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産科の無過失補償、中医協で初めて議論

 来年1月から開始する「産科医療補償制度」への加入を促進するため、「ハイリスク妊娠管理加算」などの施設基準の見直しについて審議した10月22日の「中央社会保険医療協議会」(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)での委員の発言をお伝えする。(新井裕充)

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 「産科医療補償制度」は、通常の妊娠・分娩(ぶんべん)にもかかわらず子どもが重度脳性まひになった場合に、医療側の過失を裁判で証明しなくても補償金が支払われる「無過失補償」で、救急搬送された妊産婦の受け入れ困難などの問題の背景にある産科医不足を解消するのが狙い。

 厚労省は、「産科医不足の原因は訴訟リスク」との考えから、産科の医療事故をめぐる紛争の解決を裁判に委ねず、民間の損害保険を活用した「無過失補償」によって「訴訟リスク」を軽減し、産科医不足の解消を図ろうとしている。

 しかし、「この制度で救済されるのはほんの一部」「補償金の掛け金による収入は年間約300億円で、うち150億円が余る」など、さまざまな批判が相次いでいる。社会保険庁の解体に伴って削減される職員の「行き場」となる厚労省の関連組織の経営安定化を図ろうとする厚労省の思惑も見え隠れする一方、崩壊の危機に瀕している産科医療の現状を改善するため、「無過失補償制度の創設を急ぐべき」との意見もある。

 制度を運営する財団法人・日本医療機能評価機構によると、同制度に加入済みの分娩機関は10月24日現在3088施設で、加入率は94.5%に達した。補償金の財源となる「掛け金」3万円を手当てするための「出産育児一時金の引き上げ」も既に決定している。制度の本格的な実施に向けた準備が急ピッチで進む中、「産科医療補償制度」が初めて中医協で議論された。

 厚労省が提案したのは、リスクの高い分娩を扱う医療機関が算定する「ハイリスク妊娠管理加算」と「ハイリスク分娩管理加算」の施設基準に、「財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度標準補償約款と同一の産科医療補償約款に基づく補償を実施していること」との要件を加えること。
 委員からは、「民間保険に入っていることを診療報酬の加算要件にすべきではない」「(産科医療補償)制度そのものが、まだ完成していないにもかかわらず診療報酬上の手当てをすることは時期尚早ではないか」などの異論があったため、継続審議となった。

……………………………………………………………………………………………………

【遠藤会長】
 
産科医療補償制度が創設されるわけですけれども、その促進のために診療報酬上手当てをしたらどうかという提案。具体的には、「ハイリスク妊娠管理加算」と「ハイリスク分娩管理加算」の要件の中に、この補償制度に入っているということを入れたらどうかという提案ですが、いかがでございましょうか。西澤委員、どうぞ。

【全日本病院協会会長・西澤寛俊委員】
 
私たちの団体も、この制度を推進する立場ではございますが、ちょっと現状について、いくつか教えてください。いま、対象となる医療機関がどの程度の数あって、現在の加入状況、それから、「ハイリスク妊娠管理加算」、「ハイリスク分娩管理加算」それぞれの点数を取っている医療機関数、さらに、その医療機関のうち、この制度に入っている医療機関数、入っていない医療機関数を教えていただければと思います。

【遠藤会長】
 
すぐ答え出ますか? では事務局、お願いいたします。

【厚労省保険局医療課・佐藤敏信課長】
 
平成20年の7月1日現在、ちょっと古い数字かもしれませんが、まず(ハイリスク)妊娠管理加算ですけれども、全国で1722(施設)届け出があります。一方、(ハイリスク)分娩管理加算は623(施設)と聞いております。それから、今ご質問のありました「産科医療補償制度」の未加入医療機関数は、それぞれ、61(施設)、14(施設)と聞いております。冒頭に申し上げました1722と623に対して、61と14が未加入ということで、未加入の割合は、それぞれ3.5%と2.3%と承知しております。

【遠藤会長】
 
西澤委員、どうぞ。

【西澤委員】
 
今、もう一つ、質問があったのですが。この、管理加算を取っている…。

【遠藤会長】
 
あの、質問の残りが、まだ事務局から…、すみません、お願いいたします。

【医政局】
 
医政局の医療安全室長でございます。現在の全般の加入状況について、ご報告申し上げます。まず、病院・診療所につきましては、日本産婦人科医会の調べでございますが、分娩医療機関が2839(施設)ございまして、このうち、「加入をする」と言っていただいたところが2704施設でございます。現在のところ、加入率としては、95.2%となっております。助産所につきましては、427施設のうち367施設で、加入率は85.9%。全体では、94.0%の加入率となっております。

【遠藤会長】
 
西澤委員、どうぞ。

【西澤委員】
 もう一つ質問ですが、この施設基準に新しく追加する文章の中に、(財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度標準補償約款と)「同一の」(産科医療補償約款に基づく補償を実施していること)という言葉がございますが、これはどういう意味でございましょうか。

【遠藤会長】
 
「同一の」の中身でございますけれども。では事務局、どなたでも結構です。

【佐藤課長】
 この文章はもともと、制度を検討している医政局の制度設計の中で使われている言葉を使ったものでございまして、「約款と同一の」ということでございまして、財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度の中で、標準補償約款というのを決めているわけですが、その約款と同一の内容の約款で補償を実施していること、こういう説明になります。

【遠藤会長】
 
ありがとうございます。西澤委員、よろしいですか? 「内容が同一だということだ」というご説明だったと思いますが。

【西澤委員】
 ということは、(日本医療)機能評価機構でなくても、同じ約款がある組織ができたとしたら、あるいはあったとしたら、それでも構わないということでしょうか?

【佐藤課長】
 
私ども、医政局からは、「そうだ」と聞いております。

【遠藤会長】
 
よろしいですか? それとも、その辺をもう少し、後日、明確な…。西澤委員、どうぞ。

【西澤委員】
 
いくつか整理しますと、まず、例えばこの点数(施設基準)を入れたことによって、「ハイリスク妊娠管理加算」は61(施設)が、もしかしたら点数を取るために入るかもしれない、あるいは、(ハイリスク分娩)管理加算は14(施設)入るかもしれない。また、この二つはダブっていると思います。合わせたところで60か70(施設)、入っていないのが135(施設)とすると、これ(施設基準見直し)があることによって、100%にはなり得ないということが一つの事実だと思っております。
 それともう一つ、「同一の」について、今回の制度はある意味で、わたしから見ますと、民間の医療保険に加入することというものが、この公的医療保険の加算の施設基準の条件になっているということでは、ちょっと、(診療報酬制度の)在り方としておかしいのではないかなと考えております。
 正直言いまして、わたしたちも、この制度は、無過失補償というのは大事だから進めるということでやってきたのですが、そういう立場は変わりません。(加入率を)100%にするためにあらゆる努力をしようと思っていますが、片方で、中医協委員として、診療報酬制度の在り方、あるいは公的(医療)保険の在り方というものを考えたときに、民間保険に入っているということを条件にするということは、どう考えてもわたし自身は違和感があるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

【遠藤会長】
 
事務局、どうぞ。

【佐藤課長】
 
(配布資料の)「総―4第2」の「課題」の最後のところにございますように、この話(施設基準の見直し)の発端は、そもそも、社会保障審議会の関係部会(医療保険部会)において、委員の中から診療報酬上の対応を求める意見があったということが発端だと承知をしておりまして、その意味で、皆さま方の、ある程度、ご理解の上に、このアイデアが乗っかっているということを、まずご承知おきをいただきたいと思っております。
 例えば、医療課でありますとか、この中医協をつかさどっている、担当分野であるわたしどもの発案ではないということが、まず第一点でございます。
 それから、「診療報酬になじむかどうか」という点では、直接的に患者さんの病気への対応、治療、あるいは健康の保持増進につながるということであれば、一般的に診療報酬上の項目になり得るのでしょうが、直接的に患者さんの病気の治癒に関係しないものであっても、これ一概に診療報酬の項目にならないということでもないし、これまで項目になってきたものもあるんだろうと思います。
 それから三つ目は、医療課が言う話ではないかもしれませんけれども、昨今の産科をめぐる事件、事例、あるいは世論、こういったことを勘案しますと、産科の中で特にこう、トラブルというわけでもないんですが、重篤な障害に悩んでいらっしゃる、あるいは、産科の処置をめぐってさまざまな議論が巻き起こっているという中で、非常に社会的な意義が深いという観点から、こういう制度が発案され、まさに西澤委員からお話がありましたように、(加入率が)100%でないというのは、むしろ、そういう意味では、患者さんや国民の立場に立てば、「それでいいのか」というご懸念もありましょうから、「これがすべて」とは言いませんが、ホームページで(の加入呼び掛けなど)ご努力をいただくというようなことがある中の一つとして、診療報酬上もそうした形で、支援なり、応援なり、後押しができるのであれば、という考えだろうと思いまして、今日は提案させていただいた次第です。

※ 続きは、こちらをご覧ください。
 http://news.cabrain.net/article/newsId/18876.html


更新:2008/10/28 16:59   キャリアブレイン

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