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 まず、合同会社は株式会社と同じく法人格なので、ビジネス上、特に取引をしたり融資を受けたりする場合、信用度が個人や個人事務所の場合とはまったく違って高くなります。相手先に差し出す名刺の肩書きに、会社名が入っているのといないのでは、印象が大きく異なることもあり、また、融資の条件でも法人対象のほうが、金額が大きくなるのが一般的なのです。

 よく比較される企業形態に、同じく新しく制定された「LLP(有限責任事業組合)」がありますが、これはあくまで事業組合であって、法人格は持ちません。当然課税は、法人税ではなく各構成員の所得に課税されることになります。つまり事業組合として収益を上げても、個人の所得となり、確定申告が必要になるわけです。

 そのうえ合同会社なら、株式会社への組織変更は可能ですが、LLPの場合は認められていません。LLPとして、小さく事業を始めて、だんだん大きくなって、改めていろいろな人から出資を募る場合には、株式会社などの組織を作り直さなければならないのです。

 もし将来的に事業を拡大していくことが目標なら、合同会社の方が優れているといえるでしょう。合同会社のもう1つのメリットは、先ほど触れたように、有限責任で出資した分のみ責任を負うことで、リスク範囲は限定されることです。

 三番目のメリットは、1名から始められる組織形態なので、取締役会など面倒な組織を設置する必要はないということ。

そのうえ、設立する手続きなども株式会社に比べて簡単なので、すべて自分ひとりで行えば、費用も定款の印紙代(4万円)や登録免許税(6万円)など最低10万円程で済み、非常に手軽に始められます。ただし、新会社法が施行されてまだまだ日が浅いために、合名会社の認知度や知名度はいまいちなのが、唯一のデメリットでしょう。最近では、社会的にもかなり浸透してきており、今後がさらに認知度が高くなると期待できます。

合同会社設立の流れを理解する

ではここで、合同会社設立の流れについて説明していきましょう。合同会社を設立する前に、まず「会社名」や「会社の所在地」、「事業目的」、「社員構成」、そして「事業年度」など基本事項といわれるものを決定しておく必要があります。

 それが決定したら、次は「定款」の作成です。定款とは合同会社としての必要事項を決定して明文化したもので、株式会社などでも同様に作成しなければなりません。しかし株式会社の定款は、公証役場で認証されないと登記申請ができませんが、合同会社の場合には、公証役場で認証される必要はありません。この分の費用(5万円)がかからないだけ、設立費用は安くすむことになります。

 定款の作成が終われば、出資金の払い込みを行います。銀行口座に出資金を振り込み、その通帳のコピーを取っておき、払い込みの「証明書」を作成します。

 最後に、「登記申請書」などの登記申請書類を作成して、住所を管轄する法務局に提出して登記が完了することになります。ここで忘れてはならないのが、税務署や市町村役場などへの届出です。新しく法人格を有する会社が設立されたということを、公にするためにも忘れないようにすることです。

 これまで、企業の正社員として第一線の仕事に従事してきたわけですから、会社を設立するというような経験は初めてのことになるでしょう。特に何でも自分で理解して、行動しなければならないので、なかなかスムーズに進行しないこともあるでしょう。

 そこで、会社設立の流れの中で注意しなければならないことを、いくつかあげておきます。


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INDEX
「正社員」は企業の“お荷物”になり下がった

「合同会社(LLC)」こそ時代にマッチした企業形態だ

「合同会社」はサラリーマン法人化の救世主だ

合同会社設立の流れを理解する

定款を作成するときの注意点は?


プロフィール
高橋 節男タカハシ セツオ

1949年生まれ。1984年に税理士登録をして、有限会社エムエムアイを設立。1988年に株式会社に変更して、税務・財務・経営にかんするコンサルティングを主な業務とする。
 税理士法人エムエムアイ、ちょうぼ倶楽部、楽天MMI-eshopなどのグループ会社の代表責任者としてエムエムアイグループを統括。個人の確定申告から中小企業の決算作業や経営のアドバイスなど、あらゆる顧客のニーズに応えている。
 また税金や経理について関心の高い人向けに、「Dailyコラム」を毎日、メールで配信中。税金や経理の知識だけでなく、年金問題など一般的な経済のキーワードもわかりやすく解説していると好評を博している。


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