東京都内で脳内出血を起こした妊婦が8病院に受け入れを断られ死亡した問題で、大澤正明知事は27日の定例会見で県内でも同様の状況が起きうる可能性を認め、産科の当直医1人体制について「見直しが必要」との考えを示した。ただ、全国的な医師不足のなか、必要な産科医を確保する具体策はないのが実情だ。知事も「重要課題として取り組みたい」と述べるにとどめており、問題の深刻さが浮き彫りになった。【鈴木敦子】
県保健予防課によると、県内で異常出産に対応できる新生児集中治療室(NICU)を備えた周産期母子医療指定病院は6カ所。このうち、中核的役割を担っているのが県総合周産期母子医療センター(渋川市)で、現在のベッド数は12床。ほかに▽群馬大付属病院(前橋市)9床▽群馬中央総合病院(同)3床▽公立藤岡総合病院(藤岡市)2床▽桐生厚生総合病院(桐生市)9床▽総合太田病院(太田市)5床--の計40床となっている。
満床などを理由に1000グラム未満の新生児受け入れが不可能だった日数は06年度で55日間だった。07年度は太田で1床減った一方、群大と桐生で各3床増やした結果、受け入れ不可能な日数は44日間に減った。それでも、ほぼ満床状態が続いている状況に変わりはない。
満床を解消するにも医師や看護師不足は深刻だ。県内の産科医数は06年12月末現在で168人。96年12月の182人から、10年間で8%減った。総合太田病院では昨年12月に産科医が不在となり、今年度から産科を休止した。
異常出産に対応できる病院への負担集中は進む一方で、県総合周産期母子医療センターは昨年、117件の母体搬送依頼のうち52件(約44%)を断った。同センターでも産科の常勤医師は3人しかおらず、夜間・週末専門の非常勤医師2人を含めても、各医師が毎月6回の当直をこなさなければ当直1人体制さえ維持できない。
同センターの高木剛産科部長によると、最近は東京都内や埼玉県南部からの搬送も増えているといい「産科医不足は県内だけでは対応できない。母親と子供を同時に診られる病院がもっと必要」としている。
毎日新聞 2008年10月28日 地方版