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棟方志功、成田亮、ナンシー関に奈良美智。個性きわだつ面々は、いずれも青森県の出身者。青森県立美術館に続き、2008年春には十和田市に現代美術館がオープン。アートに無縁な人でも、「すごい!」「うぉ!」となる面白い展示が行われている。青森は今やアート最前線な県でもあるのだ。
と、考えてみると、温泉施設もどこかアーティスティック。青森県は温泉地数、湧出量とも全国4位。日本指折りの温泉県である。中でも人口当たりの公衆浴場の数はダントツ1位。十和田市現代美術館から歩いて行ける距離にも温泉銭湯「みちのく温泉」がある。浴槽のまん中に白いヴィーナス像がどんと据えられ、温泉アートのテイストぷんぷん。お湯はかけ流しで、よくあたたまる。
一方、黒石温泉郷の「温湯(ぬるゆ)温泉」は、温泉街全体がアートのよう。共同湯「鶴の湯」を取り囲むように、“客舎”と呼ばれる宿泊施設が建つスタイル。昔ながらの温泉街のありようがぽっかりと残されている。共同湯は7年前に建て直され、近代的で入浴しやすい。漆喰の壁に描かれた鶴の彫刻も見事なできばえ。お湯はざぁざぁとかけ流され、入浴感もパワフルだ。「ちょっと値上げしたんです」と言う入浴料は大人200円。次々に地元客が訪れていた。
ところで十和田から黒石へと抜ける途中、美しい景色に出あった。一つは十和田湖の神秘的な景観。もう一つは岩木山ののびやかな姿。湖と山のダイナミックな美しさ、アートな心はこんな景色の中ではぐくまれるのかもしれない。
「ようこそ、美術館へ!」と出迎えてくれているような、韓国チェ・ジョンファさんのフラワーホース。この先がエントランス。街と建物が一体化した開放的な建築だ。
巨大化したハキリアリのオブジェ。日本の椿昇さんの作品。一瞬、ぎょっとするがよく見ると愛らしい。館内作品も素晴らしいのでぜひ足を運んでみて。
外壁も床も階段の壁も屋上も作品の一つ。こちらは階段の壁。コスタリカのフェデリコ・エレーロさんのペインティング。目が印象的でした。
美術館のカフェ。日本の織物をモチーフに、台湾のマイケル・リンさんが描いたもの。天井は吹き抜けで9メートル。明るいカフェで、アフォガード、ブラッドオレンジジュース、ペペロンチーニなどを。
「お湯がいい」と地元でも評判の温泉銭湯。中のヴィーナス像はぜひ皆さんの目でお確かめを。お湯は塩化物泉。よくあたたまる。
400年以上の歴史がある温湯温泉。共同湯を取り囲む木造旅館も風情満点。大火ののち、明治から大正にかけて建てられた宿が多い。
共同湯「鶴の湯」の外壁には、鶴が温泉で傷をなおし、飛び立つという温泉発見ストーリーの彫刻が描かれている。地元の方の作品。
鶴の湯の館内。この地が発祥の温湯こけしが飾られている。お湯は塩化物泉。透明だが少し緑がかった色のお湯は、湯量豊富なかけ流し。気持ちよく入浴できる。
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次回更新は11月7日予定です。お楽しみに!
温泉ライター歴19年。国内外で浸かったお湯は千湯以上。肌でpHを感じ、飲んで湯の成分を確かめるのを信条に、温泉行脚の日々を過ごす。温泉入浴剤にもこだわりあり。
旅行誌などで温泉記事を執筆中。日本温泉地域学会員
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