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2008/10/27(MON)質問コーナーです
2008/10/18(SAT)口調バトン
2008/10/17(FRI)SS・アンケートに答…
2008/10/04(SAT)ウレシハズカシ朝ゴハ…
2008/09/29(MON)名前をください・1
2008/02/06(WED)皆さまファンタジーは…
2008/01/15(TUE)「約束」修正しました
2008/01/15(TUE)それからの夏(いちば…

 
 
2008年10月27日(MON)
質問コーナーです
こんにちは、いつもご愛読ありがとうございます。

今の連載は悲しくてつらい展開が続いているため、まとめ読みにしようとお考えの方も沢山おられるみたいです。

私も連載中のものには手を出さずに完結まで待ってから読む方なので(未完のまま放置の作品に泣きを見た苦い経験が……^^;)、お気持ちはよーく分かります。

突発的に更新できない事態とかが起こらない限り、毎日更新していきますと、今回の最終回は11月11日ということになりそうですね。いずれにしろ楽しんで頂ければ幸いです。

えー、いくつか読者の方からご質問を頂きましたので、ここで回答させて頂きますね。

■Maryさん
『凌駕さん(と美和さん)、陽介さんに息子さんたちの名前の由来を伺いたいです。
特に悠一郎さんは次男ですけど「一郎」ですよね。何か特別な意味が込められているのかと思うと、とても気になります。また神山三兄弟は一見して名前に統一性というか法則性がないので(例えば直貴のところはお父さん&弟みんな「貴」がついていますよね)、凌駕さんと美和さんがそう名付けた経緯を知りたいです。』

突っ込みキター! という感じですが……いやあー。^^;
えー……ちょっと凌駕ぁ!

凌駕「まず、篤志だが。財閥解体の時代、神山財閥が疲弊して経営状態が
悪化した時に在米ユダヤ人の実業家たちが無利子で莫大な融資をしてくれ、
神山グループとして再生するきっかけになったことがあるんだ(『御使い
は天に帰る』参照)。俺のオヤジがそれに酷く感動してな……孫の名前は
志が篤い、という意味で篤志にしろと言い遺したんだよ。俺は自分の長男
の名前くらい自分でつけたかったんだが、仕方なかった。
 で、次男の名前は自分の好きなものをつけたくてな。俺が最初に命名し
たんだから一郎でいいんだ。二郎なんて、二番目丸出しじゃ可哀想だろ?
悠、の字は「永(とこし)えに、末永く、いつまでも、不滅、物事に動ぜず、
ゆったりと落ち着いている」という意味があって俺の好きな言葉が多い。
だからあいつは悠一郎なんだ。合ってるだろう?
 で、飛鳥は美和がつけたんだよ……高校時代、美和と冴が初めて二人で
旅行をしたのが奈良の飛鳥京だ。万葉集の研究をしていたんだったな……。
有名な万葉学者の犬養孝にも二人で会いに行ったくらい入れ込んでてさ。
 で、どちらかが女の子を産んだら「明日香」という名にしようと思って
いたらしいんだが生まれたのは竜哉くんと篤志で、そのうちに冴は先に
逝っちまった。二人目も男で、俺が悠一郎と名づけただろう? で、次が
女なら明日香、男なら飛鳥にすると言って決めてたんだよ。そういうこと」

■なづきさん
『みなさんはあんこはつぶあん派かこしあん派か知りたいです。あと、
甘いものを食べたくなる瞬間はどんなときとか、甘党のニアはあんこを
食べたいかとか知りたいです。関係ないですが、私はこしあん派です。』

オークションがお好きということなので、彼らに訊いてみました。

正則 「俺はあんこ大好き! 断然こしあん。疲れた時にいいんだよ」
久能 「甘いものは、ちょっと」
美都里「あたしはゼッタイ粒あんよ! おつまみにも大福サイコー!」
西宮 「俺はどっちでもいけますね。でも、おつまみにはちょっと……」
仁科 「俺は……やっぱりこしあんかな。小野さんと合うなー」
諏訪 「あんこ? おえぇぇ! パスだパス! キモ!」
ヒース「僕は断然こしあんですね。練りきりとかも大好きです」
省吾 「あー……俺は粒あんかな。でも周平さんの作ったものなら
    もう何でも(ゴフッ)」
周平 「ああ? 俺に何か用か? あんこについて語りてぇのか?」
省吾 「周平さ……ごほがは、いきなり鳩尾に膝蹴(ぐふっ!)……」
巴  「周平と俺のコラボで生クリームどら焼きとか色々やろうぜ〜!
    あのさあ、来年のバレンタインあたりクーベルチュール使いの
    練りきりとか抹茶チョコシフォンとかやってみ……(ごはっ)」
周平 「おまえら、ゴチャゴチャうるせぇんだよ……(殺)」

ひ……必殺和菓子職人!

ニア 「え? え? アンコって何ですか?」
ジイド「豆を砂糖と煮たものらしいぞ」
ニア 「……美味しいのかな」
ジイド「どれどれ……おっ、これは美味い!」
ニア 「え、ほんと……あ、本当だ! 美味い!」
ジイド「パンにつけたら合うんじゃないか?」
ニア 「守護天使ザドキエルのアンパン、とか言って売ったら……」
ジイド「ラツィエルの雫もおまえが菓子屋にやらせたんだろ?
    おまえって意外に商売の才覚があるのかもな」
ニア 「騎士を引退したら何か商売をしようか?」

ら、らぶらぶ……。

■捺芽さん
『幼いころの自分の恋人の写真を見たらどういう感想を持ちますか。(できれば受け攻め両方)』

※とりあえずパン職人たち全員集合で!

直貴 「うわぁぁ〜! すっごい可愛い誰コレ! 女の子みたい〜!」
雪弥 「直貴……それは禁句だよ?(冷)直貴は予想通りの可愛い
    やんちゃ坊主だね。膝をすりむいてる写真ばっか」

智広 「いんやもう、こいつのガキん時の写真、カワイイの可愛くない
    のって! もーセーラー服とかスモックとか最高!」
飛鳥 「見せるんじゃなかった……ちなみに智広のはないね……」
智広 「確か2、3枚あったぜ。人が撮ってくれたやつ。ああこれ」
飛鳥 「痩せてる……(それに真冬なのに薄汚れた半袖)」
智広 「ああ、給食だけで栄養摂ってたからな。服も着たきり雀だし」
飛鳥 「でも可愛い……もっと早く出会いたかった……」

斎  「将、子どもの頃って小さかったんだ!」
将  「ああ、そうそう。中3の頃から急に背が伸びてさー」
斎  「でも、優しそうだね……」
将  「友だちには好かれてたかもな。それにしても斎、これはさぁ、
    言われたくないと思うけど、そのぉ……」
斎  「女にしか見えないって言うんだろ」
将  「いや……ていうか、天使? 妖精? 精霊?」
斎  「……馬鹿?」

国生 「ああ、今とあんまり変わらないな、基は」
基  「……国生さんも」
国生 「昔から髪も短いしな。でも基は今の方がいいぜ。あと十年
    経つと、今よりもっと良くなる」
基  「……?」
国生 「おまえはどんどん良くなる一方なんだよ。俺といるとな」
基  「――――(沈没)」

甲斐 「何だコレ、王子様かよ」
ユーリ「甲斐さんは天使みたいです!」
甲斐 「ドアホ! 坊主頭でランニング着た天使がどこにいんだよ!」
ユーリ「甲斐さんはこんなに幼い頃から僕の超ストライクゾーンだった
    んですね……(うっとり)」
甲斐 「おまえ眼医者行けよ……それかいっぺん死んで来い」

※ユーリって名前、使ってたんだ……。

■ゆういさん
『お忙しいと思うのですが学長が吸っていた「兎のタバコ」がきになって仕方ありません。そのくだりがある本を読んでみたいです。題名や作家名など教えてくださればうれしいです!!』

ベアトリクス・ポターのピーターラビットのお話の中に出てきますよ。
ttp://peterrabbitflowers.jp/prf/prf5.html
ttp://mitirin.exblog.jp/i11
ベンジャミン・バニーのお母さんがうさぎたばこを作って売っている
ようです。(URLの頭にhをつけて行って見て下さい)

■某さん
『ずっとファンタジーばかりで残念です。現代ものはもう書かないのですか?』

 がっかりさせてしまって申し訳ありません……! 現代ものは書かない
なんてことはありませんよ〜。ただ今はこちらのシリーズを全て踏破して
書き上げてしまわないと落ち着かないといいますか……書きたくて仕方ない
ものですから、失望させてしまって本当に申し訳ないです。

・蜜月旅行のお話(ヴァンハイム)
・マイアとデュー、ライのお話
・第二王子サウルのお話
・ガルシアのお話(エフタ/アズール王子とも)
・レンのお話(ジイドと騎士剣技戦で戦ったエフタの騎士)

……などなどで、まだまだ色々書きたいものはあるのですが、一旦こちらの
世界を出て現代モノに戻って来てしまうと、なかなか今度は帰れなく
なってしまいそうで、とにかく一気呵成にやるしかないかと(汗)。

 でも、こちらに書き始めたものなど、時々現代モノも萌え上がったら
その都度書きますので! たまに覗いてやって下さいませ〜!

■わさびさん
『同人誌は出されないのですか? 携帯サイト開設のご予定は?』

 同人誌は今後も出す予定はないです。時間・能力・経済力を鑑みても
私には無理だと思います……ゴメンナサイ(;_;)。携帯に関しては瀬戸内
寂聴さんも挑戦されたのだから私も携帯で小説書いてみようかな! とか
思いましたが、無理でした……。
 サイトの携帯適応化も考えてみましたが、「PC仕様のサイトを見られる
アプリがあるから無理してサイトを携帯用にしなくても大丈夫ですよ」と
言って下さった方が何人かおられたので、「そっかあ、じゃあ見られるん
だ! ならいいや〜」ってことにしてしまいました……でもパケ代かかる
んですよね? ゴメンナサイ……!

■daigonさん
『18禁シーンを書く時に、工夫していることや気をつけていることはありますか?』

 えーと……やることはどのカップルも基本的には同じなんですけれども、
二人の性格や背景、経緯を考えれば自ずと違いが出てきますよね? 篤志
とアッシュのHは直貴と雪弥のものとは全く違ってきますし、正則と久能
のHはユアンとセラフィーユのものとは根本的に違うわけでして。この
二人の場合はどんなかな、と考えて書き分けるのはすごく楽しいですね。

 あと、無理矢理……というのはストーリーの上で必要でない限り書かない
と思いますし、書いても否定的な見方になってしまいますね。あくまで
相手の人間性を尊重し、敬意を払いながらするHが良いと思います。

■fantaさん
『両性具有や異世界トリップは書かないんですか?』

 以前は私、ファンタジーモノが苦手で読まなかったんですが、今は色々
なサイトさんで両性具有や異世界トリップを楽しませて頂いています♪
 私自身は男であることによるあれやこれやを考えるのが楽しいので、
今まで両性具有について考えたことはなかったです。異世界トリップは
すごくそそられますが、私の力量では無理ですぅぅぅ!
 直貴が異世界の龍王国にトリップし、そこでパン職人としての腕を発揮
して人気パン屋を開き、王子様に見初められる! とかいうのは何かの
イベントで書けるかもしれませんが、ダメダメそう。^^;
 異世界トリップは「特殊能力」→「偉い人に見初められる」という王道
がとても面白くて読んでいて飽きないですね。


※色々と楽しいコメント、質問をありがとうございました!
コメント(1) [10]
 
 

 
 
2008年10月18日(SAT)
口調バトン
可那他さんから回ってきました〜。
なになに……?

>【口調バトン】
>ルール…指定されたキャラの口調で質問に答えていくバトンです。

ほほう……?
可那他さんからのご指名は火神陽介(『水面下のキス』シリーズ)。
こっ、これはっ……なんという難しいことを……orz
口調というか陽介がお答えするってことで、頑張ってみます。

■誰に回すか5人決めて下さい。
陽介
「あー、5人に回す? チッ(舌打ち)面倒くせぇ……
ここの管理人はイタイ奴だし鬱陶しいから5人は無理だろ。
このサイトのリンク先さんで、先方も俺のこと知っててくれてるのは
せいぜい……『pieces of eight』の船長さんと『G×G BOX〜ゲンキニ
ナルクスリ』の飯田さんくらいじゃねぇの? それ以外のリンク先の
人たちは俺の話とか読んでないかもなぁ……オヤジ話だし。
リンクしてないけど隠れて付き合って下さってる方々(ニヤリ)は
知ってて下さってるかもしれないが、ここじゃお名前を出すわけには
いかないね。あ、船長さんと飯田さんは超多忙だからバトン回すの
なんぞ絶対無理。このバトンはここで永遠にお蔵入りだ。悪いな」

■お2人との出会いは?
陽介
「こっちから管理人がお邪魔して、一方的に惚れまくった挙句、
つきまとったんじゃなかったか? ご迷惑も顧みず、リンクまで
貼っちまってさ。お気の毒に」

■お2人との共通点は?
陽介
「共通点? 先様に失礼だぞ……腐敗した脳を持ってるってこと
くらいじゃねぇの。あ、あとオヤジスキーかもなー。ははは」

■お2人の良いところは?
陽介
「これも勿体ねぇ質問だな。船長さんはさ、屈託ないっていうか
裏表がないよな。それがあのヒゲメガネ漫画に表われてんだよ。
オヤジくさいくせに誰よりも乙女。船長の描く絵のちょっとした
仕草や指先やスジなんかが激萌えだと管理人は惚れ抜いてたな。
そういえば、時々あの眼鏡がいい顔しててさ……俺も惚れそうに
なったことがあるぜ。
 飯田さんに関してはみんなの方が良く分かってるだろ。あの
人の書くものはさ、本当にその世界がどこかにあって、その登場
人物たちが本当に今この瞬間も生きて何かしてるんじゃないかって
気がしてくる感じっていうのかな……一人一人のキャラが生きてて
読んでると幸せな気持ちになるところかもな。自慢じゃないが
俺はジジョーズと飯田さんの同人誌は全部持ってるぞ。りょーがに
手を回させてゲットした俺の宝物なんだ」

■お2人は自分の事どう思ってる?
陽介
「管理人のことを? あー……管理人はお2人ともお目にかかった
ことがあるらしいが、お2人ともすげぇ美人らしいな。管理人は
冴えないオバちゃんだし、卑屈で品がないからもう二度と会っちゃ
くれねぇだろうけど……せめて素早くレスメール返すとかさ……ま、
呆れておられることには違いないが、人格者のお2人のことだ、
仕方なく付き合って下さってるんだと思うぜ」

■このお2人とは今後どうしていきたい?
陽介
「どんなに迷惑がられてもついていくつもりなんだろうな……
あのオバさん、しつこいから」

■お2人とは喧嘩した事ある?
陽介
「飯田さんには色々教育的指導をしていただいているらしいぞ。
喧嘩ってのは、対等じゃなきゃできねぇからな……喧嘩なんて
おこがましいこと、アレには無理だろ」

■それでは指定をどうぞ。
陽介
「あー……俺が読んでみたいなーと思う作者さんと人物はいるけど
さあ。人物でいうと電柱天使系の秋○さんとか、拾い者系の仁木さん
とか、リトル系の一加ちゃんとか、船長さんちの眼鏡とか、絶対有り
得ないけど有名人系の○王くんとかね。皆さんお仕事が忙しいし
ここに来てこれ読んで下さってるワケもないし、指定っちゅう言葉
自体が虚しくなるな。残念でした」

※最後に、バトンを下さった可那他さんへ。

陽介
「おーい可那他ー、答えてやったんだから今度ワインでも奢れよ!
いつも美しい俺様のイラストをありがとな。今度こっちに来た時は
薔薇屋敷に遊びに来いよ。美味い赤ワインをりょーがに用意させて
おくからさ♪ S君の話もまた聞かせてくれよな〜」
(凌駕が来て不機嫌な顔で「S君って誰だ」と問い詰め始める)

ということで、回らないバトンでした。失礼いたしました……。

※ちなみに、色々な憶測が飛び交う「有名人系の○王」くんですが、
芸能人とオタクのラヴ話に出てくるモデルの淫乱えー加減一途攻の
山○くんのことです。ご存知の方はご存知かと思いますが……。
好き過ぎて死にそうなんです。○王くん、どうもありがとう!!
コメント(6) [9]
 
 

 
 
2008年10月17日(FRI)
SS・アンケートに答えて下さい
問1
男同士の恋愛について、あなた自身はどう思いますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


□ 冗談じゃない、気持ち悪い
□ そういうのもアリだと思うけど自分は別
□ ちょっと興味あるかも
□ 実を言うと男でもオッケー
□ 男しか好きになれない体質だ

問2
あなたの親しい友人がゲイだったと知ったら、どう思いますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


□ 知った時点で友だちとして付き合い続けるのは無理
□ 自分に矛先が向かない限り友人関係は変わらない
□ ちょっと意識してしまうかも
□ 自分も男オッケーだとカムアウトして盛り上がる
□ セフレになってもらう
□ 即座に告って恋人に昇格する

..................................................................

「ちょ……なんだよコレ!」


 昼休みの男子校の教室で、配られたアンケート用紙の内容を見たクラスメートたちが絶叫するやら大ウケするやら、2年A組は蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。

 そのアンケート用紙を配った川端高広は、耳朶まで真っ赤にして「仕方ねぇだろ、俺の従兄弟が大学の心理学の卒論に使いたいってんだからよ!」とふて腐れている。

「なに、それでオマエ協力することにしたわけ?」
「協力報酬とかないのかよ」
「……分かってるよ」

 催促されて鞄から取り出したのは、色とりどりのチューインガムだ。高広の机いっぱいにブチまけられたガムに、一斉にクラスメートの手が伸びる。それを制して、しっかり者の高広は「アンケ書いた奴だけな!」と叫んだ。

 しばらくして四十人のクラスメートのうち、三十二人がアンケートと引き換えにガムを持って行った。高広が周囲を見回すと、窓際の席に座ったサッカー部の辰巳 彰(たつみ あきら)が机に頬杖をつき、アンケート用紙を見下ろして、うつらうつらと舟を漕いでいる。
 サッカー部は試験の準備期間と試験中以外はいつでも朝練があり、昼休みの辰巳は大抵居眠りをしているのだ。

 高広は席を立ち、残りのガムを掴んで辰巳の席に歩み寄ると、「辰巳、書けた?」と声をかけた。辰巳はハッとしたように顔を上げ、急いで最後の項目にチェックを入れて用紙を見えないように二つ折りにし、「ほら」と高広に手渡した。

「ガム、どれがいい?」
「あー……んじゃ、これ」

 辰巳が取ったのは皆に一番人気があり、最初になくなってしまったミントグレープ味だ。高広は辰巳がそれを好きなことを知っていて、一つだけ隠しておいたのだ。

「あんがとな」
「おう」

 予鈴が鳴り、喧騒に包まれていた教室に少しずつ静けさが戻って来る。

 B4サイズの茶封筒に収めたアンケート用紙を丁寧に鞄に入れて、高広は高鳴る胸の鼓動を抑えようと、自分もガムを一つ手に取った。授業中に噛んでいるのがバレたらまずいけれど、今はそういうことを言っていられる状況ではない。

 みんなには、全てチェック方式で名前や字を書き込む項目はないから、そのアンケート用紙が誰のものなのかは分からない、だから安心して本当のことを書いてくれと頼んだ。仲間同士でふざけ合って見せっこしたり、そういうことをしない上での統計調査を従兄弟が求めていると言い、「めんどくせーなー」とか「うお、すげぇ質問!」とか言いながらも、けっこう真面目に書いてくれた連中には申し訳ないのだが……

 従兄弟の卒論だなんて、そんなのは大ウソだった。

 本当は、たった一人……あの辰巳 彰の性的嗜好が知りたい、その目的を満たすためだけに考えに考え抜いた高広の大バクチだったのだ。辰巳から受け取ったら、その用紙の隅にそっと爪で印をつけ、後で分かるようにするつもりだった。
 しかし辰巳がわざわざ二つ折りにしてくれたお陰で、マーキングする手間が省けた。これはガム代とアンケート用紙のコピー代のため、小遣いを節約して貯めた甲斐があったというものだ。

 次の授業は眠気を誘う物理だが、今日は興奮して居眠りさえできそうにないな、とほくそ笑んだ時。

「これ」

 高広の真後ろの席に座っている学年トップの秀才、田野倉 翔(たのくら しょう)が高広の背中越しにアンケート用紙を差し出した。思わずビクッてしまった高広だったが、「あ、さんきゅ」と礼を言って振り向き、残りのガムを田野倉に見せた。

「ご協力どうも。どれにする?」

 すると田野倉は高広の手の中のガムを見て片方の眉を上げ、フレームレスの眼鏡をクイと指先で押し上げて「……じゃ」とグレープフルーツ味のガムを取った。

 前に向き直ってから、高広は几帳面に四つに折り畳まれた手の中のアンケート用紙を見た。サッカー命のスポーツマンで日焼けした茶髪の辰巳と、サラサラで真っ黒な髪の優等生・田野倉は正反対な印象のクラスメートだ。
 その二人の書いたものだけが特定できる状態で、すべて今この手の中にある。

 その日、家に帰って一目散に二階の自分の部屋に駆け上がり、逸る思いで鞄からアンケート用紙を取り出した高広は、ドキドキしながら辰巳の回答を見た。

問1
男同士の恋愛について、あなた自身はどう思いますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


答えは……「そういうのもアリだと思うけど自分は別」。

「うわ、ビミョー……」

問2
あなたの親しい友人がゲイだったと知ったら、どう思いますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


答えは……「自分に矛先が向かない限り友人関係は変わらない」。

「だよなあ……これってすごくフツーの高校生男子の感覚だよな……」

 期待していたわけではないけれど、辰巳に一年以上も片想いをしている真性ゲイの高広には、ちょっとキツい。望みは全くないようではないけれど、おそらく無理なのだろう。
 ネットで知り合ったメル友のゲイ仲間は、ノンケに恋をする不毛さをつらつらと語っては「あきらめた方がいいよー」といつも高広を慰めてくれていた。

最後の質問は、これだ。

問5
あなたには、いま好きな人や付き合っている人がいますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


□ 付き合っている人も好きな人もいない
□ 好きな異性がいる
□ 好きな同性がいる
□ 付き合っている異性がいる
□ 付き合っている同性がいる

 辰巳の答えは、「付き合っている人も好きな人もいない」だった。これはこれでホッとしたし、嬉しかったのだが……高広の一世一代の大バクチは、辰巳を諦めることにも思い切って告白することにも役に立たない、全くの無駄骨に近い結果に終わった。

「はーあ……」

 他のクラスメートたちのアンケート結果になんて興味がないので、それは封筒に突っ込まれたままだ。しかし、ふと思い立って寝転んでいたベッドから起き上がり、もう一つの……四つ折りにされたアンケート用紙を手に取る。

「田野倉は……どれどれ?」

 真面目なんだけど意外と人あしらいが上手く、生徒会の会計なんかをやっている田野倉は、歯に衣着せない物言いとクールな性格で人望が篤い。成績はいつも学年トップで、振り返るとそこにいる田野倉に、忘れっぽい高広は何度ノートを借りたり宿題を見せてもらったりして助けられたか分からない。

問1
男同士の恋愛について、あなた自身はどう思いますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


田野倉の答えは、「実を言うと男でもオッケー」だった。

「ええええええええええ!」

 思わず絶叫してしまった高広に、廊下を隔てた中三の妹の部屋から「うるさい!」という怒号が飛んだ。受験で気が立っている妹を怒らせると後が厄介なので、高広は慌てて口を手で抑えた。

「マジかよ……」

 ドキドキしつつ次の質問を見ると、それもまた驚愕に値するものだった。

問2
あなたの親しい友人がゲイだったと知ったら、どう思いますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


 田野倉の答えは、「即座に告って恋人に昇格する」だった。

 え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ーーーーーーー!!

 そしてとどめは最後の質問。

問5
あなたには、いま好きな人や付き合っている人がいますか。
当てはまる項目一つにチェックして下さい。


 田野倉は、「好きな同性がいる」にチェックを入れていた。

「ど……どどどどーしよう……」

 クラスメートには、アンケート用紙はそのまま従兄弟に渡すので、自分は中身を見ないと言ってある。見たってチェックしかされていないのだから、どれが誰のかなんて分からないのだが……

 とんでもない秘密を握ってしまった気がする。

 念のため他のクラスメートのアンケも見てみた。中に三人、男同士の恋愛に「ちょっと興味あるかも」と書いた奴がいたが、誰だか分からないし、おそらく大した意味はないだろう。それは他の質問との兼ね合いで察すると理解できた。

「田野倉……好きな同性って誰だよ……」

 呆然として、床に散乱したアンケート用紙を掻き集めて封筒に入れようとした時。

 田野倉のアンケート用紙の一番下の余白に、小さな字で何か書かれていることに高広は気づいた。

『あんまり見てるとバレるぞ』

 な……
 何ですかコレはーーーーーーーーーー!!

 何を? 何が? どういうこと?

 全身から噴き出すイヤーな汗。
 田野倉は高広の真後ろだ。自分でも自覚しているけれど、授業中に高広はどうしてもチラチラと窓際の辰巳を盗み見てしまう癖がついてしまっているのだ。

 も……もしかして、バレてる?

 それきり氷の彫像と化してしまった高広のクラスにおける最大関心事は、この日から辰巳でなく自分の真後ろの視線になってしまった。

 浅知恵のくせに策略なんか巡らせるものではない、そう思い知った秋の日のことだった。





※おしまい。
(続く……かも知れないけど続かないかも知れない、道を歩いていて白いシャツの眩しい高校生とすれ違い、フト思いついたネタでした。^^)
コメント(14) [8]
 
 

 
 
2008年10月04日(SAT)
ウレシハズカシ朝ゴハンノオハナシ
ファンタジー小説
Prescription for Lovesickness SS
(※第二部最終回の後のお話です。本編及びニアたちのお話を未読の方は、
そちらから先にどうぞ)




婚姻の儀から一夜明けて、新しい朝。

 しばらく心地良いまどろみを楽しんだ後、空腹に耐えかねたらしきジイドがベッドを降りて台所に向かった。
 シーツに伏したままのニアは、ジイドの逞しい裸身を見上げて思い切り真っ赤になる。何故なら、その筋肉の盛り上がった広い背中のところどころに、引っ掻き傷と思われる赤い筋が刻まれていたからだ。

 ジイドは何も気づかない様子でローブを羽織り、寝室を出て行った。ニアも身体を起こそうとしたが、あらぬところに未だかつてない違和感と鈍い痛みを覚え、「う、」と呻いて再びシーツに伏してしまった。

 昨夜(といっても今朝に近い未明だ)、ジイドは半ば意識を飛ばして朦朧としているニアを抱き上げて浴室に連れて行ってくれ、湯の中でニアの身体を清めてくれた。その際に何度もジイドの精を注がれた秘所を奥の方まで洗われて、死ぬかと思うほど恥ずかしい思いをした。
 けれど「やめてくれ」と言おうにも嬌声を上げ続けた喉は嗄れて声も出せず、熱を持って敏感になった場所を弄られるたまらない感覚に改めて反応してしまいそうになって、ニアはひたすら唇を噛んで耐えるしかなかった。

 ジイドは湯から引き上げたニアを湯上げ用の布に包んで寝台へ行き、いつの間にか取り替えたシーツに寝かせてくれ、それはそれは甲斐甲斐しく世話をした。
 それからニアの隣に横たわり、その慕わしく筋肉質な腕でニアを抱きかかえてくれた。疲れ果てたニアは途切れ途切れの意識の中で何度かジイドに「ごめん」とか「ありがとう」とか言ったのだと思う。
 今にして思えば何と大事にしてもらったことか。
 本当は朝食くらい自分が用意してやるべきだったのに、とニアは何もかもジイドに任せきりの不甲斐なさを恥じた。けれど身体は鉛のように重くて動かない……情けない。

 しばらくすると、白いシャツにズボンを身につけたジイドがトレイに食べ物を載せて持って来て、ニアの横たわる寝台の傍のテーブルに置いた。
 柑橘を絞った果汁と凝乳、そして丸いパン。ジイドは枕の他に毛布を丸めたものを使ってニアをもたれさせ、夜着を着せて肩掛けを掛けてやると、そのトレイを脚を伸ばしたニアの膝の上に置いた。
 それから自分の分のパンやら卵やら色々なものを載せたもう一つのトレイを持って来てそれをテーブルに置き、「さあ、食おう」と言う。
 もうすっかり陽が高くなってしまっているので、朝食というより昼食に近い。

「もう起きられるよ……」

 そう呟いた自分の声が他人のもののように聞き慣れない。ものすごく掠れているのだ。

「そうか? だが、ひどくダルそうだぞ。ゆうべは俺、途中から完全におまえを気遣うことを忘れて暴走しちまったからさ……硬い椅子に座らせるのは可哀想だと思って、」

 飄々と言うジイドの言葉に、ニアはかあああっと真っ赤になり、羞恥のあまり両手で顔を覆ってしまった。しかしジイドは自分のカップに果汁を注ぎながら満面の笑みだ。

「おまえのお母さんが用意しておいてくれたお陰で、食品庫にも色々詰め込んである。このパンは台所のテーブルの上の籠に入っていて、『婚姻の日の翌朝に食べるように』と書いたメモが添えてあったぞ」

 ほら、と渡されたメモを顔を覆っていた手を外して受け取り、ニアは目を落とした。

『ニア、ジイド、婚姻おめでとう。このパンはトゥルーンの風習で、新婚初夜の翌朝に食べることになっているプリスカというものです。花嫁の母親が作って前夜に用意しておくことになっているので、ここに置いておきます。最初の一口をちぎったら、お互いに相手の口に入れてあげるのですよ。こうすると生涯幸せな夜を迎えられるという言い伝えで、私も自分の婚儀の後には亡くなった母に作ってもらったのを食べました。私たちは昼にはこちらを発ってキッカに帰りますが、ジイドと仲良く暮らすのですよ。愛する息子たちの幸せをいつも祈っています。母より』

 母さま、としんみりした気持ちになっていたニアは、「それじゃニア、食べよう」と言うジイドの声に顔を上げ、ピキッと固まった。
 ジイドはそのプリスカという丸パンを一口大にちぎると、ニアの口元に近づけてきたのだ。プリスカは表面は何の変哲もない丸いパンなのだが、その中がプリスという果実の果汁を入れて練ってあるため、ほのかなピンク色に染まっていた。

「口を開けろよ、ニア」

 どうした? とジイドは不思議そうに首を傾げ、平然としている。ニアはしかし身悶えしながら布団の中に潜り込んでしまいたいと思うほど恥ずかしくて、でも膝の上にトレイが載っているからできなくて、ジイドがびっくりするほど真っ赤になって固まってしまっていた。
 ふ、とジイドが笑う。それも、どうしようもなく愛しげに。

「いや、新婚第一日というのはこんなにも初々しくて幸せなものなんだな。だがニアが相手なら、五十年経った後でもこんな風に幸せな朝を迎えられると俺は断言できるぞ」

 そんなジイドの言葉がとどめを刺したようにニアは気が遠くなり、せっかくの朝食もロクに食べられたものではなかった。
 でも、プリスカのパンをジイドの口に入れてやることだけはできたので、きっと五十年後も甘い朝を迎えられるはず。



 ちなみにその日の夕食もジイドが野菜や鳥肉を煮込んだおじやのようなものを作ってくれたので、それをテーブルに差し向かいで食べた。
 トゥルーンでは新婚の決まりとして翌日は誰ひとり新居を訪ねてはいけないことになっているので、二人はとても静かに水入らずで過ごした。

 翌日のヴァンハイムへの旅のため、二人は早くに寝室に入ったが、その夜はもちろん何もしないで幸せに眠った。
 しかしヴァンハイムに持って行く荷造りをしている時、荷物の中にジイドが例のラメールからの贈り物の壜を大事そうに入れているのを見て、ニアはまた真っ赤になって頭を抱えてしまったのだった。






*** おしまい ***




「恋患いの処方箋 U」最終回へ


※超絶スイートなエピソード、失礼いたしました。^^;
 いずれファンタジー目次の方にSSとして移しますね。

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