今週のお役立ち情報
植草事件報道で名誉棄損の『フライデー』に賠償命令=東京地裁
2008年07月29日08時08分 / 提供:PJ
【PJ 2008年07月29日】−
電車内で痴漢をしたとして、東京都迷惑防止条例違反の罪に問われ上告中の植草一秀・元教授(47)が、週刊誌『フライデー』の記事で名誉を傷つけられたとして訴えていた損害賠償請求訴訟の判決公判が7月28日、東京地裁で開かれ、石井忠雄裁判長は発行元の講談社に110万円の支払いを命じた。原告の求めていた謝罪広告の掲載は認めなかった。
提訴していたのは、同誌2004年4月30日号掲載の記事。「植草一秀 ハレンチ犯罪に走った『もうひとつの素顔』」と題し、1992年と1994年にも逮捕歴があるほか7〜8回「同様の行為」で厳重注意を受けていることを捜査関係者の話として紹介している。
2004年4月8日に品川駅で女子高校生のスカートをのぞいた疑いで逮捕された直後で、起訴前に発行されたもの。植草元教授は1100万円の賠償と『フライデー』誌上への「判決の結論の広告」掲載などを請求していた。
裏付けのない捜査情報の記述を指弾
争点になったのは、余罪があるとする情報が、記事を書いた記者にどのようにもたらされたかだった。4月21日の公判では、執筆した記者の証人尋問も行われた。警視庁担当の新聞記者から情報を入手し、旧知の警察関係者から「まあ、そうだ」との言葉を得たと打ち明けた。警察内部で過去の犯罪歴にアクセスできる人からこの関係者が聞いたとしている。
同様の情報は取材班のほかの複数の記者も警察関係者から得ていたと主張したが、本人が情報の裏付けを取らなかったことも明らかにされた。情報の真偽を自分で確認しなかった理由について、「(この警察関係者を)信頼していたから」と答弁している。
公判で被告側代理人は、記事の情報源である検察に「記録を見せてほしい」と申請しているが応じてくれず、可否についても返答がないことに苦慮していることを強調してきた。
判決は、記者と接触した警察関係者がいかなる内部情報を提供したか明らかでなく、犯罪歴にアクセスした人物が存在したかも疑問を持たざるを得ないとした上で、「結局、取材班は報道関係者らの間のうわさに基づき、客観的な裏付けもないまま電話取材に対するAの回答からの感触のみに基づいて、極めて短時間のうちに自らの判断により本件名誉棄損部分を含む本件記事を作成し、入稿を終了したものというほかない」と断じた。
判決後、『フライデー』編集部は「判決は今後の捜査情報にかかわる報道を困難にするものであり、承服し難い」と声明を出した。
一方、原告弁護団は「無責任な取材方法によって作成された記事に真実性・相対性のいずれも認定できないとする判決を高く評価できる」とのコメントを発表。団長の梓澤和幸弁護士は「ここには裏付けのない情報を広めながら誰も責任を取らなくていい構造がある。(警察リーク報道で無実の市民が汚名を着せられた)松本サリン型の被害を防ぐには、『○○警部補』などと発信元の個人を特定して記述する必要がある。しかし、国民裁判員制度に向けた報道の在り方をめぐる改革論議にも、こうした話はない」とくぎを刺した。
植草元教授は「今回の判決は、賠償額の認定を除けば私の主張をほぼ全面的に認めたものであり、妥当な判断が示されたものと考えています」と評価した上で、報道にかかわるすべての言論機関や言論人が人間の尊厳を損なうことのないよう、十分な事実認識と適正な裏付けの確保を求めた。
情報リークで「犯人」づくりも意のままに
この裁判では、警察側が意図的に流す情報が社会を席巻する構造が浮き彫りになった。スクープを出したいマスコミ記者は、権力側が持つ未発表の情報に飛びつく。犯人に仕立てたい人物の悪情報を起訴前に漏らせば、国民から処罰を求める世論の後押しを自動的に受けることができる。
問題の週刊誌は、植草元教授が品川駅で逮捕された事件が報道された4日後に出ている。記事を書いた記者は共同通信配信の記事で事件を知り、1日余りで記事を書いたと証言した。急いだ理由は示されなかった。
警察内部には、起訴に至らない過去の犯罪歴を網羅した記録があることも浮かび上がった。被告側の記者はファイル名を「犯罪歴紹介証明書」と聞いたと証言した。警察内部で負の個人情報が流通するとしたら、大きな問題である。
植草元教授は2007年4月から講談社を含め、週刊誌4件とテレビ局1件を名誉棄損で訴えてきた。これまで『アサヒ芸能』の徳間書店に勝訴し、『女性セブン』の小学館と和解が成立している。
検察側の主張のみ伝える刑事裁判と違って一般紙も植草元教授への名誉回復に寄与しているように見えるが、記事には常に2つの事件での「有罪」が明記される。肝心の事件内容についてマスコミは矛盾を知らせず、人権を救済するはずの記事でクロとの印象を植え付けている。
有罪が確定した2004年の事件も上告中の事件同様、植草元教授は無罪を主張している。2004年事件は、警察官が書いたエスカレーターの見取り図や逮捕の経緯についての証言は矛盾だらけ。「被害者」の高校生の母親は「被害届を出した覚えもないし、裁判にしないでほしい」と検察庁に上申書を提出している。
2006年9月の事件では、被害者は一度も公判に出廷しておらず、弁護側が求める繊維鑑定や逮捕者の証人尋問も認められなかった。検察側目撃者は植草元教授が眼鏡を付けていたことや傘を左手首に掛けても覚えておらず、警察官との接触日も矛盾する。一方で、起訴状にある犯行時間帯に植草氏が誰とも接触していなかったことを明かした弁護側目撃者の証言は完全に無視された。
判決文は賠償金減額の理由の1つに、「原告が上記罰金刑を受けたこと自体は真実と認められる」ことを挙げている。「のぞき行為」が真実かどうかは問われず、処罰の実績だけが威力を発揮する。民事判決で糾弾されたねつ造報道が刑事告訴を円滑にした一因になっているのに、刑事裁判の結果が民事賠償の水準を規定している。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 高橋 清隆【 神奈川県 】
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提訴していたのは、同誌2004年4月30日号掲載の記事。「植草一秀 ハレンチ犯罪に走った『もうひとつの素顔』」と題し、1992年と1994年にも逮捕歴があるほか7〜8回「同様の行為」で厳重注意を受けていることを捜査関係者の話として紹介している。
2004年4月8日に品川駅で女子高校生のスカートをのぞいた疑いで逮捕された直後で、起訴前に発行されたもの。植草元教授は1100万円の賠償と『フライデー』誌上への「判決の結論の広告」掲載などを請求していた。
裏付けのない捜査情報の記述を指弾
争点になったのは、余罪があるとする情報が、記事を書いた記者にどのようにもたらされたかだった。4月21日の公判では、執筆した記者の証人尋問も行われた。警視庁担当の新聞記者から情報を入手し、旧知の警察関係者から「まあ、そうだ」との言葉を得たと打ち明けた。警察内部で過去の犯罪歴にアクセスできる人からこの関係者が聞いたとしている。
同様の情報は取材班のほかの複数の記者も警察関係者から得ていたと主張したが、本人が情報の裏付けを取らなかったことも明らかにされた。情報の真偽を自分で確認しなかった理由について、「(この警察関係者を)信頼していたから」と答弁している。
公判で被告側代理人は、記事の情報源である検察に「記録を見せてほしい」と申請しているが応じてくれず、可否についても返答がないことに苦慮していることを強調してきた。
判決は、記者と接触した警察関係者がいかなる内部情報を提供したか明らかでなく、犯罪歴にアクセスした人物が存在したかも疑問を持たざるを得ないとした上で、「結局、取材班は報道関係者らの間のうわさに基づき、客観的な裏付けもないまま電話取材に対するAの回答からの感触のみに基づいて、極めて短時間のうちに自らの判断により本件名誉棄損部分を含む本件記事を作成し、入稿を終了したものというほかない」と断じた。
判決後、『フライデー』編集部は「判決は今後の捜査情報にかかわる報道を困難にするものであり、承服し難い」と声明を出した。
一方、原告弁護団は「無責任な取材方法によって作成された記事に真実性・相対性のいずれも認定できないとする判決を高く評価できる」とのコメントを発表。団長の梓澤和幸弁護士は「ここには裏付けのない情報を広めながら誰も責任を取らなくていい構造がある。(警察リーク報道で無実の市民が汚名を着せられた)松本サリン型の被害を防ぐには、『○○警部補』などと発信元の個人を特定して記述する必要がある。しかし、国民裁判員制度に向けた報道の在り方をめぐる改革論議にも、こうした話はない」とくぎを刺した。
植草元教授は「今回の判決は、賠償額の認定を除けば私の主張をほぼ全面的に認めたものであり、妥当な判断が示されたものと考えています」と評価した上で、報道にかかわるすべての言論機関や言論人が人間の尊厳を損なうことのないよう、十分な事実認識と適正な裏付けの確保を求めた。
情報リークで「犯人」づくりも意のままに
この裁判では、警察側が意図的に流す情報が社会を席巻する構造が浮き彫りになった。スクープを出したいマスコミ記者は、権力側が持つ未発表の情報に飛びつく。犯人に仕立てたい人物の悪情報を起訴前に漏らせば、国民から処罰を求める世論の後押しを自動的に受けることができる。
問題の週刊誌は、植草元教授が品川駅で逮捕された事件が報道された4日後に出ている。記事を書いた記者は共同通信配信の記事で事件を知り、1日余りで記事を書いたと証言した。急いだ理由は示されなかった。
警察内部には、起訴に至らない過去の犯罪歴を網羅した記録があることも浮かび上がった。被告側の記者はファイル名を「犯罪歴紹介証明書」と聞いたと証言した。警察内部で負の個人情報が流通するとしたら、大きな問題である。
植草元教授は2007年4月から講談社を含め、週刊誌4件とテレビ局1件を名誉棄損で訴えてきた。これまで『アサヒ芸能』の徳間書店に勝訴し、『女性セブン』の小学館と和解が成立している。
検察側の主張のみ伝える刑事裁判と違って一般紙も植草元教授への名誉回復に寄与しているように見えるが、記事には常に2つの事件での「有罪」が明記される。肝心の事件内容についてマスコミは矛盾を知らせず、人権を救済するはずの記事でクロとの印象を植え付けている。
有罪が確定した2004年の事件も上告中の事件同様、植草元教授は無罪を主張している。2004年事件は、警察官が書いたエスカレーターの見取り図や逮捕の経緯についての証言は矛盾だらけ。「被害者」の高校生の母親は「被害届を出した覚えもないし、裁判にしないでほしい」と検察庁に上申書を提出している。
2006年9月の事件では、被害者は一度も公判に出廷しておらず、弁護側が求める繊維鑑定や逮捕者の証人尋問も認められなかった。検察側目撃者は植草元教授が眼鏡を付けていたことや傘を左手首に掛けても覚えておらず、警察官との接触日も矛盾する。一方で、起訴状にある犯行時間帯に植草氏が誰とも接触していなかったことを明かした弁護側目撃者の証言は完全に無視された。
判決文は賠償金減額の理由の1つに、「原告が上記罰金刑を受けたこと自体は真実と認められる」ことを挙げている。「のぞき行為」が真実かどうかは問われず、処罰の実績だけが威力を発揮する。民事判決で糾弾されたねつ造報道が刑事告訴を円滑にした一因になっているのに、刑事裁判の結果が民事賠償の水準を規定している。【了】
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