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どうする伊賀市:市長選を前に/上 2次救急輪番制・医療確保 /三重

 ◇医師不足への「対症療法」よりも、将来見据えた計画策定を

 4カ月で64人--。伊賀市内の重症救急患者が、伊賀地域の当番病院に受け入れられずに、他地域の病院に搬送された数だ。今年4月に始まった伊賀・名張両市内の3総合病院による2次救急の輪番制は、医師不足が進む中、地域で救急医療体制を維持するために編み出された苦肉の策だった。しかし、スタート後も、依然として不安定な状況にあることが、この数字によって浮き彫りとなった。

 「仮に内科医が1人病欠したら、(この体制は)持たない」。3病院の一つ、上野総合市民病院の村山卓院長は、輪番制の現状について、こう漏らす。

  ×  ×  ×

 伊賀市は輪番制開始に先立つ今年1月、将来の伊賀地域の医療体制構築に向けた方向性を示す報告書を作成した。そこでは、長期的展望として「医療資源の効率的活用の点から、伊賀地域に高度な3次医療までを提供できる拠点病院を設置し、地域内で医療が完結できる体制づくりが望ましい」と指摘している。

 救急医療確立への基本は、医師の安定確保だ。同じく3病院の一つ、岡波総合病院の吉川義廣事務長は、都市部では伊賀地域より給料などの待遇が良くないにもかかわらず医師が集まっている、と指摘。そして「若い医師が望むのは、待遇ではなく自分の腕が磨ける場所。伊賀地域に大規模な病床や最新の研究施設を備えた新病院を建て、優秀な指導医を招けば医師も集まるだろう。人口20万人の地域に同規模の総合病院が三つあり、同じような患者を受け入れているのは非効率だ」と訴える。

 そのうえで吉川事務長は、「例えば3病院が診療科目別に得意分野に特化するなど、機能分担を図るのが現実的ではないか」と話す。

  ×  ×  ×

 団塊の世代など今後、高齢化がさらに進めば、救急医療に頼る人が増えることが見込まれる。しかし、3病院とも、現状の輪番制維持で手いっぱいの状況にある。伊賀地域で十分な救急医療を確保するには、医師不足への「対症療法」ではなく、きっちりした将来像を描いた積極的な計画策定だ。

  ◆  ◆  ◆

 11月2日告示、9日投開票の伊賀市長選。市には、相次いで計画されている大規模プロジェクトや、建設の是非が議論されている川上ダムなど、いずれも多額の費用負担を伴う事業が目白押しだ。一方で、今年度一般会計の財政規模は421億円(当初予算ベース)なのに対し、市債残高は583億円(同)と、決して「健全財政」とは言えない状況にある。新たな伊賀市長を迎えるに当たり、市の将来に何が必要か、探った。【傳田賢史】

〔伊賀版〕

毎日新聞 2008年10月28日 地方版

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