実例を挙げたい。数年前、私はバーでミュージシャンのボノと酒を飲んだ。正直言って、ちょっと変わった男だな、と思った。もう夜更けで、二人ともいくらか酔いが回っていた。ボノは口角泡を飛ばして、企業に世界の貧困と疾病問題に取り組ませるための計画について語った。世界中の経営者の私用電話番号に次から次に電話をかけたかと思えば、私に携帯電話を突きつけ、彼らの眠たげだが熱意ある返事を聞かせた。その晩は彼のことをどうかしていると思ったが、彼の情熱は、ほどなくして「プロダクトRED」キャンペーンに結実した。
今日(こんにち)では、GAP、ホールマーク、そしてデルなどといった企業が、REDブランドの商品を売り、利益の一部をエイズ撲滅のために寄付している(マイクロソフトも最近、このプログラムに参加した)。これは素晴らしいことだ。企業がきちんと商売をし、消費者が善意への支持を表して変化を起こし、人々の命を救っているのだから。この1年半で、REDブランドは世界エイズ・結核・マラリア対策基金に1億ドル(約105億円)を寄付した。創造的資本主義は、すでに稼働しているのだ。
創造的資本主義は、別に画期的な経済理論ではない。そして資本主義と対立するものでもない。それは、いったいどうすれば、最も効果的に資本主義の善を広め、これまで取り残されてきた人々の生活水準を改善できるか、という重要な問いに答えるものだ……。
[本誌ではさらに詳しい慈善事業家ビル・ゲイツの思想を掲載]
特別寄稿したビル・ゲイツの想いとは?
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