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【主張】読書週間 本好きの子供に育てよう
きょうから読書週間である。読書離れがいわれる今日、多くの人が書に親しむきっかけとなればこれに如(し)くものはない。経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)でも、読解力の低下が明らかになっている。若者の活字離れが進み、書かれた文章を読み取り、これを利用し、自分の頭で考える能力が急速に落ちてきている。
かつては、通勤・通学の電車内で小説ばかりでなく難しい学術書に読みふける人々が珍しくなかった。それがいつの間にか漫画に変わり、今は音楽を聴くか携帯電話とにらめっこ、あるいは電子ゲームに興じる人が急増している。
人は自らの日常から得る経験知はごくわずかだ。核家族化や仕事の都合で一家が顔を合わせる団欒(だんらん)の機会も減って、祖父母から父母へ、父母から子へと当然伝わるべき経験知も、すんなりと継承することが難しくなっている。
こうした中、自らの経験知を補い、知識や知恵や感動体験などを学ぶことができるのは、何といっても読書が一番である。本は知を開き、情操を養い、徳性を育てる人生のこよなき師匠なのだ。
普段、本から遠ざかっている子供に読書週間だからといきなり本を読むことを勧めてもあまりうまくいかないだろう。本好きに育てるには、知らない間に自らが本に手を出すように仕向けるのが最もよい。それには、まず親が本好きになることだ。中でも幼児期に親が本に親しむ姿を見せることが、子供が本への興味を持つきっかけとなる。
残念ながら、今の小学校の漢字教育は、子供によい影響を与えていないのではないか。例えば芥川龍之介の「蜘蛛の糸」や「杜子春」も読めない。幼児期こそ漢字の吸収力が大きいことを究明し、実践した石井勲の石井式漢字教育の先例もある。幼児期に漢字に親しむための工夫をしよう。
普段から読書習慣を持っている人には、読書週間といっても今更という思いがあろう。今年は源氏物語千年紀でもある。いつもの読書のジャンルとは別に、古典に目を向けてみるのも一法ではなかろうか。口調のよい古典を朗読してやることも、子供たちによい影響を与えるであろう。
秋の夜長、一日でも二日でも携帯電話を閉じ、テレビを消して、ひたすら読書に時間を割いてみたらどうだろうか。