ということは、今日は休暇を取ってきているんですね?地方公務員をやりながら動き回るというのは人並みのことではないと思います。そのきっかけはなんだったんですか?
チェルノブイリの事故があったのが、ぼくが区役所に勤めて5年目ぐらいで、ちょうどその年に2人目の子どもが生まれた。そのときに原発のことや放射能のことを調べたのが直接的なきっかけだと思う。ぼくはそのころ労働運動をやっていて共産党も社会党も関係のない労組をめざしていた。子どもが大きくなったときの社会を良くしようみたいな気持ちで。でも現実の子どもは入院してしまっていた。そのきっかけがチェルノブイリからの放射能汚染の可能性があったんだ。
その頃新左翼の勉強会とかにも誘われたんだけれど、その教祖みたいな人が書いた本を読んだけど、思い切りバカバカしくてね、だから勉強会に参加しているメンバーに、「本当にこんなことを信じてるの?」と聞いてしまった(笑)。そしたら「やっぱりこれ、おかしいよな」ということになって、そのメンバーの方が新左翼から抜けることになった(笑)。当時、読めば笑ってしまうようなビラを出していたよ。タブーはなし、区役所にも労働組合にも不都合なことばかり書くみたいな(笑)。 話を聞いた限りだと、田中さんは学生運動に参加していたとかどこかのセクトにいたということはないようですね。
それはそうだね。そんなところじゃない、高校変わるたびにあちこちで喧嘩を売られてそんな暇なんてなかったし、現実的じゃない話が嫌いなんだ。民生くずれみたいな友人がいてね、そいつのおかげでマルクスについてはずいぶん勉強はしたけどね。現実におれの生活はとても貧しかったんだよ。それなのに左翼は「貧しい人を救え」とかいいながら、おれには何もしてくれないわけだ。「お前ら偉そうなことをいっているけれど、現実には何もやってないじゃないか、だったら町工場で働いてみろよ」みたいな気分だった。だから理屈ばかり振り回していて現実がまったく伴っていない運動は今も嫌いだね。 そうなんですか。短い時間の中で申し訳ありませんが、BEPPoo!!ではけこう若い方が見るので、メッセージはありますか?
一般的に言うと、日本に住む人たちは「同質化依存症」なんだ。いつも周りと同じにならなきゃいけないと思ってるし、それで安心してる。それって馬鹿げているよね。他の人と代われる存在だったら、生きている意味ないじゃん。たとえば会社に勤めていて、違うセクションに異動して、次の人がきても何ら変わりなく組織が動いてしまうのは、合理的かもしれないけれど自分である必要がないでしょ? 他の人に代わってもらえるような存在なら、自分が生きている必要がないように思えるよね。
自分として生きることがなければ生きた価値がないと思う。結局、人間がどう評価されるかは、表現したことが全てじゃないかな。アウトプットしていかなければ存在は示せないと思う。自分がどういう存在で、何をアウトプットできるのかを考えて生きていくことが大切なんだと思うんだ。 司会 わかりました。今日は貴重な話をありがとうございました。
ap bank http://www.apbank.jp/index2.html 記者談
インタビュー後、apバンクで共に活動しているMr.childrenの桜井さんの話をしていたのは印象的だった。桜井さんが8月に大分に来るときにインタビューできないかと尋ねたときに「いやぁ、桜井くんはこういうインタビューをしたときにずっと考え込むタイプだからな」と笑いながら田中さんは言っていた。 その後の講演会ではビジネスマンのようなはっきりとソフトな口調で講演をこなし、会場は満杯だった。戦争が環境に与える負荷や新しい省エネの電化製品を買うことで二酸化炭素の排出を抑えることなど、具体的な行動作を含めて話をしたことは興味深い。講演では田中さんの人間性が見えなかったが、このインタビューでその部分と彼のメッセージが届くことを祈りたい。 |
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記者:今井紀明 |