2006-01-29 実況中継
えー、只今、私の家にお客さんが来ております。
繰り返しますが、お客さんが来てるんです!
さらに繰り返しますが、家に、住人以外の人がいるのです!!
これは、すごいことです。
もしわたしたちがハムスターだったら、縄張り争いから噛み合い、殺し合いに発展しているところです。
以前、天才が家に友人を連れてくると言ったとき、わたしはその前夜、メラトニンをオーバードーズしました。
メラトニンは眠れるサプリメントなので、それを大量に飲めばたくさん眠れ、お客さんが家に来ているという状況から、逃避できると思ったのです。
まかり間違って死んでも、それはそれで仕方ないと思いました。
いわば、わたしは、「お客さんが来るから自殺未遂をした」女です。
だって、お客さんが来るって、たいへんじゃないですか!?
Tバッグの紅茶なんて出したら、一生ばかにされるだろうから、紅茶は葉っぱから煎れなきゃならないし……
抹茶のケーキなんて出したら、「わたし、抹茶嫌いなんです」って言われて気まずい思いをするかもしれないし……
チョコレートケーキなんて出したら、「わたし、チョコ嫌いなんです」って言われて気まずい思いをするかもしれないし……
ショートケーキなんて出したら、「わたし、そもそもクリームだめなんです」って言われて、客にフォークを投げつけられるかもしれないし……
その前に、ケーキ屋でケーキを選ぶ間、ショーケース越しに店員と向き合うという状況からして苦痛です。
というわけで、今日も実家に逃げようとしました。
逃げようと思って駅に向かったら、駅前の商店街でカメが売っているのを見かけました。
カメと会話しているところを、天才とその友人に見つかってしまいました。
3人でにこやかに家に向かいました。
にこやかに家の中に入りました。
わたしだけが、にこやかな笑顔のまま、蟹歩きで居間を後にしました。
そして別室に閉じこもり、引きつった笑顔でキーボードを叩いている、というのが、現在の状況です。
居間から、天才と友人の声が聞こえてきます。
ふたりは頭がいいので、わたしにはわからない、難しい話をしています。
わたしの知らない単語が、たくさん聞こえてきます。
結局、紅茶もケーキも出しませんでした。
ふたりは今頃、さっきコンビニで買ったボルビックを飲んでいることでしょう。
わたしもちょっと喉が渇いてきました。
居間にボルビックを飲みに行こうと思います。
ボルビックを飲みに行ったついでに、ちょっと会話に混ざってみようかな……
『できるかな できないな』
(居間から会話とともに聴こえてくる、「トルネード竜巻」の曲より引用)
2006-01-28 青い鳥はスーパーマーケットにいた
ここ数日、自分の存在意義について考えている。
『わたしは誰の役に立っているのか?』
『わたしにできることはあるのか?』
そんな疑問が、頭の中をぐるぐる回る。
結局のところ、わたしなんて、必要ないのかもしれない。
わたしがいなくても、あいつがいれば充分なのだ。
そう、あいつ。
あいつとは……
生協である。
3日前、生協は突然、勧誘にやってきた。
そして試供品のにんじんと牛乳を置いていった。
カタログも忘れずに置いていった。
生協といえば、小学校の頃を思い出す。
クラスの女子ふたりが、同じ靴を学校に履いてきた。
仲が良くてお揃いの靴を買ったのかと思ったら、そうではなかった。
親が生協で注文したために、たまたま同じになっただけだった。
生協は、わたしたちからファッションセンスを奪う。
それに、「買い物に行く」という、わたしの数少ない役割も奪おうとしている。
それだけではない。
にんじんを置いていった生協の職員は、若くて、ちょっとかっこ良かった。
わたしから、身も心も奪おうという魂胆に違いない。
身も心も、ファッションセンスも、存在意義も、すでに奪われている主婦が、多数いるに違いない。
恐るべし生協!!
『生協になんて負けない。自分をしっかり持って生きるのだ』
そう固く決意し、わたしは今日もスーパーマーケットに向かった。
2006-01-21 関東の空に代わって
雪が降っています。
ごめんなさい。
こんなベチャベチャな雪を降らせてしまって、本当に申し訳ありません。
関東の空に代わって、わたしがお詫びします。
……今日はそんな気持ちです。
雪の中、天才とふたりでファミレスへ向かいました。
彼が、溶けた雪でグショグショになった道を歩くたび……
『あぁ、ごめんなさい』
彼が、凍った雪に滑って転びそうになるたび……
『ほんと、ごめんなさい。こんなベチャベチャした雪で』
そんなふうに、申し訳なさでいっぱいでした。
彼は雪国出身です。
彼の出身地に降る雪は、関東と違って、サラサラしているという話は彼から何度も聞かされました。
頭や服に付いた雪が溶けることはなく、手で払えば、ハラハラと落ちるそうです。
だから、雪の中、傘なんて差したことはないと言います。
今日、出掛ける前に、天才から、「やっぱりこれって、傘必要かな?」と、雪景色を指差しながら訊かれ、絶句しました。
『この人は、本当に、傘を差さないで生きてきた人なんだ』
ファミレスからの帰り道、服を着た犬を見ました。
飼い主に、雪が降る中、散歩させられている犬は、服は着ているけれど、靴は履いていませんでした。
きっと犬も……
「東京の雪はベチャベチャしてかなわんな。足が冷たいじゃないか」
そう思っているんじゃないかと思うと、犬にも、関東の空に代わって謝らなければという使命感にかられました。
その犬が、雪国のサラサラした雪を知っているかどうかは、わかりません。
2006-01-18 ワニワニパニック
メジャーをガムテープで体のあちこちに貼り付けて、バストやらヒップやら、よくわかんない裄(ゆき)とやらを計りました。
それが、10分前のできごとです。
そうしていたのには、わけがあります。
ときは3日前に遡ります。
姉からメールが来ました。
『お正月、帰って来なかったけど、ワニワニパニックやろうって約束、忘れたわけじゃないよね。今度来たとき必ずやろうね』
実家に帰ると、もれなく姉と、ワニワニパニックができるようです。
ゲームセンターのワニワニパニックなら知ってるけど、家にあるワニワニパニックって、いったいなんなのでしょうか。
返信しました。
『夫の実家から、結納金なんてものが送られて来てます。すでに結婚してるけど……。向こうの両親は来れないみたいだから、来週あたり、2人でお金持ってそちらに行きます。そのときワニワニパニックやりましょう』
姉宛てのメールだし、主にワニワニパニックの件に関してのメールだし、ちゃんと「あたり」ってつけたし……
わたしは「来週、結納を執り行いましょう」と、母に言ったつもりは、全くありませんでした。
ところが、このメールを読んだ姉は、母に、「来週、ワニワニパニックと結納やりに来るって」と、決定事項として伝えてしまいました。
そして、今から2時間前、母から電話がありました。
「今週来るんでしょ」
「いや、わかんない。行けないかも」
「じゃあ、来なくていいから、お母さんの口座にお金振り込みなさい」
「……」
「結納金あてにして、あんたに花嫁道具として持たせる着物、予約しちゃったのよ」
「……、わかった。行けないようだったら、振り込む」
「それから、バストとヒップ、それに裄を測って、ファックスで送ってちょうだい」
「裄ってなにさ?あっ、いや……、いいや。ネットで調べるから」
そして洗面所で鏡を見ながら、1時間以上かけてひとりで体のサイズを測りました。
でも、ひとりで測るのは難しくて、メジャーがずれまくるので、肌に直接ガムテープを貼って止めながら、測りました。
真冬に上半身裸で、さらにメジャーをガムテープで貼り付けている女と、結納とか着物というものは、対極にあるような気がします。
そういえば、昔、母とよく長崎屋のゲームコーナーで、ワニワニパニックをやりました。
しかも、その長崎屋の中の呉服屋で、母の知り合いが働いているので、今回の着物は、ほぼ確実にそこで選んだ気がするのです。
繋がっていないようで繋がっている、ワニワニパニックと着物。
2006-01-14 大雨の日は押し売り求む
今日は大雨でした。
大雨なので、他人の家のドアに、足を挟む人間が極端に減っている気がします。
今日、わたしの家への訪問者は、3人でした。
ピザを届けにきてくれたピザ屋と、書留を届けてくれた郵便屋と、勧誘に来た新聞屋の3人です。
そのうち、ドアに足を挟んだのは1人だけでした。
新聞屋……、と言いたいところですが、ピザ屋でした。
あとの2人は、ドアに足を挟みませんでした。
郵便屋のときは、いちど部屋にハンコを取りに行ってから、ドアの前に戻ると、ドアは閉まっていました。
いなくなったのかと思ってドアを開けると、そこにはちゃんと、郵便屋が立っていました。
新聞屋のときは、「新聞はいりません」と言ったら、「そうですか」の一言で、あさっりと、足も挟まずに帰って行きました。
郵便屋も新聞屋も、服とか靴とか持ち物とかがびっしょり濡れていて、ドアに足を挟むほどの余裕はなさそうでした。
それに引き換え、足を挟む……、というか、足でドアを固定するピザ屋の、程よく汚れた白いスニーカーが、たくましく感じられ、印象的でした。
わたしは今日、なぜか、ドアに足を挟む人が好きで、足を挟まない人は嫌いだと感じます。
大雨だから今日1日靴を履かないと、あっさり決めてしまったことの後ろめたさからか……
それとも、雨で部屋に閉じ込められたときは、侵入者くらいしか、わくわくすることがないからかもしれません。
2006-01-11 人間だけが幸せでありますように
子どもの頃、『いいな いいな 人間ていいな おいしいご飯に ぱたぱたお風呂 あったかい布団で 眠るんだろな』(歌詞間違ってるかも)という、『まんが日本昔ばなし』のエンディング曲を聴くたび、どよ〜んとした気分になりました。
当時は、自分がなぜどんよりするのかわかりませんでしたが、今日、そのわけがわかりました。
わたしの父は、「冬にあったかいふとんに入るときだけが幸せ」というのが、口癖でした。
父の口癖は、他にもありました。
「このまま目が覚めなければいいのに」
それから、もっと頻繁に言っていたのが……
「俺は不治の病だから、長くは生きられない」
あれから20年近く経ちますが、父は生きています。
不治の病にかかった形跡もありません。
今日、テレビをつけたら、『まんが日本昔ばなし』がやっていて、ふとそんなことを思い出しました。
人間に生まれた幸福を実感するため、お風呂上がりにでも、でんぐり返しをしてみようと思います。
2006-01-10 ユウコとメラコ
今まで花なんて全く興味がなかったのに、最近では、道を歩いていてきれいな花を見つけると、持ち帰りたくなります。
咲いているのがパンジーなら、なおさらです。
それが、他人の家の持ち物だろうと、関係ありません。
「だって、パンジーを家の前に植えるのは、わたしの専売特許だもん。絶対渡さない!……他のどうぶつたちには」
そう言って、他人の家のパンジーを毟り取ろうとするわたしを、いつも天才が止めてくれます。
そんなとき、どうぶつの森もいいけど、こちらの森……、いや、街も捨てたもんじゃないな、と思うのです。
そんなお礼も兼ねて、昨日、天才のために花を買って帰りました。
といっても実際は、「他の花で気を紛らわし、よそ様のお花を盗まないように」という、自分の泥棒対策でもあります。
花屋で、一目見て気に入ったのが、『メラコ』という名前の花でした。
鉢に、値段とともに、『メラコ』と書かれていて、名前がまた素敵だなぁ、と思いました。
ふだんは気が強いのに、実は涙もろい……、きっとそんな感じの女の子です、彼女は。
そうして想像すると、一段と愛着がわいてきました。
ところが、今日、他の花屋で見かけた『メラコ』には、『メラコイデス』とい書いてありました。
『メラコ』というのはどうやら愛称のようなもので、正式には、『メラコイデス』あるいは『マラコイデス』というらしいということが、後からわかりました。
今まで『ユウコ』と思っていた女の子に突然、「わたしの正式名称は、『ユウコイデス』なの。今日から『ユウコイデス』と呼んでね」と言われても、そうそう、自然に呼べるものではありません。
『メラコ』と呼び続けるか、『メラコイデス』と呼ぶよう努力するか、決めかねています。
ところで、今日、どうぶつの森のすれちがい通信が成功しました。
見知らぬ誰かから届いたメッセージボトルには、ピンクの『コスモス』が添えられていました。
DSには、確かに『コスモス』と表示されるのですが、『コスモスナンデス』とか、『コスモスザウルス』かもしれないと、疑ってかかるべきかどうか、判断に苦しんでいます。
人生は、悩みが多くて困ります。
Mori-Nie 2006/01/30 11:05 森にえさん、トルネード竜巻の歌詞、思いっきり違うよ
Mori-Nie 2006/01/30 11:05 ほんとだ……
Mori-Nie 2006/01/30 11:08 「できるかな」って、のっぽさんじゃないんだから
Mori-Nie 2006/01/30 11:09 ごめんなさい……