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【社説】

大都市制度 地方代表として提案を

2008年10月27日

 横浜、大阪、名古屋の三都市が、新たな大都市制度を国に求める研究会を発足させた。地方分権を進める構想の一つとして期待できるが、疲弊する多くの地方を置き去りにした大都市の論理は困る。

 現行の大都市制度である政令指定都市は人口七十万人以上が目安で、この三市を含め十七市ある。

 指定都市は都道府県から多くの権限を移譲されているが「中途半端」という不満は根強い。大災害に襲われても市長は直接、防衛相に自衛隊の災害派遣を要請できず知事を経由しなければならない。都市づくりにかかわる都市計画区域の指定も都道府県の事務のままだ。

 三市は人口二百万人を超え、財政規模や中枢機能も、首都東京を除けば群を抜いている。

 自前でさまざまな施策が打ち出せる規模、能力があるのに、都道府県−市町村という枠組みに固定されて身動きできない。国際的な都市間競争を勝ち抜くためにも、都市が独自政策を進めていけることが重要で、そのためにも、都道府県から独立した行政が運営できる制度が不可欠、と三市は訴えている。

 設立された研究会は、学識経験者ら七人で構成する。韓国やドイツなど海外の制度も参考に本年度内に提言を発表する予定である。

 大都市にどこまで権限を与え、どんな税源を回すかなど、実現に向けた検討はこれからだ。

 たとえ大都市を対象にした制度づくりを考える時にも、忘れていけないのは、高齢化や産業不振など日本の地方全体を取り巻く深刻な現状である。

 地域の核である大都市が都道府県や道州制から分離してしまえば、周辺地域の問題は切り捨てられかねない。横浜市の中田宏市長は「稼げる都市は稼いで(他の地域に)還元していく」と強調するが、具体的な仕組みが必要だろう。

 都道府県をより広域なブロックに再編し、地方分権を大胆に進める道州制の論議が盛り上がっている。三市は、道州制構想の中に大都市制度が位置付けられるよう、国に働き掛けていく考えだ。

 小泉政権の時、国から地方へ権限と税源の移譲を掲げた「三位一体の改革」は掛け声倒れで、交付金・補助金を減らされた地方の負担増という形で終わっている。

 大都市は、悩める地方の代表である。地方分権の突破口となる現実味のある大都市制度の提案を求めたい。

 

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