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2008年10月28日

◎バブル後最安値 「市場介入」もやむを得ぬ

 東証株価がバブル崩壊後の最安値を更新した。ヘッジファンドなどがリスク資産の売却 を進め、日本を代表する企業の株価が解散価値を下回る水準になっても下げ止まらない。特にメガバンク三行がストップ安となり、比較的健全とされていたはずの日本の金融システムへの信頼性までが揺らぎ始めている。政府は銀行保有株の買い取り再開などの緊急市場安定化対策のとりまとめを決めたが、市場のメカニズムが狂ってしまった以上、介入はやむを得ない。株式市場はもとより、円の急騰時には為替市場での円売り介入も必要ではないか。

 麻生太郎首相が指示した緊急市場安定化対策は、株の空売り規制の強化や、銀行が保有 する株式の買い取り再開、会計ルールの緩和などが柱である。株式市場では、不安心理がピークに達し、企業価値とは無関係に株をたたき売る動きが加速している。現在の株価は、ほとんどすべての金融機関が含み損を抱える水準であり、景気のさらなる悪化は避けられない。

 株式の買い取り再開は、市場の不安を鎮める効果が期待できる。銀行等保有株式取得機 構は、銀行の持ち合い解消売りによる株価下落が続いていた〇二年一月に設立され、〇六年四月まで一兆六千億円分を買い取った。残高は三月末現在で四千六百億円あるものの、約五千八百億円の余剰金を抱えている。

 日銀もほぼ同時期に二兆円の株式を取得し、株価を下支えした。日銀は政府の要請にこ たえ、買い取り再開に歩調を合わせてほしい。

 株価暴落の要因となっている円高対策も重要だ。円高は輸出企業の業績を悪化させる半 面、原材料の輸入価格の下落というプラス要素もあるが、弱気相場のなかでは、マイナス面ばかりが強調されがちである。

 中川昭一財務・金融相は、円高について「重大な関心を持っている」と述べた。日本政 府は、こうした「口先介入」をあまりしたがらないが、投機筋への警告として、時には大きな効果がある。状況次第では、日銀が果敢に市場介入し、市場の行き過ぎにブレーキをかける「実力行使」があってもいい。

◎無電柱化で専門組織 推進体制も「金沢方式」で

 金沢市内の無電柱化推進策で、山出保市長が来年度の組織改正で設置する意向を示した 専門組織の「無電柱化推進室」(仮称)は、来年度から始まる向こう五年間の無電柱化推進計画にスピード感を持たせるうえで必要な措置といえる。

 市は電線類の地中化にこだわらず、地域の実情や道路環境に応じて低コストの軒下配線 や裏配線などの工法を組み合わせる「金沢方式」で無電柱化を加速させる方針を打ち出したが、たとえ適地があったとしても導入するには住民の理解と協力が不可欠である。さらに電力、通信事業者や国、県との調整も増え、新しいことをやろうとすれば、その分、手続きは煩雑になるかもしれない。行政の推進体制もそれに合わせて手厚くするのが望ましいだろう。

 金沢市は今年度から、都市整備局道路管理課に無電柱化担当職員を兼任で配置した。新 組織には専任職員を三人程度置く計画である。無電柱化推進で専門組織をつくる例はあまり聞かないが、歴史的な町並みや建造物などの文化財指定・選定が面的な広がりをみせる中、せっかく磨いた景観の価値を損ねる電線類の整理は他の都市以上に緊急を要する課題になってきた。無電柱化は道路行政の一部というより、景観対策と表裏一体という認識がいる。専門組織をつくることは施策の優先度を明確にする点でも意味がある。

 市は低コスト工法を活用した金沢方式による基本計画策定へ向けて検討委員会を設置し た。軒下配線、裏配線のほか、地下の浅い層への埋設を可能にする特区の申請も視野に入れている。国、県、市などで策定する次期無電柱化推進計画に基本計画を反映させる。

 無電柱化は一メートルに八十―百万円とも言われる行政負担が事業の進まない最大の要 因とされてきたが、国の一律的な規制を見直すことでも改善は図れるだろう。車道や歩道それぞれに埋設物の深さ基準を定めた道路法施行令は無電柱化推進の視点でみれば、もっと柔軟に運用できる余地があるのではないか。市が特区申請で一石を投じる意味は決して小さくない。


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