『尾田栄一郎先生』 その3

なんと今回で尾田先生編最終回!先生の下積み時代の願いが偶然叶った『ONE PIECE』アニメ化時の奇跡、子どもの頃からの想いを胸に、こだわり続ける単行本読者コーナーのお話、そして『ONE PIECE』にかける意気込みと作品完結後のちょっと意外な夢など盛りだくさんの内容でお届けします。

『ONE PIECE』は最初で最後の長編まんが

――『ONE PIECE』は、まんがだけでなく、アニメも大人気ですよね。アニメは連載開始2年後くらいにスタートしましたが、先生はアニメ版『ONE PIECE』をどのように受け止めましたか?

尾田:アニメ化はうれしかったですよ、やっぱり。

oda0007.jpg

ただ、どういう人たちが作るのかってところに心配と興味があって、監督やプロデューサーに早く会わせてほしいって思いましたね。あと、ルフィ達の声を誰がやってくれるかも気になりました。

実は声優に関しては、アシスタント時代、『ROMANCE DAWN』を描いたころからいろいろ考えていて、ルフィは田中真弓さん(『ドラゴンボールZ』クリリン役など)がいいって思っていたんですよ。だから、本当に田中さんにやってもらえることになったときには興奮しましたね。

――それは希望を出したんですか?

尾田:それが、ぜんぜんそういう話をしていなかったのに、田中さんになったんですよ。僕はアニメのことは全てプロに任せよう、ヘタに口出しするのはよそうってスタンスでいたので黙っていたのですが、オーディションに田中さんが来てくれたんですね。で、実際にセリフをしゃべってもらって、「これだ、この声だ!」って。

アニメ化ではいろいろうれしいことがありましたが、なによりうれしかったのは、主人公を思い通りの声優さんに演じてもらえたことですね。

――すごいドラマチックな話ですよね! では次に、そのあまりにすさまじい内容が話題の単行本読者コーナー「SBS」について教えてください。これは、どういった意図で始められたんですか?

尾田:子供のころ、作品名は挙げませんけれども、あるまんがの読者コーナーが途中で無くなっちゃったんですよ。とても楽しみにしていたので、すごくガッカリして。

――人気が出てくるといろいろと忙しくなって、読者コーナーを続けられなくなるってケースは多いみたいですね。

尾田:僕はそれに納得できなかったんです。だから、自分がまんが家になったら、絶対に読者コーナーを続けようって決めました。まんがに限った話じゃないんですけど、「自分がやられてイヤだったことはしない」ってのは基本ですよね。

――でも、週刊連載をしながら、あれを書くってのは大変じゃないですか?

oda0008.jpg

尾田:はがきを一気に読むのは大変ですから、毎週少しずつ読んでおいて、SBSに使えそうなヤツをこまめに仕分けしておくんですよ。で、単行本が出るときにそこから、載せるものを選ぶんです。まぁ、それでも丸1日はとられますよね。それに加えて単行本の表紙も書き下ろさないといけませんから、大変じゃないといえばウソになるかな。

でも、これはもうやめちゃいけないものだと決めているので、もう嫌がられてもやめませんよ(笑)。それに大変ですけど、楽しくもあるんです。子供たちは想像もしないようなことを言ってきますしね。

みんな、ありえないほどアホなことを言ってくるんで、「自作自演なんじゃないの?」とか疑われることもあるんですが、SBSは100%、読者のはがきで作ってます。ちゃんと僕が読んで、僕が選んで、僕が書いてますよ。

――ということですので、SBSファンの皆さん、これからもどしどし投稿しましょう!
 さて、これが最後の質問です。『ONE PIECE』完結までは、まだだいぶ時間がかかりそうですが、まんが家として、その後に描かれてみたいモチーフなどはありますか?

尾田:そうですね、いろいろやってみたいという気持ちはあります。まんがに限らず、映画みたいなものも作ってみたい。ただ、以前とは違い、壮大な大作よりも、短くてヒネリの効いたお話を描きたいという気持ちが大きくなってきました。

oda0009.jpg

もう僕は『ONE PIECE』を終わらせたら、二度と長期連載はしないと思うんです。完結後は、鳥山明先生(『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』など)みたいに、たまに単行本1巻分だけのお話を連載するような暮らしをしたいですね。あのスタイルにあこがれています(笑)。

だから、そのためにも『ONE PIECE』には全力投球したいと思ってます。これが最初で最後の長編まんがだと思えば、モチベーションも下がりませんし。

――限界までやってやろう、と。

尾田:死なない程度にね(笑)。

尾田栄一郎プロフィール

尾田栄一郎(おだえいいちろう) 1975年、熊本県生まれ

高校生時代に執筆した短編まんが『WANTED!』が第44回手塚賞(1992年)に準入選。その後、アシスタント経験を経て、1997年に『ONE PIECE』で週刊少年ジャンプ連載デビュー。魅力的なキャラクター、躍動感のあるアクション、感動的なストーリー描写などによって、老若男女幅広い層から絶大な支持を集め、単行本の累計部数は1億部を突破している。アニメ化、ゲーム化、映画化などのマルチメディア展開も好調。海外にもファンが多い。


「まんがのチカラ」次回予告
次回は、近未来の宇宙を舞台とした重厚な人間ドラマが人々の心を打った感動作『プラネテス』の作者、幸村誠先生が登場です。時にマジメに、時に笑いを交えて、プロになるまでの道のりや『プラネテス』、『ヴィンランド・サガ』(現在アフタヌーン連載中)のお話などを語ってくださいました。更新予定は、2008年1月7日(月)。お楽しみに!

「まんがのチカラ」バックナンバー