「講演が終わった瞬間に、私の頬(ほお)を紅潮させるほどの力強い拍手が起こった」。米国の動物学者モースが滞在記「日本その日その日」で記している。
当時の最新学説だった英国の生物学者ダーウィンの進化論が、日本に本格的に伝えられた時の情景である。一八七七年十月、東京大学で学生や教授向けに行われた。
生物の種は、次第に進化し、環境に適応し子孫を残すのに有利なものが生き残っていく。進化論が「種の起源」と題して発表されると、「すべての生物は神によってつくられた」という聖書を否定する危険思想として、教会の非難が集中した。
本紙二十三日付夕刊によると、英国国教会は、今年九月にインターネットの公式サイトで、進化論を否定したことを謝罪する文章を発表した。国教会が約百五十年ぶりにダーウィンに公式謝罪したということになる。
ところが、米国では進化論は全く人気がない。昨年の調査では、支持する人は13%にすぎず、人類は神により創造されたと考える人が45%もいる。聖書を字義通り受け入れるキリスト教右派の影響があるという。
カトリックも進化論には懐疑的だ。法王庁の高官はダーウィンに謝罪しないと言明している。「まだ認めてくれないのか」と、天国のダーウィン先生は当惑していることだろう。