佐渡島といえば、「トキの島」のイメージが定着したが、古くは絶海の孤島という地理的条件から流刑の地だった。能の世阿弥や日蓮らが島流しにされていた。
「心の中に佐渡島をつくれ」と訴える経済人がいる。高梁市(旧成羽町)出身で、エレクトロニクス大手・京セラの相談役を務める伊藤謙介さんだ。会社の創業時から参画し、社長や会長を歴任してきた。
なぜ佐渡島なのか。伊藤さんの著書「心に吹く風」に理由が記されている。かつて佐渡島を訪れた際、世阿弥は逃げ場のない島で悩み抜き、能を完成させたと考えたそうだ。
人は目標を達成できないとき、原因を時代の変化など他のせいにしがちだ。逃げ場のない世界に自分を追い込まないと、目標は達成できない。その思いが「心の中に佐渡島を」につながる。特に組織を率いるリーダーは、こういう厳しさが求められるという。
きのう投開票が行われた岡山県知事選で、石井正弘知事が四選された。石井氏は就任当初から財政再建を最優先課題に掲げてきたが、最近になって再び財政危機に陥っていると明らかにした。
国が地方交付税を削減したことが一番の要因とする。問題を他のせいにする政治姿勢に不信感を抱く人は多い。信頼回復に向け、心の中に佐渡島をつくる覚悟があるだろうか。