまでに、彼のことを愛しているのだ。
 幻想郷に来る前も後も、このような感情を持ったことはなかった。
 こんなにも熱く、止め処なく、どうしようもない心の昂ぶり……

 咲夜は今、本当に、恋をしていた。

 使っていた能力を止め、時計の針を揺り動かす。
 世界に色彩が戻り、静止していた時間が戻り始めた。

「さ、さぁ、行きましょう、咲夜さん!」

 ○○は屈みこんでいた姿勢を戻して振り向くと、どもりながら咲夜に告げる。
 特殊な能力を持たない、純然たる一般人である○○には、先程の出来事など分かりようはずもない。
 咲夜が時を止めて箱の中身を盗み見たという考えにも至らず、隠し通せたという満足感の困った笑顔を咲夜に向けた。

「ええ、行きましょう」

 その微笑を受け、咲夜は頷いた。
 小さな罪悪感と、それ以上の幸福感に包まれながら。





 数日後、咲夜は廊下の清掃をしながら溜息をついていた。

「私としたことが、失態だわ……」

 今日は美鈴の誕生日だった。
 思い出したのは五分前、当然プレゼントなど用意しているはずもなく、簡単に作れるクッキーなどで代用するしかない。
 金や時間をかけているものほど価値のあるプレゼントとは言わないが、やはり心が篭っていないプレゼントは良心の呵責を呼ぶ。
 昨年までは、絶対に忘れることなんて無かったのに。

「ごめんなさい、美鈴……」

 原因は分かっている。
 ○○だ。
 一日中彼のことを想っていて、つい大事な日程を忘れてしまっていたのだ。
 ……長年交流してきた友人を差し置いて、つい最近やってきたばかりの男にうつつを抜かすとは。
 自分のことながら、情けない。
 同時に、純真な乙女のような感情に咲夜は自分で照れてしまう。
 指輪は未だ渡されていない。
 いつ何時でも渡してくれれば、自分は即OKするというのに。

「小心者……」

 呟いて、くすりと笑う。
 また○○のことを考えてしまっていた。
 とにかくここの清掃を終わらせて、クッキーを作ってしまおう。
 ○○のことは大事だが、美鈴のことも友人として大切に想っているのだ。

 咲夜は気合を入れなおすと、清掃の続きに取り掛かった。





 やがて仕事を終えた咲夜はクッキーを完成させ、袋に詰めてリボンで飾り付けをする。
 急ごしらえだが、それなりのものが出来上がった。
 美鈴は喜んでくれるだろう。
 咲夜は廊下を渡り、美鈴が詰めている紅魔館の門へと向かう。

「いたいた。めいり……」

 友人の姿を発見した咲夜は彼女の名を呼びかけ、だが途中で口を噤んだ。
 美鈴の横に先客がいるのを発見したからだ。

「○○……」

 無意識に、咲夜は彼の名を呼ぶ。
 ○○は美鈴と親しげに話しこんでいた。
 多分、彼も美鈴に誕生日プレゼントを渡しに来たのだろう。
 咲夜はそう結論付ける。

「……」

 だが、何故か胸の内がもやもやする。
 笑い合う、○○と美鈴。
 二人の姿を見ていると、何故だかそわそわしてしまい、落ち着かなくなる。

 ――○○が、私以外の女と、仲良くしている。

 馬鹿な、と咲夜は首を振って思いついた考えを否定する。
 私はそんなに狭量な女だったのか。
 何故美鈴相手に嫉妬しなくてはならないのか。
 私と彼は共に想い合っている。
 だって、彼は私のために指輪を用意してくれた。
 あれこそが、私と彼を結ぶ愛の架け橋。
 思い煩う必要など、何処にも無い――





「あの、さ。美鈴」
「はい?」

 そんな咲夜の胸中など知らず、○○は照れたように俯きながら、美鈴の名を呼んだ。
 呼ばれた美鈴は首を傾げて、○○の言葉の続きを待つ。

「君に、渡したいものがあるんだ」
「私にですか?」
「う、うん」

 ○○はポケットをまさぐり、中から小さな袋を取り出した。

「誕生日おめでとう、美鈴」
「わ、ありがとうございます。これ、何ですか?」
「お香だよ。身体をリラックスさせる効果がある。門番の仕事ででずっと立ちっぱなしだったり、戦闘で疲労することもあるだろうから」

 ○○から袋を受け取り、美鈴は頬を綻ばせた。
 心なしか頬が赤い。
 丁寧に感謝の言葉を述べると、○○は顔を伏せたまま、まだあるんだ、と小さな声で呟いた。

「え、まだあるんですか?」
「うん。どっちかっていうと、こっちが本命っていうか、その……」

 言い辛そうにもごもご口ごもりながら、○○は別のポケットに手を伸ばした。
 だが手を突っ込んだところで動きが止まる。
 僅かな逡巡。
 心臓の鼓動が鳴り響いているのが自分でも分かる。
 嫌だ。
 やめたい。
 もし駄目だったら。
 でも。
 混沌とした心の渦の中で、純粋な想いだけが浮かび上がる。
 ○○は意を決したようにぐっと下唇を噛むと、勢いよく『それ』を取り出した。





「え……?」

 咲夜は己が目を疑った。
 目の前で起こった光景を、信じることが出来なかった。
 ○○がポケットから取り出したもの。
 それは、掌サイズの小さな箱。
 中に収められているのは勿論、彼女自身がその目で確認した――

「嘘よ――」

 とさり、とクッキーの袋が地面に落下した。
 だが、音は小さく、誰もそれを気に留めない。
 咲夜の脳内から落とした事実が――否、美鈴の誕生日のことさえ、完全に思考から削除されていた。

「だって、あれは――」

 彼が私のために用意してくれた――
 私と彼を繋ぐ――
 愛の――

「――あ」



 ――誰が?




 ――それが彼女へのプレゼントだと、誰が言った?



「――あ、ああ」

 咲夜はがくがくと震える。
 誰も言っていない。
 何も言っていない。
 ならば、それはただの虚像。
 彼女一人の思い込み。
 ○○の愛は、咲夜に向けられたものではなく。

「美鈴、これを受け取ってほしい!」
「こ、これって……」

 美鈴の顔が真っ赤になった。
 躊躇いがちに箱を開き、予想していた中身を目にして、彼女が浮かべた表情。
 驚きと――幸福。



 かちり、と何かが嵌った音がする。



「付き合ってもいないのに、いきなりこんなことを言うのは飛躍しすぎだとは思うけど――」

 駄目だ。
 言っては駄目だ。
 その言葉の続きを言ってはいけない。



 かち、かち、と何かが動く音がする。



「美鈴、僕と――」

 ああ、言ってしまう。
 行ってしまう。
 ○○が遠いところへ。
 私の手の届かないところへ。



 かち、かち、かち。



 許せない。
 こんなものは、嘘だ。
 私はこんなにも○○を愛しているのに。
 ○○が私を愛していないなんて、嘘だ。



 かち、かち、かち、かち、かち、かちかちかちかちかちかちかちかち。



 目の前が真っ赤に染まる。
 耳に響くのは雑音ばかり。
 何もいらない。
 メイドの仕事も、友人の美鈴も、主君であるレミリアでさえ。
 全部いらない。
 ただ、○○が傍にいるだけで。
 それだけで、いい。



 かちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかちかち。




















 かち。




















 そして――時計の針は止まる。
 だが、それは誰も知覚出来ない領域のこと。
 すぐに針は動き出し、人は針が止まったことに気付かない。
 だけど、異変は残る。

「……え」

 美鈴が気付いたときには。
 ○○の姿は、目の前から消えていた。
 残されていたのは、掌に残るお香の袋と。
 少し離れた場所に置き去りにされた、クッキーの袋だけだった。





















「私を見なさい、○○」
「……」
「見なさい」
「その命令は、聞けません」

 そっぽを向いたまま、○○は答えた。
 ここは山奥にある、かつて使用され、今は誰にも使われていない廃屋。
 ○○は気付いたときには、その場所へと連れ込まれていた。
 犯人は――己の上司であるメイド長、十六夜咲夜。
 何故こんなことをしたのか、彼は普段の温厚さを捨て去って怒りと共に訊ねた。
 一世一代の愛の告白を遮られたのだ。激昂しないはずがない。
 だが、咲夜の言い訳は、○○の予想を完全に裏切ったものだった。

「愛しているの、○○」

 彼女はそう言って、彼を求めた。
 だが、○○は拒否した。
 ○○が愛しているのは咲夜ではない。
 咲夜のことは助けてもらった恩義もあるし、慕ってもいた。
 だが、それは恋愛感情ではない。
 彼が愛しているのは、美鈴なのだ。

「……○○」

 咲夜は現在、一糸纏わぬ姿で○○の前に立っていた。
 暖炉の火に照らされた彼女の白い肌は、一種の神々しささえ喚起させる。
 男なら誰しもが唾を飲み込むこの状況で、だが○○は決して咲夜のほうを振り向こうとはしなかった。

「なんでよ」

 咲夜は悲しそうな声色で呟く。

「貴方の好きにしていいのよ。私の唇も、肌も、胸も、秘部でさえ、○○の思うが侭に蹂躙していいの」
「そんなことはしません」
「何故? ○○は男でしょう。女の裸を見て、反応しない男はいないわ」
「もう止めてください」

 ○○は首を振った。

「これ以上は咲夜さんが傷付くだけです。俺を紅魔館を戻してください、それでこの件は忘れますから」
「……なんで」

 咲夜の頬を涙が伝う。
 心の中のドロドロが、激しく彼女の内側から食い破るように吠え立てる。

「なんで私じゃないの。なんで美鈴なの。あんなの、ただ胸が大きいだけじゃない。がさつで、頼りなくて、私より弱いわ。私のほうがいいじゃない」

 咲夜はもはや、自分が何を言っているのか、その意味を理解していないのだろう。
 そうでなければ――友人を汚す言葉を、容易く口にすることなど、出来ようはずもない。
 ○○は怒りよりも、哀れみのほうが自分の心を満たしていることに気付いた。

「咲夜さんは疲れているんです。紅魔館に戻って休みましょう。そうすれば」
「疲れているのは○○よ。そうじゃなきゃ、私のことを愛していないなんて、そんなはずないもの――」

 聞く耳を持たないとはこのことか。
 ○○は溜息をつき、決心をすると顔を上げた。
 裸体の咲夜を気にも留めず、真っ直ぐな視線で咲夜の目だけを射抜く。

「咲夜さん。ここまで一途に想ってくれている、貴方の心が俺は嬉しい。でも、俺は貴方の心に答えられません。だって、俺は――」

 美鈴のことを、愛しているから。
 そう口にしようとした瞬間、○○の口は咲夜の唇によって塞がれていた。
 時を止め、その先の決定的な言葉を封じたのだろう。
 咲夜が○○の口内に舌を差し込もうとした瞬間、○○は咲夜を突き飛ばしていた。

「いい加減にしてください!」

 叫び。○○の目元には、うっすらと涙が滲んでいる。
 ――これが、彼のファーストキスだったのだ。
 それを捧げるのは、彼の愛する人のはずだったのに。

 突き飛ばされた咲夜はゆくりと立ち上がると、そっと自分の唇に指先をかけた。
 そして頬を紅潮さえ――ぞっとするような笑みを浮かべる。

「○○とキス、しちゃったぁ」

 ○○はその言葉を聞いた瞬間、ぞくりと背筋に寒気が走るのを感じた。
 もはや、彼の目の前にいるのは、自分が知っている咲夜ではない。
 そう確信する。
 己の職務に責任を持つ、厳しくも優しいメイド長はもう何処にもいない。
 目の前にいるのは――ただ愛に狂った、異常者だけだ。

「時間はたっぷりあるわ」

 咲夜はにっこりと――誰かが見たら一生トラウマになるような――笑みを浮かべ、立ち上がった。
 ○○を見下ろし、純愛と色欲の混ざった無垢とも淫蕩とも付かぬ顔で、

「私のことを愛してくれるまで、絶対に離さない――」

 女郎蜘蛛は、獲物を捕らえる糸を吐く。
 決して、逃がさぬように。




















 ――そして、十五年が経過した。




















 こんこんと、扉をノックする音。
 ベッドに眠る○○は珍しい来客に驚きながら、どうぞ、と声をかけた。
 ややあって、警戒するかのように少しずつ扉が開く。
 現れたのは、ぼろぼろの防寒具を身に纏った若い男だった。

「貴方、誰かしら?」

 ○○の傍で椅子に腰掛けていた咲夜は、男を無遠慮に睨めつけながら問いかける。
 十五年経って外見は大人びていても老いをこれっぽっちも感じさせないところは、流石咲夜だなぁ、と○○は関心するばかりだ。

「この近くの村に住む者です。冬眠寸前の獣を追いかけていたのですが、この吹雪で山を下ることが出来なくなってしまいました。一晩の温情に預かりたいのですが」
「勿論、構いませんよ。なぁ、咲夜」
「ええ、そうね」

 ○○の言葉に、咲夜ははにかんだ笑顔で答えた。
 二人の姿は、誰がどう見ても夫婦のそれにしか見えないだろう。
 食事を作るため、少し離れた場所に貯蔵してある食料を取りに咲夜が家から出たのを見計らって、男は○○の傍に近寄った。

「貴方は」
「○○さんがいなくなってから新たに紅魔館の執事をやらせていただいている●●というものです」
「ああ、やっぱり」

 ○○は疲れたような微笑を浮かべた。
 何かを諦観したような、そんな微笑だった。

「お嬢様は、今でも○○さんの帰還を待ち望んでいます。さぁ、早く脱出しましょう」
「無理ですよ」
「何故?」
「布団を捲ってみてください」

 ●●は訝しみながらも、言われた通りに布団を捲った。
 途端、ひっ、と小さく悲鳴を上げる。

「こ、これは……」

 そこには、あるべきものが無かった。
 ○○の胴体。
 そこから伸びているはずの四肢が、一つたりとて存在しない。

「逃げられないように切断されてしまいまして。咲夜は俺の全てを世話出来ると、喜んでましたけどね」
「酷い……! なんという所業を……」
「あまり責めないでやってほしい。咲夜は……そう。少し愛が深すぎただけなんです」

 ○○は首を振り、驚愕の表情を浮かべた●●を見上げた。

「俺を背負って脱出は出来ないでしょう。仮に出来たとしても咲夜は時間を操ります。逃げられる道理はない」
「ですが……」
「代わりに、伝言をお願いします」

 ●●が少し逡巡してから頷くのを確認して、○○は十五年前に不本意な形で別れた知り合いの顔を思い浮かべた。

「お嬢様には咲夜共々勝手に辞めてしまって申し訳ないとお伝えください。妹様にはもう遊べなくてごめん、パチュリー様には貸した外界の本は全て差し上げると。美鈴には――」

 ○○はそこで一旦言葉を切った。
 胸中に、様々な感情が浮かんでは消える。

 彼女は今、どうしているだろうか。
 相変わらず門番を続けているのだろうか。
 恋人でも出来たのだろうか。
 もし、あのとき指輪を渡していたら……

 ○○はふっと小さく笑った。
 視線を何処かから拾ってきたらしいボロボロの机の上に置かれた箱に移し、

「あの指輪を渡して……さようなら、と。そう伝えてください」
「……それで、いいんですか?」
「ええ」

 ○○は生気が足りないものの、後悔や未練とは縁遠い笑顔で頷いた。

「初めは恨みもしましたけど……十五年連れ添った仲です。彼女の傍にいてやりたい」
「はい……」
「さぁ、もう行ったほうがいい。咲夜が気付く前に」

 ○○に追い立てられるように、●●は指輪の収まった箱をしっかり懐に仕舞いこみ、扉に手をかけた、
 だがそこで動きを止め、振り向く。

「……お嬢様から、○○さんは少しお人好しだけど、立派な執事だったと聞かされていました」
「それは……光栄ですね」
「俺も、そう思います……それでは」

 ●●は深く頭を下げ、そして二度と振り返らずに吹雪の中を駆け出していった。
 室内に、暖炉の薪が爆ぜる音だけが残る。
 ○○は溜息をつくと、

「咲夜。聞いていたんだろう」
「ええ」

 咲夜は○○のすぐ隣に出現し、ベッドに腰を下ろした。

「良かったわ。自分を連れていけとか言っていたら、あの男を殺さなければならなかった」
「そう思ったから言わなかったんじゃないか」

 ○○は冗談めかした口調で言い、咲夜もその言葉を受けてくすりと笑った。
 彼が逃げないと核心していたからこそ、咲夜は●●を追わなかったのだ。

「こんなことなら、あの指輪を捨てておけば良かったわ」
「捨てたら僕が本気で咲夜のこと嫌いになるって、分かっていたからだろう?」
「まぁ、ね。サイズが合わないから付けることも出来なかったし」

 拳法なんてやっているから指が太くなるのよ、などとぶつぶつ言う咲夜に苦笑しながら、○○は過ぎ去った遠い日々に想いを馳せた。
 自分はこれからも、咲夜と共に二人きりで日々を過ごすのだろう。
 それを不幸だと嘆いたのも、昔の話だ。
 ○○は今でも咲夜のことを愛していないし、咲夜もそれを分かっていてなお○○のことを愛し続けている。
 この捻れた関係はいつまで続くのだろう。
 ○○は自分ではない誰かのことのように、そのようなことを考えるのだった。




















 その後の二人がどうなったかを知る者は少ない。
 ただ、後に発行された幻想郷縁起によると、二人の愛は最期まで交差することは無かったが、それなりに幸せな日々を過ごしたと書かれている。


>>うpろだ588


───────────────────────────────────────────────────────────

今思えば、私は嵌められたのだと思う。



「咲夜さん、これを」

それは普段着ているようなメイド服でもなく、柔らかくさらりとした手触りの光沢のある黒のドレスだった。
普通の女の子なら一度は憧れる代物だ。
身体のラインを強調するような黒のそれは太腿から深いスリットが入っていた上に、胸も必要以上に強調されるようなデザインになっていて、
それを着るには大分勇気を必要としたけれど、レミリアが着ろと言うのだから逆らうことも出来はしない。
美鈴に手伝ってもらいながら何とか四苦八苦してドレスに腕を通した。

「咲夜さん、凄く綺麗です」

そう言って、美鈴は軽くメイクを落としていく。咲夜さんの肌は綺麗ですね、だからあんまり弄らなくてもいいかな。
アイラインを引いて、口紅を差す。

いいですよと言われて目を開ければ目の前の姿見に見知らぬ女が映っていた。
揺るぎない銀の髪が辛うじて自分であることを知らしめる。

「これ、履いてってレミリア様が・・・・」
「・・・・分かったわ」

ドレスと同じ黒のエナメルの靴を履く。
大きく背中の開いたドレスといい、華奢な造りと高い踵の靴といい、全てが心許なかった。

「咲夜さん、その・・・・私たちの事・・・・」
「美鈴、留守を頼んだわよ。・・・・・さあ咲夜、行きましょうか?」

現れたレミリアにはいと頷く。
美鈴はどこか悲しそうな顔をして、私が連れて行かれるのを見ていた。



行きましょうか、と言われたものの、何処へとは聞けなかった。
聞いていいような雰囲気ではまかり間違ってもなかった。
飛行しながら、流れる景色をぼんやりと見つめながら思う。果たして私は、何処に行くのであろうかと。

数分もかからずにレミリアは地上に降り立った。
それを見てこちらもゆっくりと下降する。

先に降り立ったレミリアが促すようにその手を伸ばしてくる。
少し躊躇った後に指先を重ねて動きにくい靴と格闘しながらのろのろと歩いた。
きっと靴擦れが酷いことであろう。

目の前には数回訪れたことのある屋敷があった。
重厚な扉を開いて、人のいない廊下を歩く。
かつかつと信じられないほど大きく足音が響く。柄にもなく緊張しているのかもしれない。
どうしてこんな格好をしているのかは知らないけれど、これから会いに行く人物には心当たりがあった。
こんな屋敷で用のある人物といえば、ただ一人。

「待たせたわね」

思っていた通りの場所でドアを開けたレミリアに、ある種の落胆と絶望が滲む。


「・・・・・待つ時間っていうのは、どうしてこうも長いんだろうね。レミリア、咲夜」
「・・・・・・」


他の給仕も執事も、誰もいない部屋で彼は一人静かに佇んでいた。
明るい茶色の目と視線が合う、と思った瞬間にはすでに彼は目の前にいた。
いつの間にかレミリアに預けていた手は彼に繋がれている。

「最後に会ったのはあの悪魔の妹君と一緒の時だよね、咲夜」
「・・・・っ、△△・・・・」
「○○、だよ。咲夜が呼びやすい呼び方で呼べばいいけど苗字は駄目」


今日から咲夜は俺のお嫁さんになるんだから。


確かな笑みと共に吐き出された言葉に驚愕した。
そんなことは、知らない。
何かの間違いではないのかとレミリアを見遣ったが、ただ静かに微笑み返されただけだ。
それだけで十分だった。彼の言葉が紛れもない真実だということを思い知るには。

目の前が真っ暗になって、力が抜ける。
みっともなく床の上に崩れ落ちるかと思ったけれどそんな無様な姿になる前に、○○に腰を取られた。
そのまま抱え上げられてソファの上に横たえられる。
ふわふわと沈み込む柔らかな感触が、まるで浮世離れしているのではないのかという錯覚を起こさせた。

理由なんて分からない。
けれどこの格好はその為だったのかと合点がいった。
勿論分かったからといって嬉しくも何ともない。

「咲夜」
「レミリア・・・・様」

「こうなったのは私の責任よ。・・・・私が、彼に負けたから。恨む?」
「・・・・・・」

無言で首を振る。
嫌で嫌でたまらなかったがだからといってレミリアを恨むのはお門違いだ。
例え本当にレミリアの言うとおり彼女の行為の何かが原因だったとしても恨めるはずがなかった。

「・・・私は、いいんです」
「・・・私は貴女の幸せを心から願っているわ。貴女が嫌だと言うのならこの話は―――」
「レミリア」

静かな、威圧的な声だった。
ぞっと皮膚が粟立つ。
初めて出会ったとき、この男はこんな声はしていなかった。
震える拳をきつく握り締めて、真っ直ぐに見上げた。
薄らと笑う瞳と視線がかち合う。

それからレミリアを見遣った。・・・悲しそうな、顔をしていた。

「・・・いい、です。結婚でも、何でもします」
「咲夜・・・・」
「紅魔館の皆さんのことを、よろしくお願いします」

それだけしか言えなかった。
覚悟を決めても所詮はその程度ということだ、情けない。

温かなレミリアの手が頭に触れた。
そのまま小さな子供を宥めるように、くしゃりとひとつ髪を掻き混ぜられる。
たったそれだけのことで身を切られるような思いだった。
この温もりはもう二度と手に入れられないのかもしれない。

「○○」
「分かってるって、レミリア。ちゃんと幸せにするよ・・・咲夜」

のろのろと顔をもう一度○○に向ければ毒を持った笑みで返された。
幸せになんてなれるはずがない、美鈴もパチュリーもフランも小悪魔も敬愛する主君であるレミリアもいない世界に自分の望む幸せがあるとは到底思えなかった。

投げ出したままの左手を取って、その薬指に指輪を嵌められる。
細くて華奢でシンプルな指輪だ。
虹色の石が嵌っているがそれが何なのかは生憎と分からなかった。

「オパールだよ。綺麗だろう?似合うと思ったんだ」

そう言って指輪を嵌めた(彼のものになった)手をそっと握って、口付けられる。
そのまま強く指に歯を立てられた。
反射的に逃れようとしたら更に強く手を握られる。
おそらくは血が滲んだのだろう、赤く濡れたものが見えた。

「・・・・っ、あ」
「浮気防止に、もう一つ」

ぺろりと唇を舐めて、爽やかに笑う。
レミリアの表情は悲しげなまま凍りついたように動かない。
だから、それ以上彼女に負担はかけたくなくて、大丈夫ですと言えば無理矢理納得したような顔をしてそれでもしっかりと頷いてくれた。

「・・・・じゃあ、私はこれで」
「いつでも遊びに来ていいって、紅魔館のみんなに言ってあげて」
「お気遣い、結構よ」

それだけ言ってくるりとレミリアは後ろを向く。
その背中が全ての言葉を拒絶していて、だから何も言えなかった。
彼女の後姿がドアの向こうに消えて、その足音すら捕らえられなくなって、もう一度ソファに沈み込んだ。
靴はすでに○○によって脱がされていた。

思考が同じ所で停滞している、何もかも考えるのに疲れた。
張り詰めた神経が緩むこともなくそのままいつか切れてしまいそうだと思いながら、目を閉じる。
とにかく今は眠りたかった。
目が覚めたら全ては夢だったという都合の良い話はないだろうか。

瞼を閉じたらとうの昔に枯れたはずの涙が二粒、頬を流れ落ちた。







補足。


十六夜咲夜

元紅魔館のメイド長。
咲夜に目をつけた○○とレミリアの賭け戦闘でレミリアが負けてしまったため、○○の嫁になることを決定付けられる。
それ以降すこぶる腹黒な旦那に振り回される毎日を過ごすことに。
○○にあまりいい感情を抱いていない(レミリアを負かしたので)。



○○

レミリアより強い、最強?な○○。
性格はすこぶる黒い、とにかく黒い。腹の底まで真っ黒。
事実かどうかは分からないが全て計算づくの上で奸計用いて咲夜をゲットしたとかしなかったとかいう、そんな。
多分十中八九本当のこと。
意外にも結婚生活自体にはどちらかと言えば乗り気なようで、ことあるごとにあの手この手と咲夜を虐めては(困ってたり屈辱に打ち震えていたりする姿を見て)楽しんでいるらしい。
心の底から性悪ですね。

でも咲夜のことを本当に心から、



レミリア・スカーレット

親馬鹿、咲夜馬鹿。
○○との戦闘に負けて泣く泣く咲夜を嫁に出すことになってしまった。
彼女が嫁に行った日は一人で枕を濡らしていたとか何とか。


>>うpろだ589

───────────────────────────────────────────────────────────

俺がプロポーズしてから一月ちょっと
彼女が十六夜に別れを告げて一月弱
特に変わったわけでもなく、ただいつものように、毎日が過ぎて行っている
正直に言えば彼女が来てから店の方も繁盛してるし、人でも増えて楽になった
でもまだ何となく、その・・・嫁に来たという実感が湧かないのも事実だ
いまだ恋人のまま、同棲しているような感覚
いったい結婚とはなんなのだろうか?


「幻想郷に・・・紅魔館に来て、お嬢様のお世話をして、パチュリー様にお茶を入れたり図書館の掃除をしたり、メイドたちをまとめたり、サボってる美鈴を怒ったり」
彼女はまるで遠い遠い昔の事ように話す、瞳は悲しげに、口調は柔らかく
「霊夢や魔理沙が遊びに来て、たまにそれを撃退したり歓迎したり、異変の時も色々と大変だったわ・・・それでも凄く・・・楽しかった」
俺があまり知らない彼女のメイド生活、だか実に解り易く・・・光景が目に浮かぶようだ
俺の知らない彼女を、見て見たいなんてすこし、思った
「このまま年老いて死ぬのも悪くない、むしろ恵まれているなんて思ってた・・・でも」
俺とであった、俺に恋をしてくれた、そして俺も恋をした
「まさか自分が普通の人間みたいに・・・人を好きになって、体を重ねて、プロポーズまでされちゃって・・・幸せすぎて、夢なんじゃないかって、でも夢じゃなくて」
もし夢でも、俺は夢から現実まで出張って、君をさらいに行くよ
「紅魔館にいたときが一番幸せなんだと思ってた、いろんな人に大切にされて、幸せだった、危険もあったけど、充実してたし、満足してた」
「・・・じゃあ、何で君は俺との生活を選んだ?」
俺は、彼女も俺とおなじ事を言ってくれると信じて、一つの質問を、投げかけた
「それは・・・私はあなたを愛してるから、そして彼方が私を愛してくれるから――」
俺も、同じ気持ちだ
俺達は愛し合ってる、だけどまだ夫婦ではない、まだ俺達は彼氏彼女なのだ
何か区切りが必要なのだ、人によって色々だが、最も一般的なのは結婚式だろう、それと
「・・・古くは蛤の殻などを渡していたらしいが」
「?」
「まぁ一般的に・・・これが一番だと思ってな」
いつ渡そうか、ずっと出番を待っていた控え選手
温めていた身体、待ちわびていた気持ち

「え・・・指輪・・・」
「あんまりいいものじゃ無いが(推定月収8か月分)外から取り寄せてもらうのに金が掛かっちまってな・・・」
「綺麗・・・白金?」
「ああ、君には銀が似合うと思ったんだが・・・まぁいつまでも色あせない二人の愛情と言う意味も込めて・・・白金で」
ああ、俺はなに言ってるんだ、よくもまぁ恥ずかしい台詞をいえたものだ、素面なのに
「あ、ありがとう・・・やだ、嬉しすぎて」
涙が、ぽろぽろと零れ落ちた
俺もつられて泣きそうになるが、其処は男ですから、しっかりと胸で受け止めてやらんといかん
「咲夜、結婚式とやらををあげようか」
「え?・・・な、なんで?」
「区切りをつけよう、それと・・・お世話になってる連中に、幸せになる、って宣言しなきゃ・・・な」
お嬢様と妹様と引きこもりと小と中国とメイドsと霊夢と魔理沙とアリスとそれから、それから・・・
「そうね・・・うん、皆に自慢しなきゃね、私幸せですよ、ってね」
なんか違う気もするが、彼女はそれでいいのだろう、周りも、俺も・・・たぶん




陽気ぽかぽか、昼寝をするには丁度いい昼下がり
あの人がいなくなって、怒られる回数は減ったけど・・・ちょっと、いやだいぶ寂しい
「美鈴、頑張ってるかしら?」
「・・・・・さ、咲夜さん!?きょ、きょうはどおして!?」
「ふふふ、ちょっとね」
久しく聞いたのは、偉く上機嫌で、透き通るように綺麗な声だった


「お嬢様、いらっしゃいますか?」
久しく聞いた従者の声、幻聴かと思ったが間違いなく、其処に姿があった
「咲夜!?まさかもう・・・別居!!?」
「ち、違いますよ!そんなことは全然」
あの男に任せて、良かった、そう思わざるを得なかった
咲夜がこんなに幸せそうに・・・
少し、いや凄く悔しい
「今日はちょっとした、報告とお願いを」
「報告とお願い?」

「私達・・・結婚式を挙げる事にしました」


To be continued!

>>うpろだ591


───────────────────────────────────────────────────────────


理由は特に無かった。                                  


人を好きになることに理由は要らないという言葉は本当らしい。
彼女を目で追い始めたのは何時からだったろうか。

ここは紅魔館のとある一室。
丁寧に掃除をしながら俺はいつものように彼女のことを考える。
十六夜 咲夜、俺の心を捉えて放さない人。
最初はそれほど気になる人ではなかった。
周りのメンバーの印象が強すぎて、常識人に見えたのが彼女くらいだった所為なのだろうが。

話せば長くなる成り行き上、ここで仕事をすることになった俺の上司。
ただ、彼女はそうであるはずだったのに。
何時からか変わっていた。

彼女の性格、仕草、言葉。
そういった何気ないものが俺にとって妙に気になるものになっていた。

「さて、こんなものか」

部屋の隅から隅まで掃除し終えた俺は部屋に置いてあった椅子に腰掛ける。
その状態から椅子にもたれかかり、天井を見上げる。

「何やってんだろう、俺」

彼女を想い続け、数年が経った。
何時までこんな半端な状態を維持するつもりなのだろう。

何度も彼女にこの想いを伝えようと思った。
その度に俺の中にある理性が必ず警告するのだ。
断られればそのあとはどうなるのか、と。

咲夜さんと今までのように接することができなくなる。
それどころか、俺は告白する覚悟など持ち合わせていないのだ。

現状維持――その言葉がいやに俺の頭の中を駆け巡る。

どんなに悩んでも変わらない、もどかしい状態が続いてきた。
彼女を見ていると何時だって俺という存在が霞む気がした。
大した力も無い、ドジを踏む、融通が利かない、器量も普通。
それに比べて彼女は完璧と呼ぶに相応しい。
そんな俺が彼女と共に居たいと思うとはなんともおかしな話だ。

「は、自虐が過ぎるか」

そう弱気な自分を一蹴してみてもやはり皮肉の言葉が沸きあがってくる。

「ああ、畜生。どうしてこんなに愛おしいんだ。どうしてこの感情を伝えられないんだ。どうしていつも踏みとどまっちまうんだ」

自分でも気がつかないうちに言葉が勝手に紡がれる。
少しずつ声が大きくなっていく。
分かっているのに、抑えられなかった。


ガタ…と部屋のドアから音がした。
誰か居るのかと思ったころにはもう遅く、既にその誰かへと呼びかけていた。

「誰だ?」

言い終わった直後に気配を消しながら音を立てずに素早く動きドアを開ける。
そこに居たのは驚いた顔で俺を見つめる、先ほどまで俺が思いを馳せていた咲夜さんその人だった。

「咲夜さん?どうしてここに?」

いきなりドアが開いたことに対して咲夜さんは驚いているようだ。
それもそうか、時間を止めようとしている間にこうなれば。

「え、あ…その…そろそろ掃除が終わったかと思って様子を見に来たのだけれど…」

戸惑いながらも彼女はここに来た理由を告げる。
しかし、何故か妙に落ち着きが無い。
本来の彼女なら既に平静を取り戻しているはずなのに。

……嫌な予感がする。

俺はその嫌な予感を確かめるために彼女に一つ質問をした。

「あの、さっきの言葉……聞いていましたか?」

「い、いえ。聞いてないけど」

嘘だと直感した。

何故だか分からないが、俺と同じような感じがしたのだ。

「嘘ですね。そもそも、この部屋には防音加工が施されていないですし、あれくらいの声ならば聞こえてもおかしくは無いはずです」

「っ!」

咲夜さんの一瞬見せたその顔で俺は確信した。

「図星ですね」

彼女が慌てて取り繕ってももう遅かった。
それからしばらく言いようの無い、居心地の悪い静寂が辺りを包んだ。

「その・・・ごめんなさい」

「いえ、別に構いませんよ」

言葉が続かない。
さっきからバクバクと早鐘を打つ心臓が酷くうるさい。
彼女に聞かれていた恥ずかしさと、今後の彼女との関係はどうなるのだろうという不安が綯い交ぜになって、本当に落ち着かない。

「あの、私でよければ相談してくれないかしら」

なんとなくわかっていた。
彼女ならそう言うのでは、と。
その言葉を聞いた途端に彼女との距離が遠くなった気がした。

「そういうこと、私には経験が無いけど、私ができる範囲内なら協力してあげるから・・・」

そう言って微笑んだ彼女の表情はまさしく俺を連想させた。
本当に悲しそうで、本当に辛そうな、秘めこんで消してしまおうとする表情を見て、俺はただ、ここで何かを言わなければならない気がした。

「いえ、その必要はありませんよ」

自分の心を奮い立たせて言葉を紡がせる。

何を戸惑う、ここで言わなければ全てにおいて後悔する。
それで本当にいいのか。

「え・・?」

「聞かれていたのなら、もう踏みとどまる必要はありませんからね」

さあ、言おう。
秘め続けたこの想いを。
ただ、その為に今の俺はここにいる。

「咲夜さん、俺は貴女のことが好きです」

一度溢れたら、もう流れは止められない。
なんと思われようが構うものか。
今この瞬間だけはこの想いをぶつけたい。

「咲夜さんの声をもっと聞きたい、咲夜さんの笑顔をもっと見たい、咲夜さんの心に少しでも触れたい、
咲夜さんに少しでも近づきたい、咲夜さんを近くで感じたい、咲夜さんのことを知りたい、咲夜さんを愛したい。――――」

俺の言葉は止まるところを知らなかった。
最初は口をぽかんと開けて呆けた表情を浮かべていた彼女だが、次々と述べられる言葉を理解していく内に、その顔が徐々に赤く染まり、
遂には視線を泳がせて慌てふためき始めた。

「あ、う・・あ、あの・・その・・・」

もはや彼女は、完全に落ち着きを失っている。
その様はいつオーバーヒートしてもおかしくない程だ。
対して俺は、自分の心から次々と湧き上がる言葉をただただ口に出すことに必死なので、まったくといっていいほど彼女の様子を気にしていなかった。

「こんなことをいきなり、しかも勝手に言って迷惑なのは承知しています。けれど・・・駄目でしょうか」

「っ、そんなことない!」

ほぼ即答だった。

「私だって、あなたのことが・・!その・・す、好き・・」

段々と消え入りそうになる声。
しかし、最後の言葉ははっきりと聞こえた。

そう言われて俺は気がついた。
彼女も同じだったのだと。
そう分かると、なんだか顔が一気に熱くなってきた。
たぶん耳まで真っ赤なのだろう。

「えっと・・本当、ですか?」

「嘘でこんなこと、言わないわよ・・っ!」

ああ、これではっきり分かった。
そして、なんとなく顔が綻んでいるのが自分でも分かる。
再び沈黙が辺りを包んだが、今度はあの居心地の悪いものとは違う、どこかむずがゆいような…まあ、悪くない沈黙だった。

「えーっと、咲夜さん、ってあれ?!」

気づいた時には、彼女はもうそこにいなかった。
恐らく時間を止めて何処かに行ったのだろう。

「・・・まあ、いいか」

そう、まだ時間はたっぷりある。
ようやく進展したのだ。
もう恐れる必要は少なくとも無い。

さっそく、彼女を探しに行こう。
どんな顔をして会えばいいか分からないが、とにかく会いたい。
そう思った瞬間、彼女との距離が近づいたような気がした。
さあ、行くか。                                                              

11スレ目>>58

───────────────────────────────────────────────────────────
う~ん、今日はヒマだなー
黒白も紅白も来ないし、毎日こんなだといいなー
って咲夜さん!?いつからここに?
え?ヒマだなーの辺りですか?いや確かにヒマだっていいましたけどサボってたわけじゃ……
ちょ、咲夜さんナイフはやめてください!

~少女説得中~

はあはあはあはあ、た、助かった……
それにしても咲夜さん今日はやけに機嫌、悪いですね
さては○○さんと何かありました?
え?何で分かったかって?そりゃ分かりますよ
これでも私咲夜さんの何倍も生きてるんですからよ
恋をしたことだってありますし結婚だってしましたよ、子供は……できませんでしたけどね

…………そんなに珍獣を見たみたいに驚かないでくださいよ
まあ彼は人間でしたからもう死んじゃったんですけどね
悲しくなかったのかって?そりゃ当時は泣きましたよ、泣いて泣いて泣いて
それこそ泣かなかった日なんてないぐらいでした
でも、それでも私はあの人と結ばれたことを後悔はしていません
だから、咲夜さんも後悔はしないでくださいね
これは人生の先輩からのアドバイスとでも思ってください

○○さん、もう咲夜さん行っちゃいましたよ
私の話、聞いてましたよね?だったら私の言いたい事分かりますよね
咲夜さんにも言いましたけど後悔だけはしないで下さいね

ふぅ、二人とも世話が掛かるなぁ
でも、あの二人を見てると昔のわたしたちを思い出すなぁ……
あなた、私は今日も元気であなたを愛しています


美鈴は妖怪で長生きだから昔結婚しててもおかしくないんじゃないか?
って事で書いてみた美鈴しか喋ってないけどwwww

8スレ目 >>207

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「フラン!早く部屋に戻りなさい!!」
「やだっ!もうあんな暗いところは飽き飽きよ!!」
紅魔館の中を縦横無尽に走り回るスカーレット姉妹、どうやら妹様があの部屋から脱走なされたようだ
「○○!フランを止めなさい!」
「ええっ!?私が!!?無理です!無理です!!」
「ゴメンね○○」
俺の横を抜ける時に妹様は確かにそういった
すぱっ、っと綺麗に腕を切られてしまった
「ちぃっ!あのバカ妹!!」
そう言ってレミリア様も何処かへ行かれてしまった
「・・・切られ損・・・左腕どうしようかなぁ」
俺は吸血鬼(出来損ない)なのでこれぐらいはなんとも無いが・・・痛いorz
とりあえず切られた左腕を拾って途方にくれた

「パチュリー様、治癒魔法って使えます?」
仕方がないので図書館へと足を運んだ
紅魔館の頭脳!引きこもり!エレメントマスター!喘息患者!
魔法使いパチュリー・ノーレッジ
彼女に聞けば大抵の問題は解決してしまうのだが
「咲夜に頼めば?彼女裁縫は得意よ?」
「いや・・・治癒力が弱いもので・・・」
「貴方腐っても吸血鬼でしょ?表面さえくっつけば遅くとも1日ぐらいで治るはずよ」
彼女はすぐに読書に意識を向けた、こうなってはもう言葉も届かないだろう
仕方がないので咲夜さんの所へ
「腐っても吸血鬼か・・・ほんとに腐ってるから笑えないなー腐った死体に改名しようか」
「何をブツブツ言ってるのよ、怪しいわよ」
「あ、咲夜さん、丁度いい所に」
「?」
これまでの経緯を説明し左腕の表面をくっつけてくれるようにお願いした
腕の接合なんて嫌がられるかと思ったがすんなり受けてくれた
「貴方も吸血鬼何だから避けるなり受けるなりしなさいよね」
「は、ははは・・・」
「ちょっと!?こんな事で落ち込まないでよ!」
「いや・・・此処に来てから一度も役に立ってないな、と思って」
妹様に逃げられる、侵入者を止められない、掃除も料理も並以下
出来るのは夜の見回りとメイド達が出来ない力仕事ぐらい
「はぁ・・・俺は、駄目だなぁ」
「・・・少なくとも、メイド達は貴方の事頼りにしてると思うわ」
「そう、ですか?」
「優しいし、何でもよく気付くし、力持ちだし、家具の移動とか楽になったわ」
「・・・少しでも役に立ててるなら幸いです」
「私は・・・貴方が此処に来て最初は胡散臭いと思ったけど・・・今は、大好きよ」
「へ?・・・え?大好きってその・・・」
「さぁ、腕もくっついたし、仕事に戻りましょ!」
「あ、ありがとうございます、あ、あの、咲夜さん?」
「ん?」
「それってどういう
彼女は優しく微笑んで部屋から出て行った、俺はその笑顔があまりにもまぶしくて思わず見とれてしまった
それ以上に自分で何を言われたかまだ理解できないでいた
「―ッ!」
彼女の言葉と微笑を、理解したと言うか、思い出したというか
とたんに恥ずかしくなってその後は仕事にならなかった
「LOVEなのかvery LIKEなのか・・・うーん」

8スレ目 >>430

───────────────────────────────────────────────────────────

「いらっしゃい・・・なんだ、君か」
里のはずれの方に建つ一軒の怪しげな家、いや正確には店、か
「お客になんだとは失礼ね」
其処に訪れたのはメイド服のパッdげふんげふん、十六夜咲夜だった
「頼んでいおいたのは出来てる?」
「ばっちり、あまり乱暴に使うなよ、すぐ刃毀れするからな」
そう言って数十本の短剣を渡した
「わかってる、けど投げナイフはもともと消耗品でしょ」
代金を払い、短剣を鞄にいれた
「・・・」
「・・・」
じっと見つめあう、よくわからないが張り詰めた雰囲気だ
「わかったよ、お茶飲んでいきなお嬢さん」
「ありがと♪今日もゆっくりしていくわ」
ナイフ研ぎで2時間も3時間も粘られるとは・・・しかし常連さんなのである
「・・・帰らなくていいのか、吸血鬼のお嬢様が待ってるんじゃないのか?」
「いいのよ、今日は一日休みだから」
「ふ~ん、お前さんにも休みがあるんだな」
「○○なんて毎日休みみたいなものじゃない、お客も私ぐらいでしょ?」
「そんなことは無い!へんな爺さんとか二刀流の幼女とかも来るぞ」
数年に一度だがね、週一で来るのは咲夜ぐらいだろう、客が少なすぎるが生活になんら問題はない
「それじゃ帰ろうかな」
「ん、気をつけてな」

店を出て、帰路に着いた
「・・・引き止めてはくれないか」
ため息を吐きながら、自然と言葉が出た
「やだ、これじゃまるで」
そう、彼に・・・恋してるみたい
「いつか、○○のほうから・・・お茶に誘ってくれないかな」
吐く息が白くなる、私の隣は空のままだ

8スレ目 >>671

───────────────────────────────────────────────────────────

「○○ここの荷物を4倉庫にお願い」
「はい、解かりました」
最近は咲夜さんにあごで使われてばかりだ
掃除も料理もお茶も駄目な俺は重量級の荷物整理、深夜の雑草ぬき、深夜の門番
これぐらいしか仕事がないもんだから暇でしょうがない
暇な時間はフラン様の話し相手をしたり、レミリア様から有難い講釈を受けたり
パチュリー様から実験のサンプルを取られたり、そんな感じ
「お疲れ様、休憩にしましょう」
彼女は本当によく出来たメイドだ、一言で言えば堅い
でも、時折見せる少女のような一面に、おれはメロメロ(死語)だった
休憩時間のことだった、窓の外に話しかけてる咲夜さんをみた
霊夢さんとでも話してるのかと思ったら、小鳥に話しかけてた
いやもう、かわいいね、やばいよあれは
けっこう華奢でね、腕なんかすごーく細いのよ
前に大きめの荷物を持とうとしてね、持てたんだけど重くて足の上に落しちゃったみたいなんだよ
すっごい涙目でね、でも我慢してるんだよ
人目を忍んで痛かったーとかいってるのよ
いや、もうね、あのギャップ、惚れたよ
普段は完璧なメイドを演じてて、実はか弱い年相応の少女ってのはね、おじさんぐっと来るね
「○○ー!この荷物をー」
「はいっ!ただいま」
いけね、へんな妄想をしてしまった
「これとこれを、終わったら今日はおしまいよ」
せっかく腕力があるんだから、こういう仕事でがんばるしかない
咲夜さんが小さい荷物を運ぼうとしててを滑らせた
「ッ!」
落としたのはこの前と同じ足の上
「あ、この前と同じとこ・・・」
「み、見てたのね!?この前私が―」
「わーごめんなさいごめんなさい、偶然見たんですよー」
頭を庇って、下を向いた・・・あれ?
「咲夜さん!?血!足血がでてます!」
咲夜のエロいじゃなくてきれいな足の甲から血が滲み出ていた
「あら、ほんと・・・大丈夫よこれぐら「救護班!手当てをー」
「ちょ!?○○!?」
音より速く、咲夜を抱えて(もちお姫様抱っこ)救護が出来るメイドの所へ駈けた

「はい、これで大丈夫ですよ、意外ですねメイド長がうっかりミスで怪我だ何て」
咲く夜は少し恥ずかしそうに、俺は横で心配そうに、メイドは何だかニヤニヤしながら
「それじゃ私はこれで、あまり足に負担をかけないでくださいね」
「ありがと・・・ほかの子には黙っててよ」
「ふふふ、解かりましたよ」
「・・・よかったー」
「○○さん」
メイドにが耳元でボソッとしゃべって言った
「○○GJ!咲夜フラグげとー!」
意味不明な呪文を呟いて部屋を出て行った、何だあれは?
「○、○○・・・その・・・あ、ありがと」
これはヤヴァイ、いつも気丈な咲夜が、頬を染めて、素直に、礼を言ってる
少し申し訳なさそうな感じが可愛さを更に引き出して、これは・・・がんばれ理性!
「い、いえ、当然のことをしたまでですよ」
「・・・そうね、そうよね、貴方は誰にだって優しいよね・・・」
なぜそんな悲しそうな顔をするんだ、俺は君の笑っている顔がすきなんだ
曇った顔は、暗い顔は
「咲夜さん?なにか・・・」
「はは、なんでもないの、仕事に戻りましょ」
部屋を、出て行こうとした彼女の手を、握った、俺は彼女を引きとめた
「俺で、俺でよければ・・・話してください」
「そう、ね・・・私、好きな人がいるんだけどね、そいつは鈍くて、何処か抜けてるけど・・・とても優しいの、誰にでも・・・誰にでも優しいのよ」
咲夜さんに好きな人?俺は・・・いやだ、そんなのは嫌だ、でも・・・彼女は
「そいつ・・・幸せな奴ですね!咲く夜さんにこんなに想われてて」
黒い感情を押し殺した、でないと俺はきっと酷い事を言ってしまう、醜い
「・・・そうよ、こんなに想ってるのに、あの莫迦鈍くて・・・」
彼女の瞳を涙が濡らす、泣いている姿をみて、不謹慎にも、綺麗だと思った
「咲夜さん・・・泣かないで」
「誰のせいで泣いてると思ってるのよ!!ばかー!!!」
ぱしーん、と勢いよくびんた、そのまま彼女は走っていった
いたい・・・なんで俺が
「誰のせいで・・・・鈍くて・・・誰にでも・・・・・・」
彼女の言葉を思い返して整理して
「え・・・俺?もしかして、もしかしなくて俺?」
いや、この結論に至った事を妄想乙とか言われても構わない
彼女の言葉からは、行動からは、それが最も正しい―
「はっははは、俺が・・・咲く夜さんが俺を」
生まれて初めて、嬉しくて泣いた、嬉しすぎて笑った
笑いながら泣いた、そして走って行った十六夜咲夜の後を追って走った

8スレ目 >>677

───────────────────────────────────────────────────────────

「なぁ咲夜、俺は・・・お前の事が―」
ぴぴぴぴぴぴぴがちゃ
「ん・・・夢だよね、あの人がそんな事・・・」
もう少し時計が鳴るのが遅ければ、あの人のセリフを
溶けるくらい甘いセリフが頭をよぎった、自分で恥ずかしくなった、馬鹿馬鹿しいと思って
「早く着替えなきゃ、仕事が」
すぐに着替え、身支度を済ませ仕事へと向かった
部屋を出た、瞬間何かにぶつかった
「きゃっ!」
どす、っと堅いものにぶつかった・・・あれ?
「大丈夫ですか!?咲夜さん?」
○○さんの胸、らしい、頭のすぐ上から○○さんの声がする・・・
「ご、ごめんなさい、私ったら急いでて・・・その」
あんな夢を見てすぐに○○さんに会っちゃうなんて、恥ずかしくて顔が見れない
「咲夜さん?どうしたんですか!?顔が赤いですよ?熱でも」
「大丈夫です、大丈夫ですから」
なんでもないからそんなに近づかないで!今は―
俯いてるのに○○さんの顔が正面に見えた・・・え?
おでこが、おでこが
あの例のあれ(おでことおでこで熱を測るの)
ぱたっ
私は私の倒れる音を聞いた
「あ、メイド長、気がつきましたか」
「ここ、は?」
「医務室ですよ、メイド長いきなり倒れたんですよ?」
「そうだ、○○さんは!?」
とんだ失態を見せてしまった、というか恥ずかしくてしょうがない
「かっこいいですよねーメイド長を軽々と抱えて医務室まで来られたんですけど」
私が知らないうちに私はいい思いをしてたらしい、意識がないのが悔しい所ね
「すっごくあわててましたよー、お姫様抱っこって絵になりますよね」
おおおおお姫様抱っこ!??きゃー
「もう大丈夫ですよ、熱中症という事にしておきますから」
メイドはさっきからニヤニヤしている
「ニヤニヤしないでよ、私だって恥ずかしいんだから」
「あ、いえいえ、そういうことではなくてですね・・・メイド長、いえ咲夜さんは○○さんにとってとても大切な人なんだなぁって」
「な、なにを」
「だっていつもクールで優しい彼があんなに取り乱して、あれだけ思われてる咲夜さんが羨ましいですよ」
「そんなこと・・・ないわよ、彼は誰にだって優しいわ」
「・・・まぁいいですけど、思ってるだけじゃ思いは想いのままですよ?」
「・・・ありがとう、仕事に戻るわ」
「はい、がんばってくださいね咲夜さん・・・陰ながら応援させてもらいます!」
「ふふ、ありがと」
「これからどうなるかwktkしますね」
「わくてか?」
きにしないでください

「咲夜さん!もう動いて大丈夫なんですか!?」
「ええ、全然大丈夫です、すいません、朝から迷惑ばかり」
「いえ、咲夜さんが元気ならそれでいいんですよ!迷惑だなんて、ぜんぜん」
この人が私を好き?私の大好きなこの人が、私を好きでいてくれるの?本当に・
「○○さん・・・今日は何時まででしたっけ?」
「仕事ですか?確か5時半までだったと」
「・・・6時に・・・中庭で、その・・・待ち合わせしませんか?」
「何か相談とか、ですか?」
「え、ええそんな所です、いいですか?」
「構いませんよ、それでは6時に中庭で」
その後はいつもどおりに仕事をした、仕事をすることで、少しでも気がまぎれればと思った
「メイド長!」
「な、なに?いきなり」
「○○さんを誘ったんですね~!」
「き、聞いてたの!?」
「聞いたんではありません、聞こえたんです、不可抗力であって自己の意思による選択の(ry」
「・・・今朝も言ったけど他のメイドには秘密だからね!?わかってる?」
「ええ、ちゃんと把握してますよ、こういう秘密は秘密にするからこそ面白いんですよ」
「・・・今夜は・・・がんばるわ、どんな結果であれそれを受け入れる」
「がんばってくださいね、私は咲夜さんを応援してますよ」

ほーほー ふくろうが鳴いてる、今は5時45分、私は少し早く来てしまった
待ちきれなかった、期待と不安に押しつぶされそうだった、早く楽になりたかった
楽になれるといいのにな
「せっかちさんですね、約束まであと十分ほどありますよ」
○○さんが、来た
「呼び出しておいて遅れるの失礼だと思って」
「そうですか・・・それでなぜ私を?」
言おう、言うぞ、言えっ!
「私はっ・・・」
声が震える、上手く声がでない、なんで!?
「私は」
恐怖か不安か、黒い感情で声が震える、悔しくて涙が出た
今朝とは違う、衝突ではなく抱擁、私は、彼に抱きしめられた
「何があってどういうことなのかは解かりません・・・でも泣かないでください」
あったかい、人肌がこんなに心地いいなんて
「○○さん・・・私・・・あなたの事が好きです、大好きなんです」
「咲夜さん・・・俺も言いたい事があるんですけど、いいですか?」
「は、い」
拒絶か、怖くなって身構えた、衝撃で、壊れないように
「俺は、○○は、十六夜咲夜が好きで好きでしょうがない、大好きだ・・・だから」
「○○さん・・・」
また抱きしめられた、いや今度は違う、お互いに、抱きしめ合った
私は、私たちは、自然と、お互いの唇を求め合った

「・・・よかったですねメイド長!ぐすぐす」
遠くから二人の様子を見守っていたメイドがぼろぼろ泣きながら喜んでた
レミリア様に朝早く咲夜の部屋を出て行く○○が目撃されてしまうのは別の話・・・


8スレ目 >>747・750

───────────────────────────────────────────────────────────

「いらっしゃいませ~」
「こんにちは」
此処は調味料、珍味、漢方原料取扱店「ヰ茶主列度」
「こんにちは咲夜さん、今日は何をお求めですか?」
「パチュリー様の要望でね、この紙に書いてある物を」
「かしこまりました」
十六夜咲夜は既に買出しを終えたらしい、持っている荷物の量からするとうちが最後か
「大変ですね、買出しからお遣いから、館のあれこれ」
「もう慣れたわ、流石にね」
世間話をしながら商品を探し、揃えていく
守宮の尻尾~蜥蜴の青尾~♪コウモリこうもっり♪るるるー
「これで全部です、お化けきのこは切らしてるので、申し訳ない」
「じゃあそう伝えておくわ・・・」
・・・流石の咲夜さんもお疲れのご様子で
「これオマケしときますね」
「なにそれ?」
「栄養ドリンクヰ茶磨れすぺしゃる、です」
「…怪しすぎる、大丈夫よね?」
「少し飲んでみて駄目だったら門番か魔法使いに上げてください」
拳大ほどの瓶に容れられたワインレッドの液体・・・
とりあえず貰える物は貰う、ポケットにそっと仕舞った
「あの・・・えっと・・・来週がですね・・・その、休みなんですよ」
「久しぶりの休みですね、ゆっくり出来るといいですね」
「そうじゃなくて・・・その・・・よかったら、いえ、時間があればでいいんです!私と・・・その・・・」
ガラス細工を触るように、咲夜の唇に触れた、指だよ?
「お嬢さん、来週もしお時間が有れば、この私と、過ごしてもらえませんか?」
「あ・・・は、はいっ!喜んで!」

その晩、暗い部屋に一人、明かりを灯し瓶を眺める少女
「早く来週にならないかなぁ」
瓶の中で、真紅の液体がころがった

8スレ目 >>807

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ドアの閉まる音に首を向けると咲夜が立っていた。
「あれ、レミリア様のところにいなくてもいいのか?」
「ええ。なんだか体調が優れないとか言って、早々に寝ちゃったわ」
「ふうん。――ま、座れよ。紅茶と珈琲どっちがいい」
「それくらいなら私が……」
「いいって、俺にも少しはやらせろよ。で、どっちだ?」
「じゃあ……紅茶。美味しく淹れなきゃだめよ」
悪戯っぽく咲夜は笑う。いつも張り詰めたままの表情も年相応に見えた。
震える手で紅茶を渡すと、微笑んでそれに口をつけた。
「まあまあね。ま、ぎりぎり及第点って所かしら」
「……厳しいなぁ。結構自信あったんだぜ?」
「自信があっても結果が伴うとは限らないのよ。精進することね」
「妙に実感篭ってるな…。――まさか咲夜も昔は?」
「何のことかしら?」
「はは、じゃあ気にしないでおくぜ」
月が照らす部屋で俺と咲夜は小さな声で笑った。
誰が聞くこともない、笑い声が部屋に染み込んでいった。
「なんで私がここに、とは訊かないのね」
「恥ずかしいからな。あえて、だ」
「ふふふ、そう。じゃあ、恥ずかしいついでに踊りましょうか」
「おいおい、俺はステップなんて知らないぜ?」
「大丈夫、私が教えてあげる」
「そうか、なら安心だな」
「今宵、私の時間は貴方のもの。踊りましょう、日が昇るまで」

9スレ目 >>411

───────────────────────────────────────────────────────────

「咲夜さーん!俺とつがいになって!!」
「こ、断らせてもらいますっ!」
ここは幻想郷、幻想になったモノが集まったりひっちゃかめっちゃかな場所・・・
「咲夜さん!俺の愛の歌を聴いてくれっ!!」
どれだけ走っても追いかけてくる男、名前は○○というらしい

「十六夜咲夜さん!俺の名前は○○と言います!結婚を前提に御憑き愛シテクダサイ!!」
「え、ええと・・・その・・・ごめんなさい」

うん、確かそんな出会いだった
○○は里に行くたび、正確に言えば私を発見するたびに、追いかけてくる
ナイフを投げようが、時を止めようが、お構い無しに
きっと亡霊か何かなんだ、だから物理攻撃は効かないんだ・・・あれを人間とは認めたくない
「嗚呼チクショウ、今日も逃げられた・・・咲夜さーん!まったねー」
彼なりの精一杯の譲歩なのか、紅魔館には入ってこない、買い物中も追いかけてこない
私は買い物をした帰り道に紅魔館まで逃げ切れれば勝ちなのだ、生存的な意味で
「・・・はぁ、疲れるなぁ」
「どうぞ」
「あら、ありがと・・・」
差し出された水は良く冷えていておいしかった・・・あれ?
「うわ、びっくりした、気配を消して背後に立たないでくれる?」
背後には銀のトレイを持ったメイドが・・・でも彼女は救護担当では?
「あらあら、メイド長が息を切らしてご帰還なされたのでせめて冷たいお水を、と思った私のおせっかいでしたね・・・およよよよ」
「も、もう人をおちょくるのもいい加減に」
「およよよよ」
今どきおよよよよなんて泣く人はいない、絶対にいない
「・・・水美味しかったわよ、ありがとう・・・これでいい」
「はい、それでいいんですよメイド長」
部下におちょくられるなんて・・・私もまだまだ
「あ、そうだ救ちゃん」
「はい、何でしょう咲夜さん?」
「じつはかくかくしかじかで」
「しつこくつきまとう男を撃沈し滅するにはどうしたら良いかですって?」
「い、いや、そこまでは・・・」





「あ、咲夜さーん、こんにちは!お買い物ですか?」
「・・・」
「元気ないですか?ど、何処か体が悪いとか」
「・・・い、いい加減にしてくれない?私も暇じゃ無いのよね」
「咲夜・・・さん?」
メイドに教わったとおりに、憶えた言葉をつむいでいく
「いい加減ウンザリなのよ、毎回毎回しつこく付き纏ってきて、私の身にもなってくれないかしら?」
「・・・そうですよね、俺みたいなキモ男の愚図の無職野郎に付き纏われて、そりゃ気持ち悪いし煩わしいですよね」
「え、いや・・・そこまでは」
「すいません、迷惑だとは思ってましたが・・・いけませんね、自分のノリを他人に押し付けて・・・ははは、やっぱり俺は生まれてこの方・・・」
ふらふらと、背を向けて歩き出した、そのとき私は始めて彼の背中を見た
彼は最後に今までご迷惑おかけしました、申し訳ない
そう言ってとぼとぼとリストラされた50代後半のサラリーマンのように、歩いていった
「あ・・・ま、待ちなさいよ!」
「・・・え?」
思わず呼び止めた、しかし言うべき言葉は何も考えていない、これはしまった
「え、ええと・・・そ、その程度なの!?私に拒絶されたぐらいで消える愛だったの!?私が拒もうがなに言おうが付き纏って、頑張りなさいよ!」
「さ、咲夜さん??」
自分でもなに言ってるかわからない、さっきとは真」逆のことを言っている、これではまさにあべこべ蛙だ
「私が諦めるぐらいまでがんばりなさいよ!むしろ私を惚れさせてみなさいよ!!どうなの!?」
「・・・」
○○完全に沈黙
そりゃそうだ、自分でもなに言ってるか解らないのだから、どっちをどう受け取ればいいか混乱もするだろう
付き纏うなといったり、付き纏えといったり
「咲夜さん・・・」
もしかして怒らせてしまったのかもしれない、嫌われたかもしれない、それは少し、寂しい気がした
「え、えっとね○○、何が言いたいかというとね」
「咲夜ぁぁぁぁぁ!!好きだぁぁぁあああああ!!!愛してる!俺と夫婦に!仲睦まじい夫婦になってくれっ!!」
条件反射で私は走り出した、紅魔館に向けて
「待て、俺の話を聞いてくれ!!まず俺が君の何処に惚れたかをだな」
「いい!聞きたくない!」
「まず几帳面な所だ!しかし里に降りてきて雑貨屋などで可愛らしいアクセサリーを見つけたりすると周りを確認してちょっと着けてみたりなんかして」
「や、やめて!というかなんでそんなことまで!!?」
「俺はその雑貨屋の息子だぁぁ!!」
紅魔館はもうすぐだ、門の内に入ってしまえば、美鈴に撃退してもらうなり、なんなりとできる
「おお!?」
「はぁ、はぁ、はぁっ・・・今日も逃げ切ったわよ」
「ぐ・・・残念無念・・・また明日」
とびきりの笑顔で、彼は笑った、そして大きく手を振って帰っていった
「・・・嵐というより竜巻のような、男ね・・・」
「咲夜さん・・・アレはいったいなんなんですか?」
呆気にとられて動けないでいた美鈴が、やっと話せた一言は、当然の疑問だった



「それで、結局元に戻ったというより、余計にパワーアップさせちゃったわけですか」
「わ、笑うなら笑いなさい、私だって莫迦な事をしたと思ってるわ」
莫迦な事をした、そういう割には、いい顔をしていらっしゃる
私を惚れさせてみろ、か・・・なんだ、とっくに・・・
「・・・咲夜さん、きっと毎日楽しいですよ、今までどおり、これからも」
「救、ちゃん?」
「人生は短いんですから、全力疾走で楽しみましょう」
「太く短く生きろって奴?」
一度きりの人生、彼のように色恋に生きるもよし、私のように人をおちょくるもよし、咲夜さんのようにいっぱいいっぱいでも、それでもよし

「それじゃあ救ちゃん・・・いろいろありがとね、仕事に戻るわ」
ほかの子にはナイショよ、そう言ってメイド長は救護室から出て行かれました
私としてはもう少しドタバタしたほうが面白いと思うのですが、残念な事にあっさりとカップル成立のようです、正確に言えばまだ成立はしてませんが
「あー・・・個人的には傍観が一番楽しいと思うのですがねぇ」
いつも見てばかりですが見られる側をした事が無いのでなんとも言えません
でもメイド長を見ていれば、恋とか愛とかも、悪くないのかもしれません




「咲夜さーん!大好きですッ!」
「私もよッ!!」
「・・・・ええっ!!?ちょ、おま」

11スレ目>>189

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 「……何だ、これ?」

 紅魔館の周りを散歩していた所、小さくて円柱状のビンが落ちていた。
 いや、落ちていた、というよりは置かれていた、という表現の方が正しいだろうか。
 中には液体が入っていた。誰が置いていったのだろうか。
 もしかしたら、危ない物とか?
 どちらにしろ、この怪しい物を放っておく訳にはいかない。
 こういうのに詳しそうなのは……パチュリーさんかな。
  

 「……ごめんなさい。これは私には分からないわ」

 図書館へと伸びている廊下を歩いているとき、咲夜さんを見つけたのでこのビンについて聞いた所、残念な回答と共にビンが返ってくる。

 「そうですか……」
 「パチュリー様なら知ってるかもしれないわ」

 そう言いながら、咲夜さんは図書館があるであろう方へと目を向ける。
 もちろん、俺の目的地は最初からそこだった。そもそもパチュリーさんに聞く予定だったのだから。

 「じゃあ、パチュリーさんに聞いてみます。呼び止めてすいませんでした」

 咲夜さんの脇をすり抜けて、本来の目的地へと向かう。

 「――ちょっと、待っていなさい」

 咲夜さんのいた場所から声が聞こえた。
 しかし、その声を聞いている間に咲夜さんはいつの間にか俺の目の前にいる。
 その手に、ビンを持ちながら。

 おかしな話である。
 咲夜さんが目の前にいるのに、別の場所から声が聞こえるのだから。
 しかも、手に持っていたビンはいつの間にか目の前の人に渡っている。
 でも、それはこの人だから出来る。

 「……時間弄ったんですか」

 自分でも分かるほどに呆れていた。
 そんな簡単に時間弄っていいのだろうか。

 「えぇ、ここからは少し遠いから……それよりもこのビンの事、パチュリー様から聞いてきたわ」

 咲夜さんはそっぽを向きながら話す。
 その頬が、少し紅く染まっている気がするのは、気のせいだろうか

 「聞いてきてくれたんですか? 何て言ってました?」

 俺が聞くと、咲夜さんはその頬の熱を感染拡大させたのか、顔中を紅くした。
 何か面白い事でも聞けたのだろうか。そうでも無ければ、いつも冷静に仕事をしている咲夜さんがこんな顔をするはずがない。

 しかし、その回答は予想に反した。

 「その……パチュリー様にも分からなかったみたい」

 ……そうですか。

 「でも、毒は無いから、飲んで確かめてみるのが早いと」 

 ……そうなんですか。

 「だから、あなた飲みなさい」

 なるほど、俺が飲んで確か――え?
 今、なんと仰いましたか。

 「ほら、早く飲みなさい」

 相変わらず、そっぽを向いたまま、ビンを俺に突き出してくる咲夜さん。
 いや、その。

 「の、飲めと言われましても」
 「だ、大丈夫よ、害は無いんだから、死ぬことは無いわよ」

 俺だって疑う人間ですから。
 毒は無いけど、何の効果か分からない液体。
 そんな物。

 「の、飲めるわけじゃないですか! そんなの飲んで変なことになったらどうするんですか!?」

 こんなのを疑いも無く飲むなんて、人間としてどうかしてる。
 いや、存在するものとして、かな?

 「……飲まなかったら一週間不眠不休で働かせるわよ」
 「なっ……!?」

 どこまで飲ませたいんだ、この人。
 メイド長の指導の下で、不眠不休の仕事。
 少しでも休もうものなら、問答無用で殺人ドール。
 生きていられる訳が無い。
 だったら、毒は無くても飲んだほうがいい、の、か?

 「わ、分かりましたよ……飲めばいいんですよね?」
 「えぇ、よく分かってるじゃない」

 瞬間、満面の笑み。顔は相変わらず真っ赤だけど。
 ビンを受け取り蓋を開ける。
 えぇい、何だ。この間、誰のかも分からない血を原液で飲まされたばかりじゃないか。
 そんなのに比べれば、これくらい!
 
 ――ゴクッ。

 味はしなかった。ただ、少しヌメリとした感触がある。味はしないはずなのに、喉に少し残る感じがある。
 あまり、良い気分はしない。一口で飲みきれる量だったのが、せめてもの救いだ。
 効果は、その後すぐに現れた。
 急激な目眩。立っていられなくなってその場に倒れた。

 咲夜さんが顔色を変えて寄ってきた。
 飲ませたのは貴女でしょうに。
 咲夜さんが呟くように言った。よく聞こえなかったけど、確かに聞こえたのは"言ってなかった"。

 くそぅ、やっぱり答え聞いてきたな!?

 どんな答えかは知らないけど、ここまで苦しむとは思ってなかったのだろうか。
 全く、人を何だと思っているんだ。
 負の思考全開で苦しみ抜いて、やがて引いてくる目眩。落ち着いた頃には、廊下の天井をボーっと眺めていた。

 「う……あ……」

 喉が痺れているようで、しっかりと声を出せない。
 身体を起こそうとしても、気だるくて起きられない。
 どう考えたって、毒入りだった。騙されてしまった訳だ。

 横を見ると、咲夜さんがこちらを見ていた。
 皮肉気味に笑みを作る。が、上手くいかない。
 笑えてはいるんだけど、その大事な「皮肉」部分を表現できていない気がする。
 やがて、咲夜さんは呟いた。

 「……可愛い」

 は? 一人の男に向かって"可愛い"ですと?
 いつでもどこでもかっこよさを求めている男に向かって"可愛い"は男としてのプライドをひどく傷つけることになる。
 もちろん、俺もしっかりとした男ですから、凄く凹む訳でして。

 凹んでいると、抱きしめられていた。
 全身をしっかりと腕の中で包み込まれて、咲夜さんの中にいる状態。
 凄く良い匂いがする。忙しくても、その辺は気を使っているんだなぁ。
 相変わらず、すっぽりと包み込まれてしまっている。

 ……あれ? 俺そこまで小さかったっけ?

 しばらくそうしていて、喉の痺れと、全身の気だるさが取れてきた。

 「あ、あの……咲夜さん?」

 咲夜さんの中から何とか抜け出し、声を出す。その声は、いつもの俺の声ではない。
 確かに俺の声に似てはいる。けど、声は高くて、まるで声変わりの前のようで――

 「……うわ!」

 自分の身体を見回して状況把握。

 ――身体が、巻き戻ってる。

 つまり、子供になってしまった。

 「ちょ、咲夜さん……この状況、説明してもら……」

 目の前の人を見る。
 その人の目に、いつもの完全で瀟洒な従者の目は無かった。
 これは、ヤバい。この人からは逃げたほうがいい。
 本能から警鐘が鳴っている。

 「し、失礼しました!」

 それに従い、咲夜さんとは逆方向に駆け出してこの場から逃げる。
 いつもよりも、地面が近い。
 走る足が、いつもより遅い。
 巻き戻ることによって、こんなにも不便になるとは。

 自分の部屋はどこだったか。ここの突き当たりを右に曲がって最初の扉……!

 突き当たりの廊下を曲がったところで、何かにぶつかった。
 予期しない衝撃に速度を殺せず、その大きな反動に尻餅をついてしまった。

 「ごめんなさ――」
 「どうしたの? そんなに慌てて」
 「…………」

 目の前にいたのは、我らのメイド長、咲夜さま。
 また、時間を止めたんですね。
 俺が苦笑を浮かべると、
 その人は満面の笑みを浮かべながら俺を抱き上げた。


 気付けば、メイド服姿で咲夜さんの部屋にいた。
 言われて気付いたけど、俺は身体が小さくなっている訳だから服とかぶかぶかな訳で。

 「それはそれで凄く萌――いえ、何でもないわ。とりあえず、新しい服を用意してあげるわね」

 そんな風に言いくるめられ、まずは咲夜さんの部屋へ。

 そして出てきたメイド服に批判したところ、人様には言えないような事をされ、みっちりと身体に仕込まれた。何が、とは言わない。
 メイド服は着せられ、一人称を"僕"に改められた。しかし、地まではさすがに調教できないだろう。俺は"俺"である。
 更に、咲夜さんの事は名前の後に「おねーさん」を付ける事に。
 短時間でここまで仕込まれた。もう俺の心身の八割は咲夜さんに染められている。

 「いよいよ最後の仕上げね!」

 そう言う膝立ち状態の咲夜さんの表情は今までに見ないくらい、楽しそうだった。
 もう逆らえない身体となってしまっている俺は、これで最後、と言う事に対する安堵と、この最後に何をさせるのか、という恐怖感で一杯だった。
 ちなみに、咲夜さんの膝立ち状態と俺の立っている背は全く同じである。

 「○○、次の言葉を言いなさい。いいわね?」
 「いいわね……?」

 いや、待て。そこは復唱する所じゃないだろ。しかも首を傾げるオプション付き。
 自分でも突っ込んでしまうほど、色々とみっちり仕込まれてしまったらしい。
 これは呆れられたか、お叱りかな、と思っていたのだが。

 「あぁ、もう可愛い!」

 銀髪の弾丸が飛んできた。瞬く間に腕の中へ。

 「もう大目に見ちゃう! おねーさん大目に見ちゃう!!」
 「…………」

 この溺愛ぶり。何と返せばいいのか、分からない。

 何というか、新鮮だった。
 あの完全で瀟洒だった咲夜さんが、こんな風に変わるなんて。
 そんな咲夜さんの違った一面が見れて、何となく嬉しい気持ちになっていたのかもしれない。
 気付いたら、俺は既に戻れない状況に立たされている事に気付かないまま。

 とりあえず、この状況から一刻も早く抜け出したい。

 「あの、咲夜おねーさん。さっきの続きを――」

 俺が言うと、咲夜さんはハッと我に返り、俺から離れると膝立ちの状態で言った。
 そして、少し焦れ気味に先ほどの続きを始めた。

 「『僕のお嫁さんになって下さい』。はい、復唱」
 「え、えぇ!?」

 何を言わせますか、このメイド長。
 とても楽しそうな顔で。
 とても期待に満ちた眼で。

 その顔が、今はとても怖い。

 「はい、復唱」

 もう一度、促す。
 既に調教し尽くされているこの身体はいとも簡単に言うことを聞いてしまう。

 「さ、咲夜おねーさん、僕のお嫁さんになって下さい」

 だから、変なオプションを付けるな、と。
 変な所でツボ突いちゃダメだろ。
 知らない自分が、更に上を目指している。

 「あぁ、もう可愛すぎる! しかも名指しなんて!」

 そして二発目に打たれた銀髪の弾丸。狙いはもちろん、俺。
 今度は頬ずりされながら腕の中へ。

 「もうお嫁になっちゃう! おねーさん何度でもお嫁になっちゃう!!」

 何度でもお嫁って、結婚して離婚して結婚して離婚してを繰り返すつもりですか。
 それはそれで疲れる話だ。

 「さぁ、もう一度言うのよ!」
 「咲夜おねーさん、僕のお嫁さんになって下さい」
 「もっとよ!」
 「咲夜おねーさん――」
 

 何度もせがむので、その度に同じことを言ってあげた。
 最後の方はほとんど機械的になってしまったが、鼻血を噴いていたので、きっと問題は無いだろう。

 で、大変な事になったのはその後で。
 咲夜さんは止まらない鼻血を手で押さえながら、興奮冷めやらぬ様子で俺に言い放ったのだ。

 「あなたはこの部屋から出ることを一切禁じます。安心しなさい、食事は用意してあげるから」

 食事とそういう事が問題なんじゃない。この部屋から出られない事が問題なんだ。
 しかし、既に調教完了されている俺にそんな事を言えるはずも無く。

 「分かりました。咲夜おねーさん」

 と笑顔で答えるしかなかった。
 咲夜さんは美人だし面倒見も良いからこれでも良いかな、なんて少しでも思ってしまった自分がいた。




 で、これは一体いつになったら戻るんだ? 

11スレ目>>271

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