迷走の末に年内の見送りが確実となった衆院選。麻生太郎首相の意向が報じられた28日朝、与野党の候補予定者たちは街頭に立ち、それぞれの立場から思いを訴えた。「ふざけるな」。肩すかしを食った民主党の候補者が怒る一方、厳しい戦いが予想される自民党議員からは「逆風でやるよりはまし」と本音も漏れた。【佐藤浩、石丸整、町田徳丈】
「金融不安に対して、政府・与党によるスピーディーな政策が必要です」。午前8時過ぎ、千葉県船橋市のJR西船橋駅前で千葉4区から出馬予定の自民党現職、藤田幹雄氏(40)は訴えた。
05年衆院選で比例で初当選し、今回は苦戦も予想される「小泉チルドレン」の一人。演説終了後、「参院選の大敗、汚染米や年金問題もあって逆風は強い。少しでも弱まった時に選挙をやってもらいたい」と先送りを歓迎する一方、「より状況が悪くなるかもしれないが」と不安ものぞかせた。
「選挙は先送りになるかもしれませんが、頑張っていきます。変わらないままでいいのですか」。政権奪取を目指す民主党。東京17区から立候補を予定する早川久美子氏(37)は葛飾区の私鉄駅前でアピールした。「ふざけるなという感じ。米国も大統領選挙をやっているのだから選挙すべきだ」と主張する。
同じく民主新人の後藤祐一氏(39)=神奈川16区=は「新人の私にとっては時間がある方が望ましい。地道にやれば悪いことではない」と前向きに語った。「スタッフや支援者はハイテンションのままでは続かない」と周囲を気遣った。
選挙事務所をどうやって維持するかは、与野党共通の悩みのタネだ。「困った」。5回目の当選を目指す自民党議員は頭を抱える。今月4日に選挙区内に三つの事務所を構えたばかり。月200万円を超える家賃に加え、人件費もかかる。「4~5月までずれるとなると準備を進めるスタッフや後援会に説明できない」
早期解散を求めていた公明党からは困惑の声があがる。兵庫2区の現職、赤羽一嘉氏(50)はこの日地元で2カ所の事務所開きをした。担当者は「すでに案内状を出してしまっていたので中止するわけにもいかなかった」。神奈川6区の現職、上田勇氏(50)は「麻生総理が判断するのだから、与党としては信頼するしかない」と歯切れが悪かった。
毎日新聞 2008年10月28日 東京夕刊