政局2008
総選挙、今月下旬に判断
【科学】やせすぎも注意 月経異常、骨粗しょう症 子どもの健康に影響2008年10月28日 朝バナナダイエットがブームになるなど若い女性を中心に「やせ」志向は強い。メタボリック症候群が注目され「太りすぎ」が健康によくないことは広く知られるが、「やせすぎ」も要注意。小児科や産婦人科の専門家は「骨粗しょう症や月経異常につながる。生まれてくる子どもの健康にも影響する」と指摘。過度なダイエットに警鐘を鳴らす。 (栃尾敏) 「男性の肥満問題に比べ、女性のやせ問題は軽視されがち」と話すのはメタボ研究で知られる松沢佑次・住友病院院長(大阪市)。「特に妊婦のやせは低出生体重児が生まれやすく、子どもが将来、肥満や高血圧、糖尿病など生活習慣病になりやすい」と指摘する。 松沢院長は日本学術会議の臨床医学委員会内分泌・代謝分科会委員長。若い女性のやせ問題に関心を持ってもらおうと、分科会は東京都内で専門家を講師にして公開講座を開いた。 若い女性のやせすぎは増えているのか。肥満度を示す指標として使われる「体格指数(BMI)」では、「やせ」は18・5未満、「標準」18・5以上25未満、「肥満」25以上。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、二十歳代の女性の「やせ」はここ二十年で倍増。二〇〇二年には25%を超えている。 倉智博久・山形大産科婦人科教授は「やせた女性は標準的な女性に比べ、低出生体重児が生まれるリスクが二倍。妊娠出産だけでなく自分の健康への影響もある」と、標準的な体重を保つことの大切さを説明する。 例えば、望ましいとされるBMI22だと身長一六〇センチ、体重五六・三キログラム。「多くの女性が『少し体重があるかな』と思うぐらいが健康なんです」と倉智教授は話す。 「雑誌やファッションショーのモデルはみんな非常に細い。やせることは女性にとって美しい、魅力的と感じてしまう社会風潮が大きな問題」と指摘するのは甲村弘子・大阪樟蔭女子大人間科学部教授。「過度なダイエットをすると月経が止まる。低血圧や、疲れやすくなったり、便秘になったり。思考や記憶力も低下する」。〇六年には拒食症のモデルが死亡したことが問題となり“やせすぎモデル”の出演を規制した国もある。 甲村教授が相談を受けた女子中学生は、ダイエットで一六〇センチ、四八キログラムだった体重が最も少ないときで二八・八キログラムまで落ち、月経がなくなった。治療で数年かけて少しずつ回復し、今は四五キログラム。月経も順調。しかし、骨密度は正常値の60%程度で七十−八十歳代の値。なかなか増えないのが悩みだ。 甲村教授によると、体重が減ると中枢からの性腺刺激ホルモンの分泌が減少、無排卵や無月経をきたす。日本産科婦人科学会の調査では、思春期の続発無月経はダイエットによる体重減少が原因の約半数を占める。「若い女性のやせ志向は、将来の不妊症や骨粗しょう症を招く心配がある」 やせすぎは本人だけでなく、生まれてくる子どもの健康にも影響する。佐川典正・三重大産婦人科教授は「妊娠中のお母さんの栄養が足りなければ赤ちゃんは小さくなる。小さく生まれた子どもは将来、肥満をベースに糖尿病、高血圧などを発症する確率が高い」と説明する。 母親の胎内で栄養状態がよくないと、子どもの体は効率よくエネルギーを利用できるようにプログラムされる。このような子どもは成長してからも、十分なエネルギーが供給されるとすぐに供給過剰になって、肥満をはじめ生活習慣病が起こりやすくなる。 佐川教授によると、出生体重は二十五年前が平均三・二キログラム、それが〇五年には三キログラムに。一方、二・五キログラム未満の新生児の割合は5・2%から9・5%に増えた。「毎年約十万人の生活習慣病予備軍が生まれていることになる」と話す。 「やせた人は妊娠中もやせ志向」(佐川教授)だが、妊娠中はBMI標準の人でプラス十−十二キログラムが目安。やせすぎに注意し、極端なダイエットを避けるようアドバイスする。 <記者のつぶやき> 連れ合いも最近バナナを食べだした。でも、食事量は減らさないので体重計の数字は以前と同じ。“なんちゃってダイエット”でスリムなのは気分だけ。でも大丈夫。「ふっくらとたっぷり脂肪があるのが女性の美しさ」(松沢院長)だから。
|