故吉武尭右東海学園大学初代学長は「教育とは教えることではない。燃えることである。僕が与えられるのは生きることの喜びと勇気であろう」とその著書の中で述べている。この言葉に初めて接したとき、まったくの共感を覚えた。常に自省しながら教壇に立った。どうしても知識の切り売りに終わるからである。
それにしても日ごろから学生の基礎知識不足を痛感していた。大学で基礎知識の授業を行っても急にカバーしきれるものではない。教育改革にはまず基礎教育の充実が先決である。そうでないと日本の将来はない。
最近、全国学力調査の都道府県別結果が公表された。今、各地で市町村別の結果を公表するかどうかが問題になっているが、そんなことより生きる喜びを教えているか。学童があこがれをもつのはスポーツとお笑いの世界。学問にあこがれを感じるようになる教育とはどのようなものか。調査結果をもとに今後のあるべき方向を議論することが肝心ではないか。もっと危機意識をもって早急に共感できる教育計画を国・地方とも提示してもらいたい。
その際、検討してもらいたいのは、そろばん特区として成果が期待されている尼崎市の事例である。04年度から小学3〜6年生を対象に年間50時間のそろばん教育を実施している。保護者にも計算力や暗算力、集中力がついたと好評で、10年度から市内の43の小学校に拡大することが計画されている。
こうした地域にあった特徴ある教育、たとえば算数オリンピックへの参加児童を育てるといった計画を進めるのも一策であろう。学問へのあこがれをもった人材育成と学力の底上げが、緊急の課題であり、日本繁栄の基礎である。(共生)