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【社説】

OPEC減産 『脱石油』を緩めるな

2008年10月27日

 OPECが原油価格の急落に歯止めをかけるため大幅減産に踏み切る。日本は価格変動への耐久力を備えた対策を進めるべきだ。温暖化防止のうえからも「脱石油」への不断の営みが欠かせない。

 石油輸出国機構(OPEC)が十一月から日量百五十万バレルの減産を決めた。一バレル=一四七ドルの最高値を記録した米国産WTI原油は三カ月で六〇ドル台に反落した。金融危機をきっかけに、原油価格をつり上げてきた大量の投機資金が市場から遠ざかり、世界景気の急減速による需要の減少も下落に拍車をかけた。

 OPECはなお三十万バレルが過剰だとして追加減産を視野に入れている。値下がりは資源小国・日本への朗報ではあるが、価格変動という不確定要因を抱えていてはエネルギー政策が危うくなる。

 原油の消費を減らして温暖化を防ぐという環境面からの要請も強い。ここは環境も織り込み、脱石油というテーマに濃密に向き合うときではないか。原油生産が消費に追いつかなくなる時代はそう遠くないとするピーク・オイル論にも無視できないものがある。

 一九七〇年代、日本は二回の石油危機を乗り切るため、省エネを柱に据えたサンシャイン計画などを推進した。その結果、全エネルギー消費に占める原油の割合は七−八割から半分以下に抑え込まれ、太陽光発電は生産量、発電量ともに世界一の座に躍り出た。

 原油が高値だと、いや応なしに節約せざるを得ない。世界的な技術革新は石油離れを促し、値下げ圧力としても有効に機能した。

 ところが日本は八〇年代の劇的な原油値下がりが脱石油への熱意を薄れさせた。その後のエネルギー効率にさしたる改善の跡は見られない。太陽光発電はトップの座をドイツに明け渡してしまった。

 今回の原油高では自動車業界までもが太陽光発電に挑んでいる。二年後には電気自動車が市販されるまでに技術開発が進んでいる。電気自動車は二酸化炭素の排出抑制で環境面からの期待も大きい。省エネ投資は経済を再び成長軌道に乗せる可能性をも秘めている。

 二〇二〇年までに風力など二酸化炭素排出ゼロの電源比率を50%に、新車の半数を電気などの次世代自動車に−という低炭素化社会に向けた政府の見取り図がある。

 原油価格の乱高下と金融危機は、エネルギー源の問題も含め、時代が転換期にあることを告げているのではないか。

 

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