備前焼まつりが十八、十九日、備前市のJR伊部駅前一帯で開かれました。二日とも絶好の秋晴れ。会場を訪れた国指定、岡山県指定の重要無形文化財保持者の重鎮もえびす顔。大勢の客足に気を良くしたようでした。
人口約四万人の小さな市に、二日で十五万人もの人が訪れるのです。まつりがいかにすごいか、想像していただけるでしょう。
まつりがスタートしたのは二十五年前の一九八三年。最初から順風満帆だったわけではありません。初回の来場者は一万人ほど。関係者は全国のマスコミや官公庁、百貨店などを訪ね、PRを重ね、次第に客足を伸ばしてきました。手づくりで歴史を紡いできた関係者の労には頭が下がる思いです。
出店での飲食販売や余興のステージを行うだけのどこも似たり寄ったりのまつりが多い中、備前焼まつりは余興を省いたシンプルな企画に徹しています。人出の割にけん騒を感じず安らげるのは、そんなところに要因があるのかもしれません。
一方で、備前焼はバブル期を頂点に売り上げが低迷しているそうです。追い打ちをかけるように、岡山県の財政構造改革プラン(素案)には、作家の育成機関である県所有の備前陶芸センターを備前市か民間へ譲渡する方針が示され、行方が気掛かりです。
日本の工芸界をけん引する備前焼。今年、伝統工芸士に過去最多の十二人が認定されたのは危機感の裏返し。関係者が切磋琢磨(せっさたくま)し、さらに底力を見せつけてほしいと願っています。
(備前支局・二羽俊次)