札幌市東区の札幌東豊病院職員玄関前で9月、生後間もない女児が置き去りにされた。女児は現在、市内の里親夫婦に引き取られ、元気いっぱいに育っているが、両親の手掛かりはない。里親の女性(43)は「本当の両親が育児をするのが一番。罪を償い、もう一度この子と向き合ってほしい」と訴える。
札幌東署によると、女児は9月16日夜、へその緒がついたまま、タオルにくるまれた状態で地面に置かれていた。両親の手紙などはなかった。
女児は同病院で検査を受け、1週間後、札幌市児童相談所を介して南区在住の里親夫婦に引き取られた。紅葉の季節に合わせ、付けられた名前は「かえで」。現在は1日約800ミリリットルの粉ミルクを飲み、体重は発見時の2750グラムから約4700グラムに、身長は47センチから54センチまで伸びた。「おなかがすくと、よく泣く、元気な女の子」(女性)といい、このごろは笑顔も見せるようになった。
夫婦は04年から里親を務め、かえでちゃんが8人目。里親の男性(49)は「心情としては、このままそばに置いてあげたい」というが、現実的には難しく、結局は、両親が名乗り出るか養子縁組を望む別の里親が出てくるのを待つしかない。
夫婦は身体障害者の息子を4歳の時に亡くした。我が子を育てる苦労と、失うつらさはよく分かっているつもりだ。男性は「この子の親もどうしていいか分からず、つらかったのだろう」と言いつつ、「これまで預かった子はほとんど親元に帰っていった。かえでもそうなってほしい」と話した。【和田浩幸】
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■ことば
児童福祉法に基づく里親は(1)長期間預かる養育里親(2)1年以内の短期間預かる短期里親(3)虐待児などを育てる専門里親(4)3親等以内の親族による親族里親--の4種類。かえでちゃんのケースは(2)に当たる。道内では昨年度、595件が児童相談所に里親登録し、預けられた子供(18歳未満)は383人。捨て子事案は年間数件だが、児童虐待の深刻化に伴い、里親に預けられる子供の数は03年度320人、04年度321人、05年度328人、06年度342人--と漸増傾向にある。
毎日新聞 2008年10月27日 北海道朝刊