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高橋尚子:引退会見要旨(2) 3大会連続出場に「プロ高橋としては無理」

--長い間お疲れさまでした。今のお話の中で、具体的なきっかけ、もしくはいろんなことが積み重なって決断されたと思うのですが、きっかけはありましたか。

 脚が痛いとか調整不足とか、そういう決定的なことではなく、練習をしていく中で、これを「プロ高橋」といって皆さんの前に堂々と立てるのか。ここはこのくらい走っておきたい。やっぱり出ておけばいいやという走りはしたくない。自分の納得のいく走りが出来なくなったこと、そして精神的、肉体的に、これが限界なのかなと自分で感じたことが引退を思う原因となりました。7月8月、試行錯誤、練習の中で感じていたことです。

 3月の時点でもうそろそろ終わりかなという感じでやめるよりは、最後、限界かなというところまで練習が出来たかなという意味では、陸上人生に悔いはないと思います。

--「3大会連続のレースにはプロ高橋としては間に合わない」ということですが、ファンとしては3レースにこだわらず、万全な状態になってから一つでもレースを見ておきたいことにもなる。そこまで限界を感じていたのか。それともう一つ、チームQにはどう伝え、彼らからどう応えがあったのか。

 3大会出場ということに関しては……(詰まって)、やはりこう走っていく中で、ちゃんとしたプロの走りという練習をするには、気持ちも肉体的にもハイテンションというか、そこに自分を持っていかないといけない。(東京の)次の大阪や名古屋に移っていったとしても自分を追い込んでいけるか。時間があっても東京に関しても時間があるのに出来なかった。それを後のばしにしてもよけい周りに迷惑をかけるのではないかと思った。3試合を後にのばすことはプロ高橋としては無理なんじゃないかなあと。

 ただ、確実ではないのですが、ここで最後というのも悲しいので、ありがとうラン、さよならランのようなことが出来ないかなあと。あと、陸上はずっと大好きなので、50、60になってもジョガー高橋として走り続けていきたいと思います。

 じゃあ何が今のプロと違うのかというと、私は今まで陸上一本で、一日の生活や考えることが陸上が8割方占めていました。ほかの仕事をすることがほとんどなく、集中するときは山ごもりのようにアメリカにこもっていました。これを機に自分に出来るいろんなことにチャレンジして、また空いた時間に走って、東京、名古屋を連続して走る機会があったらチャレンジしたいと思います。

 チームQに関しては、自分がいろいろ悩み、寝られない日が続いたのですが、ようやく8月の終わりぐらいにチームのスタッフの人に話したのがはじめです。そのとき、東京・大阪・名古屋を走らないということは考えられなかったのですが、ちょっと弱音を吐くようなことを言いました。

 ただ、人生を賭けてついてきてくれた人にそんな弱音を吐いちゃいけないと言うことで、極力言わなかったのですが、8月の終わりに(代理人の)安野さんに自分の気持ちを言ったら、「おまえ何言ってるんだ、そんなことでどうするんだ」と怒られるかと思ったのですが、「もういいんじゃないの、よくやったよ」と声をかけていただき、そこでふっと体が軽くなったのを覚えています。

 そしてみんなに話したのが8月の終わりから9月にかけてです。チームのみんなは……今日も温かいメールをもらったのですが、「こういう場面に立ち会うことが出来てうれしい」と言ってくれ、「これからもジョガーでいるときはずっと支えるからね」と言われて、本当にいい仲間に巡り会ったなあと思いました。

2008年10月28日

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